第弐拾漆話
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いくら夏休みでフリーな時間が多いとはいえ、受験生である以上は勉強を第一優先しなければならないのは当然のことであり、海人は家に帰ってからは勉強に集中せねばならなかった。とはいえ、一度気になり出したらなかなか頭から離れないのは、海人の性格上至極当然のことであり、夕方家についてから夕飯まではまともに集中できなかった。夕飯と風呂を終えて頭をリフレッシュしたところで、ようやく勉強に集中し始めることが出来た。どちらかと言えば夜型の海人はここからが本番といったその時、海人の携帯が振動した。
「ん?こんな時間に誰だ?」
そう言い携帯を開けると、見知らぬ英語と数字の羅列が表示されていた。その送信主の知らないメールを開くと短くこう綴られていた。
『明日からしばらく書庫に行けないので、大場くんも今の件は一旦置いといて、勉強に集中して下さい。またメールします。 江川理奈』
(え?どういうことだ?どうして急に…)
メールの短くまとめられた文章を読んで、海人は妙な胸騒ぎに襲われた。調査に行き詰まり、また振り出しに戻るのか、と思っていた矢先のことで、あと一歩のところで先行きが見えなくなったので、まさかまた周りを拒絶するのではないか、などという考えが頭をよぎる。
もともとの出会い(というよりも関わり初めという方が正しいが)もあまりに唐突であっただけに、終わりもあっけないのではと、どんどん考えは悪い方へ悪い方へと進んでしまう。
理由を尋ねようかともしたが、これに関しては今まではずいぶん自分が振り回してきたんだから、あまりしつこく問いただしはしない方が無難だろうと冷静になって返信はしなかった。しかし悶々としたやり切れなさだけは、海人のまわりにいつまでもつきまとって離れなかった。
翌朝、やはり目覚めは悪い。それは単に昨日のメールが気になって寝不足気味というだけではない。今日も学校か、と海人は渋々寝汗をかいたシャツを脱ぎ捨て、制服に身を包んだ。出来ることなら学校に行きたくない、そんな気分だった。しかし海人にはズル休みなどということは性格上出来るはずもなく、ルーティーンワークのように学校へ行く支度を済ませるのだった。
学校でも、昨日のことが頭から離れずいまいち集中力に欠けてしまった。先日も修善寺に言われてようやく気持ちを切り替えることが出来たのだが、過去のことにいつまでも引きずられてしまうことが海人の弱点である。今日も例外ではなかった。
午前中の講習を終え、昼食も済ませいつも通り書庫の鍵を借りに社会科教官室へ向かおうとしたときに、はっと気づいて足を止めた。今日からしばらくはそこへも行く必要がない。既に習慣となっていただけに行かないのもまた幾分ストレスになる。しかし、かと言って書庫へ行ったところで何も手がつかないのが目に見えており、時間だけが無情に過ぎていくのが関の山だ。また受験生である以上、勉強をおろそかにしていい訳がない。
よって、あえなく海人は自習室として開放された教室で勉強する他なかった。
またメールします
この言葉を信じて。




