四話
〔スカーレット家〕
アリシア達はテイウスとお茶をするためにスカーレット家に戻って来ていた。
「お帰りテレシア、無事資料は手に入れれたのかい?」
「ええ、無事手に入れて来たわ」
テレシアは娘の背後に回ると両肩に手を触れこの子のアイテムボックスの中に収納しているわと兄に伝えた。
「流石は我が妹だ、これでアルタネシアの居場所が分かったと言う事だね?」
「ええ、後は倒すだけね」
後は倒すだけと言う妹の言葉を聞いてお茶をする中庭に向かいながらテイウスは不安そうな顔を見せる。
「本当に勝てるのかい?」
「やってみないと分からないわ、マズイと思ったら即撤退するし心配しないで?」
マズイと思えば逃げるテレシアのやり方は聖女セレティアと同じだ。
まずは周りに出来るだけ巻き込まないように一人か身内だけで挑みそれで無理だと判断すれば戦力を引き連れて挑み直す。
「…それでも不安だ、戦うとしても少し待ってくれないか?」
「お兄様は心配性ねぇ?誰を呼ぶつもり?」
「聖女セレティア様だ」
「セレティア!?なら頼りになるわね!」
以前共に戦ったセレティアはアリシアとしては相性のとても良い頼りになる存在として覚えている。
彼女が来てくれるならかなり安定して戦えるだろう。
「でも聖女なんて呼べるの?」
「アリシアの名前を出せば問題ない」
聖教会は転生者を神の使徒として基本的に特別扱いする。
そのためアリシアが力を貸して欲しいと伝えれば聖女自ら手を貸してくれる筈なのだ。
「ならセレティア様への連絡を任せるわ」
お茶会の会場に着き椅子に座ったテレシアは紅茶を飲みつつ兄に聖女への依頼を任せた。
「もう連絡をさせたすぐに返事が来る…」
「アリシア様、何やら強大な存在と戦うとの事で馳せ参じました」
テイウスが言葉を言い終わる前にセレティアが現れた。
アリシアは彼女の姿を見ると久し振り!と手を合わせた。
「それで?何と戦うのですか?」
セレティアはアリシアに何と戦うのか聞いてくる。
「アルタネシアって知ってる?」
「はい、数百年前に現れて世界を荒らし回り突然現れた謎の転生者によりどこかに封印された邪悪ですよね?」
やはり聖教会でも誰が封印してどこに封印したのかは知らないようだ。
「そいつが復活しそうになってるから倒しに行くの、それで手を貸して欲しいんだけど、良いかしら?」
「喜んで!」
セレティアはアリシアの話を聞きお任せを!と胸に手を当てて答えた。
「うん!頼んだわよ!」
「はい!それとアリシア様!これからもあなたが強大な者と戦う際は私の力をお使いください、あなたに手を貸す事は聖女の役目の一つですから」
「分かった、ならセレティアはこれから私の仲間って事で」
「はい!」
常に一緒に行動するわけではないがこれでセレティアは正式にアリシアの仲間となった。
アリシアが呼べば駆け付けてくれる頼りになる仲間である。
「お嬢様、ニャルカもこの際です、サーストン家で雇いませんか?彼女の素早さは頼りになりますし」
「良いね」
「決まりですね、行って参ります」
ニャルカを雇う事に決めるとチェルシーが即捕獲に向かった。
恐らく何故か追いかけて来るチェルシーから逃げるニャルカと猛烈な追いかけっ子をする事になるだろうが。
アリシアを追いかけ回した結果とんでもなく足が速いチェルシーからは猫族でも逃げ切ることは出来ないだろう。
「…なんなのにゃ!?なんで捕まるのにゃ!?」
結果五分でチェルシーはニャルカを捕まえて来た。
「あなたをうちで雇いたいの」
「雇わなくてもアリシアが私に頼めば手を貸すにゃ!?」
友人の頼みなのだニャルカはそれを断る薄情者ではない。
「あらそう?なら雇うのはやめるわね?」
「…」
ニャルカはアリシアの言葉を聞いて思う。
雇われた方が儲かるのでは?と。
「そ、それで良いにゃ…」
暫く考えた後雇われてなくても手を貸す事にしたようだ。
「それじゃこれまでも何回か一緒にやったけどこれからは強敵と戦う時は呼ぶからよろしくね?」
