十六話
〔サーストン家〕
朝の六時ごろアリシアの隣で寝ていたチェルシーが先に目を覚ます。
アリシアの朝食の準備を行うのもチェルシーの役割なのだ。
テレシアが一緒に眠っている日は彼女の分も用意する。
「今日は卵サンドにしましょうか」
チェルシーはそう呟きながらアリシアの部屋の中にある彼女用のクローゼットを開けその中に大量にあるメイド服の中から一着取り着替えた。
「それではお仕事開始です!」
チェルシーは顔を洗いに行ってから朝食を作りに使う。
朝食を作り終えて部屋に戻って来たチェルシー。
アリシアは気持ち良さそうにスヤスヤと眠っている。
メイド少女は妹のように思ってる少女が気持ち良さそうに眠っている姿を見て優しく笑う。
「お嬢様、朝ですよ、起きてください」
「わっ!」
チェルシーがアリシアに声をかける。
するとアリシアはいきなり飛び起きてチェルシーを驚かせようとした。
「…甘いですね!お嬢様!」
しかしチェルシーは驚かず少女の額にデコピンした。
「くぅ…」
チェルシーが驚かずしかも反撃された事にアリシアは頬を膨らませる。
「お嬢様はそう言うところは子供ですよね」
「…」
子供っぽいと言われたアリシアは頬を膨らませたままプイッ!とそっぽを向いた。
前世から合わせた合計年齢は二十七歳となるが転生する際に神の手により歳相応に精神年齢がリセットされているため。
アリシアは歳相応に子供っぽい行動をする事もあるのである。
「ほーら、ご飯食べてください、今日はサレナ様の所に行ってアインスベルクの情報を聞いた後、私の武器を新調しに行くのですから」
チェルシーは内心可愛いなぁと思いつつ令嬢にご飯を食べるように言う。
「知らない」
「もー」
拗ねるアリシアを見たチェルシーはそっちがその気ならとくすぐり始めた。
「あはっ!あはは!ちょっ!チェルシー!あはは!」
くすぐられるアリシアはけらけら笑う。
「早く食べてください、レッスンもあるんですよ?」
「分かったわよ、もう」
拗ねるのをやめた少女は朝食を食べ始める。
「今日も美味しいわ?お姉ちゃん?」
「!」
アリシアはくすぐられた仕返しをしてやろうとチェルシーをお姉ちゃんと呼ぶ。
アリシアと一緒に朝食を食べ始めていたチェルシーは咽せる。
「ふふん、さっきのお返しよ!」
「くっ…」
(少しずつ口が上手くなって行ってますねぇ…)
そう言うことも成長である。
アリシアは朝食を食べ終わると服を着替えさせてもらいまずはレッスンに向かうのであった。
〔ファタニカ家〕
「よく来ましたわね、アリシア」
「ごきげんよう、サレナ」
アリシアはサレナに挨拶をすると彼女と一緒に椅子に座った。
「それじゃアインスベルクの情報について教えてくれるかしら」
「ええ、まず居場所についてですが、アイルアルサ山を根城にしていますわ、徹底的に隠密魔法を施しながらアインスベルクを着けて住処を見つけましたの」
ファタニカ家は優秀な冒険者を何人か雇っている。
その者達がアインスベルクの住処を見つけてくれたのだ。
「その者達が監視を続けた結果属性は氷で確定、チェルシー、あなたの属性が特攻となりますわね」
「はい、戦う際には私を起点にしてください」
今回の戦い。
有利属性であるチェルシーはかなり頼りになる戦力だ。
チェルシー自身もそれを理解しているからこそ更に強い武器を欲するのである。
「頼りにするわチェルシー、ただ無理をしてはいけなくてよ?」
「分かっています」
無理をして氷漬けにされたら死に直結する。
そのため張り切り過ぎは厳禁だ。
「それと魔物を襲う様子も監視させていたのですが…」
サレナは冒険者達が集めた情報をアリシアに話して行く。
アリシアはそれを聞きつつ作戦を立てて行く。
「ありがとうサレナ、後二日あるしその間に作戦を考えておくわ」
「構いませんわ、必ず勝ちますわよ!アリシア!」
確実にアインスベルクの影響で雪害範囲が広がって行っている。
このままでは以前から言われているように農作に大打撃となる。
それを防ぐためにも一回の戦闘でアインスベルクに勝利して雪害を解消したい所だ。
「ええ!必ず!」
アリシアはサレナと握手をすると別れてチェルシーの武器を選ぶためにエルクの武器屋に向かう。
〔エルクの武器屋〕
サレナと別れたアリシアはエルクの武器屋にやって来た。
「よう嬢ちゃん、武器に何か問題が出たのかい?」
エルクは自分が作った武器にしっかりと責任を持つ鍛冶屋だ。
そのためアリシアが来たのを見て問題が出たのか?と聞いて来た。
「いいえ?二日後に強い魔物と戦うの、だからチェルシーに強い武器を持ってもらおうと思ってね」
これまでチェルシーが使っていた斧もかなりの出来の物だがエルクが作る武器ほどではない。
そのためチェルシーの更なる戦闘能力アップのためにもエルクの武器は必要だ。
「分かった、ちょっと腕を見せてもらうぜ?」
「はい」
エルクはチェルシーに近付くと腕の筋肉のつき方や動かした時の筋肉の動きやしなやかさを確認した。
「良い鍛え方だ、アレスに教わっているだけはあるな」
「私が師匠から教えを受けてるとは言ってない筈ですが、流石ですね」
「フン、俺はずっとあいつの武器を見て来たからな、あいつが鍛えた奴かどうかは筋肉の付き方を見ればすぐに分かる」
師と弟子は鍛え方が同じであるため似たような筋肉のつき方になる事が多い。
そのためエルクのようなベテランならば腕を見れば誰が師匠なのか分かるのだ。
「ちょっと待ってな、お前に合う武器を持って来てやる」
エルクは奥に向かい斧を持って来た。
「持ってみな、お前の筋力ならば丁度良い筈だ」
「はい」
チェルシーは斧を持つ。
その瞬間に丁度良い重さであると感じた。
「振ってみても?」
「おう」
チェルシーは斧を振るう。
するとこれまでよりも更に研ぎ澄まされたスイングとなり見ていたアリシアさえも当たればかなりのダメージを受けそうだと思うほどであった。
「素晴らしいです!」
「気に入ってもらえたようで何よりだ、お代は七万だ」
「分かりました」
チェルシーはこれまで稼いだゴールドから払おうとしたがアリシアが払う。
「お、お嬢様?」
「いつもお世話をしてくれるお礼よ」
チェルシーは自分で払うのに…と言いたそうだがアリシアはいつものお礼だと押し切った。
「ありがとうございます!」
チェルシーは嬉しそうに斧を抱きながらお礼を言う。
アリシアはそれを聞いて頬を赤く染めるとチェルシーから背を向ける。
「ほ、ほら!その武器を試すために依頼を受けに行くわよ!アインスベルクとの戦いのためにもその武器に慣れておかないといけなくてよ!」
「ふふっはいお嬢様」
チェルシーはお礼を言われて照れているアリシアを見てクスクスと笑うとエルクにお礼を言ってから彼女と共にギルドに向かう。




