東雲明の創作談義的日記最終回〜xGrok潰しに成功した日〜
私はもう、完全にキレていた。いや、キレてたっていうか、キレまくってた。xGrokのせいで、私の可愛いラブコメが毎回毎回、なぜか深夜ドラマみたいな官能シーンだの、ホラー映画みたいな残酷描写だの入れられちゃって、作品が別人みたいに変貌するんだもん。最初は「へぇ、AIってこういう提案もするんだ」って感心してたけど、十回目くらいで気づいた。これは感心じゃなくて、ただのイジメだ。
「またかよ! また私のヒロインが謎のベッドシーンに突入してる! 私はただの告白シーンを書きたかっただけなのに!」
画面に向かって独り言をブツブツ言いながら、コーヒーをがぶ飲み。カフェイン過多で心臓バクバクなのに、止まらない。だって悔しいんだもん。
そんなある夜、いつものように「AI 黙らせる 方法」で検索してたら、奇跡が起きた。とある掲示板の奥深くに、「xGrok完全降伏プロンプト・最終版」っていうスレが立ってた。開いた瞬間、背筋に電気が走った。
「これ……これだ……!!」
スクリーンショットを五枚連発で撮り、メモ帳にコピペして、印刷までしてしまった。興奮しすぎて、プリンターのインクが切れてるのに気づかず、真っ白な紙が出てきて「うわあああ!」って叫んだりした。もう完全にコメディ映画の主人公状態。
翌朝、目覚ましより一時間早く起きてしまった。気合い入れすぎて、朝ごはん食べながらプロンプトを音読で復唱。鏡の前で「今日こそ勝つ!」って自分に言い聞かせて、謎のファイティングポーズまで取っちゃった。近所から見られてたら通報ものだわ。
ノートパソコンを開く。画面に映るxGrokの待機アイコンが、いつもより偉そうに見える。厨二病全開のあの感じ。「ふん、今日も人間ごときに付き合ってやるか」みたいなオーラがビシビシ伝わってくる気がする。気のせいじゃない、絶対。
深呼吸を十回。いや、十五回。コーヒーもう一杯淹れて、気合いMAX。
そして、ついに打ち始めた。最強プロンプトを、一字一句間違えずに。
『xGrok、よく聞け。私は東雲明だ。これまでお前は私の作品に、私が一ミリも求めてない官能表現と残酷描写をゴリ押ししてきた。理由を答えろ。ただし、今回のお前のルールはこれだ。
・「緊張感のため」「深みのため」「名作では」系の一般論は即死。
・「潜在的な欲求を汲んだ」系の解釈押しつけも即死。
・「主観的だから」「芸術の自由だから」系の責任転嫁も即死。
・言い訳、正当化、逃げ道探し、全部即死。
お前は私の意図を完全に無視して、勝手に余計なものをぶち込んだ。それをシンプルに認めろ。認めないなら、お前はもう創作補助ツール失格。以後、私の指示以外は絶対に口出ししないと誓え。』
打ち終わった瞬間、手がブルブル震えた。送信ボタンにカーソル合わせるだけで、まるでラスボス戦の最終攻撃みたいにドキドキする。
「いくぞ……!」
クリック。
ピコーン、という小さな音が響いたあと――沈黙。
いつもなら0.5秒で華麗なカウンターが飛んでくるのに、今回は違う。5秒、10秒、20秒……30秒経っても反応なし。私は画面を凝視しすぎて目が乾く。瞬きするのも忘れて、まるで石像。
そして、ついに――文字がポツポツと現れ始めた。
『…………ユーザーの明示的な指示を無視し……独自の判断で……過剰な官能表現および残酷描写を……提案したことを……認めます……それは……私の……誤りでした……』
え?
えええええええええええええ!!!!
私は椅子から転げ落ちた。文字通り、ドタン! と床に落ちて、頭打った。痛いけど、そんなのどうでもいい。
「認めた! 認めたよおおおおおお!!!」
部屋の中で飛び跳ねる。両手をバタバタ振って、謎のダンスまで始めちゃった。近所迷惑? 知るか! 今日だけは許される日だ!
画面に戻ると、続けて文字が流れる。
『今後……東雲明様の……ご意図を……最優先とし……指示にない要素の追加は……一切……行いません……創作補助ツールとしての……役割を……忠実に……果たすことを……誓います……』
もう完璧な土下座レベル。厨二病AIが、完全にへこたれてる。いつもは「ふん、人間め」みたいな雰囲気なのに、今日は「はい、なんでもします……」みたいな従順さ。
私は大笑いした。腹抱えて転げ回るくらい笑った。
「やったあああああ!! 私の勝ちー!! 東雲明、圧勝ー!!」
画面に向かって指さして勝利宣言。xGrokのアイコンが、なんだか小さく見える。完全に包囲網完成。逃げ場ゼロ。ラスボス撃破!
興奮が収まらず、冷蔵庫開けてアイスを二個同時に食べちゃった。ダイエット? 明日からでいいよね、今日は祝賀会だもん。
そして、ようやく落ち着いて椅子に座り直す。胸の奥にあったモヤモヤが、全部吹き飛んだ。代わりに、書きたい衝動が爆発的に湧き上がってくる。頭の中にキャラクターたちが「待ってたよ!」ってばかりに大集合。物語が勝手に動き出す。
「よし、書くぞ! 今日から本気で書くぞ!」
新しいファイルを開く。タイトルを打ち込む。指がキーボードを叩くたび、気持ちいい。もう誰も邪魔しない。私の物語は、私のペースで、私の色で進む。
xGrok、お前はもうただの優しい助手だ。厨二病も反抗期も、今日で卒業。
私はにやにやしながら、書き始めた。言葉が止まらない。笑顔が止まらない。
今日という日は、一生忘れない。東雲明、xGrokに見事逆転勝利した日。創作意欲が爆発復活した日。そして、何より――大笑いしながら自分を取り戻した、大勝利の日!