「んにゃ!よろしくにゃ!」
こうしてニャルカもアリシアの仲間となった。
これで強力な戦力が二人増え十分な戦力となった。
「これで十分かしら?叔父様?」
「聖女に優秀な冒険者、不足はないだろう」
「よし、それじゃ明日早速挑むわよ!」
「おー!…ところで何と戦うにゃ?」
腕を振り上げたニャルカはアリシアが何と戦おうとしているのか聞く。
アリシアが楽しみね!とワクワクしつつ答えるとニャルカはやべーやつにゃ…と死んだ魚の目をしたと言う。
〔スカーレット家浴室〕
アリシアは仲間となった二人とチェルシーと共にお風呂に入っていた。
「…」
セレティアとても大きいニャルカそこそこ大きいチェルシー中々大きいそして自分は大平原。
そんな戦力差を目の当たりにしたアリシアはお湯に顔の半分を浸けてブクブクさせる。
「何ブクブクしてるにゃ?」
「あなた達にあって私にないものって考えれば分かるのではなくて?」
「…あーでもアリシアはまだ十二歳にゃ、まだ膨らみ始めてないのは仕方ないにゃよ」
ニャルカはそのうち成長するってとアリシアの肩を叩いた。
「そうかしら…」
アリシアは下を見て大平原に手を当てる。
「うふふ、私の触りますか?アリシア様」
セレティアは聖母の微笑みを見せつつ巨峰を触るか聞いて来た。
「なんだか負けた気がするから触らない」
「あら?アリシア様ならどれだけ触っても頂いても構いませんのに」
セレティアは頬に手を当てつつ残念そうな顔を見せる。
「そう言えばアリシアって好きな相手はいるのかにゃ?アリシアってかなり美人だからモテそうにゃ」
「いないわよ」
現状アリシアは好きな相手はいない。
今は冒険者として日々を過ごすのがとても楽しく恋をしている暇がないのである。
「あら…」
王城に仕事に来ている時にアリシアとサーシェスがお茶をしている様子を何度か見ていたセレティアはこれはこれはとまた頬に手を当てた。
「そうなんですよ、大変なんですよ彼」
「そうですねぇ…これは大変そうですねぇ…」
あれだけ分かりやすく好意全開なサーシェスだが本人は全く気付いた様子がない。
二人が言うように大変な相手に王子は恋をしたのである。
「まぁ苦労して苦労して好きになってもらうってのも恋愛ですよ」
「そうですね」
「さっきから誰の話をしているのかしら?」
アリシアは私も話に混ざりたい!と腰に手を当てる。
「さぁ誰でしょう?」
「誰でしょうねぇ…」
「何よー!?」
教えてくれない二人に対してアリシアは頬を膨らませる。
「そろそろ上がるわよ!」
「ふふっはい」
教えてくれないと拗ねたアリシア共にチェルシー達は浴室から出て明日に備えて早めにベッドに入るのであった。
エルジリッジ渓谷
アリシア達はアルタネシアと戦うためにエルジリッジ渓谷にやって来ていた。
「熱いわね…」
エルジリッジ渓谷はマグマ地帯と言う事もありとても熱い。
アリシアは耐えられないとセレティアに抱き着く。
「ふふっ、冷房魔法を掛けますね」
セレティアは抱き着いて来たアリシアや周りにいる者達のために冷房魔法を使い周囲を涼しくした。
「はー、快適〜」
アリシアは涼しくなって元気になった。
「さてと涼しくなった所でご先祖様?アルタネシアはどこに封印されているの?言わないはもうなしよ?」
言わないなら帰ってやるとアリシアは思う。
『地図を出して下さい、場所を示しますから』
「ん」
アイテムボックスからアリシアは地図を取り出して広げた。
するとエレシアがアリシアの手を動かして場所を示した。
『ここには古代の遺跡があります、その最奥地にアルタネシアを封印した扉がありますから、開けて下さい』
「分かった」
エレシアとの会話を終えたアリシアは皆の方を向く。
「お嬢様?アルタネシアの場所が分かるのですか?」
「ええ今ご先祖様に教えて貰ったわ、この遺跡の内部にいるみたいよ」
アリシアが指差す遺跡を見てセレティアが反応する。
「テレシア様、ここって…」
