十三話
〔サーストン家別宅〕
ここはサーストン領にある別宅。
前領主が子に領主の座を譲った後に住む家であり現在はここにはアレスの両親夫妻が暮らしている。
「よく来たな!アリシア!」
アリシアの祖父スミスは笑顔で孫娘を出迎え抱きしめた。
「お久しぶりね、お爺様」
アリシアは祖父の腕の中で嬉しそうに微笑む。
「あらあなた、あなただけがアリシアを抱きしめるなんてズルいわ?私にも貸しなさい」
「うむ」
アレスの母ミレイもやって来た。
「また大きくなったわねアリシア」
スミスからアリシアを受け取ったミレイは腕の中の孫娘に優しく微笑みかける。
「それで?セバスチャンから連絡は受けていたが今日は何の用だ?」
スミスはアレスに何をしに来たのか聞いた。
「父上、驚かずに聞いてください」
「なんだ?」
「遂に遂にです!剣聖の加護をアリシアが継いでいるのが分かりました!」
「なんと!」
一族の悲願。
剣聖の加護を継ぐ事。
それを成したとならばスミスにとってとても嬉しい事だ。
そのためアリシアを抱き上げるとくるくる回り始めた。
「め、目が回るわ!お爺様!」
アリシアは目が回ると言った。
「おおすまんすまん」
スミスは苦笑いを見せアリシアを下に降ろした。
「それにしてもめでたいな、加護に覚醒しているのか?」
「それはまだよ、あくまでも加護を継いでいるって分かっただけなの」
「そうか」
スミスはならばまだ祝いをするには早いなと思う。
あくまでも加護を持っているだけで覚醒しなければ祝っても意味がないからである。
「だから聞きたかったの、剣聖の加護が覚醒する条件ってお爺様、何か知らない?ほらアレシア様が覚醒した方法とか」
アリシアはアレシアがどうやって加護に覚醒したのか祖父が知らないか聞いた。
「親父に聞いていたのは戦いの中で覚醒したとの事だ」
スミスが幼い頃に父から聞いていた事だ。
「つまりどんどん戦え!って事ね!」
「そう言う事だな、戦っているうちに覚醒出来るかもしれん」
アリシアは戦いのうちに目覚めるかもしれないと言う祖父の言葉に納得する。
以前の戦闘で敵の動きがスローに感じる現象を認識している。
あのような感覚が進めば覚醒するのかもしれない。
「分かったわ、どんどん戦ってみる!」
戦う事は修行にもなるためアリシアは嫌いではない寧ろ好きな方だ。
そのためアリシアは覚醒を果たすためにもどんどんギルドで依頼など受けて戦闘をして行こうと思った。
「それではアレスよ、覚醒したらまた知らせてくれ、その時は祝いの席を開く」
「分かりました」
アレスは即知らせようと思った。
「さぁお茶にしましょう、メイド達が用意してくれているわ」
「うむ、そうだな」
アリシア達は別宅の中庭に向かう。
中庭にてアリシア達はお茶をしている。
「アリシアの婚約者はまだいないのだったわね?」
「はい、簡単に婚約などさせません」
「…あなたらしいわねぇ」
認めた相手でないと婚約はさせない。
それがアレスの方針である。
「後あの子があの様子なのもあるわね」
テレシアが視線を送る先にはスミスと木剣を使って打ち合っているアリシアの姿があった。
その顔は楽しさに溢れている。
「まぁそれでもかなりの数縁談の誘いは来ているのだけれどね?」
そう言ってテレシアは夫の顔をジッと見つめる。
その縁談をことごとく断っているのはアレスだからだ。
「さっきも言ったが我が娘を簡単に婚約などさせん、後剣を握った事もないような者には尚更だ」
「それはそれで良いと思うわ、剣を握った事もない人はあの子に相応しくないわ」
ミレイの言葉にアレスはその通り!と頷いた。
「終わったぞ、よく鍛えているなアレス、私も衰えたとは言え十二の娘に一本取られてしまったよ」
スミスはかつてはサーストン領をその剣で守っていた剣士であり衰えてはいるとは言え国内有数の剣士だ。
そのスミスから一本を取ってみせたアリシアはやはりかなりの剣の才を持つと言える。
「毎日私自身が戦闘形式で鍛えています」
「うむそれで良い、それを続ければどんどん強くなって行くだろう」
スミスはアレスの育成方針が正しいと太鼓判を押した。
「魔法の方は?どうなの?アレスの魔法剣士をアリシアも継いだのでしょう?」
「かなりのものと私が保証します」
教えているテレシアからしてアリシアの魔法の才は剣と同じくらいあると判断している。
そのためかなりのものだと評した。
「ふむ…ならばアリシアは本当に国内最強どころか世界最強を狙える器かもしれんな」
アレスとテレシアの話を聞いての評価である。
「アリシアはどうだ?世界最強を目指してみたいか?」
「やるならそうね、てっぺんを取りたいわね!」
てっぺんを取りたがるのは前世の影響もある。
「よし、ならば目指してみろ、お前ならそれが出来ると私は思っているぞ」
「ええ!」
アリシアはやる気満々でやれるなら世界一を取ってみせるとガッツポーズを見せた。
「それでは父上、我々はそろそろ帰ります」
「うむ、また来ると良い、今回は急だったからお茶しか出せなかったが、次は料理を一緒に食べよう」
「ええ!」
アリシアは祖父と祖母にハグしてお別れの挨拶をし両親と今回はメイドとして静かに家族の会話の様子を見守っていたチェルシーと共に屋敷に帰って行った。