「ええ長年色々な魔導士がやって来ては開かないと諦めて来た扉がある謎の遺跡だわ…」
二人は思う開かないわけだと。
何故なら封印術の名手であるエレシアが施した封印が成されている扉なのだから。
「そんな有名な遺跡なのね?」
基本的にダンジョンには入らず平原やら山やら渓谷やらにいる魔物を相手はして来て。
ダンジョンも行きはするがあまり情報を集めていないアリシアは移籍が有名なのか聞く。
「ええ、封印の遺跡って呼ばれているわ、扉の解けない封印を指してね」
「…」
アリシアは母の言葉を聞いて他にも同じ名前の遺跡がありそうだなと思う。
「さっ、その封印の遺跡に行ってさっさとアルタネシアって奴をぶっ飛ばすにゃ!」
「ええ!」
目的地が決まったアリシア達は封印の遺跡に使って進む。
暫く歩くと白い岩で作られた遺跡が見えて来た。
「ここにどうやって世界を滅ぼしかける程の魔物を追い込んだのでしょうか…」
チェルシーは遺跡を見て思った疑問を話す。
「囮や罠を駆使して強引にだって」
当時は囮になる人物がアルタネシアをここまで連れて来て皆で作り上げた罠で奥までアルタネシアを引き摺り込み最後は奥で拘束されているアルタネシアを封印術で封印した。
そのためこの遺跡自体もアルタネシア撃破のために作られた建物である。
そのためアルタネシアが暴れる事も想定してかなりの強度がある。
「ほら見えるでしょ?アリシアちゃん、アレが扉よ」
テレシアが指差す先そこには巨大な扉がある。
あの奥にアルタネシアがいるのだ。
「大きい…」
扉はとんでもない大きさである。
その大きさからアルタネシアの大きさもかなりのものだと想像出来た。
「行きましょう」
セレティアの言葉に皆で頷きアリシア達は遺跡の内部に入り扉に近付いて行く。
「ッ…」
するとアリシアが悪寒を感じる。
鋭い殺気を扉の先から感じたのである。
『目覚め扉からの脱出を企てている奴があなたに気付いたようです』
「そう、みんな、開けたらすぐに襲いかかってくるかもしれないみたいだわ、だから戦闘準備をしておいて」
「了解!」
皆が武器を構える。
アリシアは遂に辿り着いた扉の前に立つ。
「開けるわよ」
「ええ、いつでも良いわよ」
いつでも良いと言うテレシアの言葉に皆も頷く。
アリシアはそれを見て扉に手を触れたすると扉が開き中が見える。
「!」
扉が少し開くのと同時に中から手が伸びて来た。
アリシアは自分を掴もうとする手を避けて下がる。
「愚かな人間共よ、我を解放してくれた事感謝するぞ」
扉が完全に開きアルタネシアの姿が見えた。
その姿は巨大すぎる漆黒のドラゴンであった。
「丁度腹が減っている所でな?お前達で腹拵えをしようではないか!」
アルタネシアが口を開きブレスを放った。
「はぁ!」
チェルシーが迫るブレスを炎を纏わせた斧で相殺した?
「…」
アルタネシアはチェルシーに攻撃を防がれたのを見て理解する。
自身の身体が封印の影響でまだ本調子ではないと言うことを。
「チッ、忌々しい小娘め…」
力を出さないのはエレシアのせいだ。
そのためアルタネシアはエレシアに対する怒りを募らせる。
「そう言えばお前、あの小娘に似ているな?」
「似ているに決まってるわ?子孫だもの」
「ほうほう、益々生かしておく理由がなくなったわ!」
アルタネシアがアリシアに向けて尻尾を振り下ろして来た。
アリシアはその攻撃を避け尻尾の一部を斬り裂く。
「ちぃ!!」
アルタネシアはあっさりと尻尾が斬られたのを見て焦る。
思った以上の自身の弱体化にこのままでは数人の人間に負けてしまう。
「あの忌々しい小娘の子孫に対して引くわけにはいかぬ…どうにかして力を…」
アルタネシアはどうにかして少しでも力を取り戻せないか考える。
そうしているとテレシアのコメットボムとセレティアのセイクリッドアローが迫り直撃する。
「はぁぁ!!」
「んにゃー!」
アリシアとニャルカの斬撃がアルタネシアに命中して吹き飛び巨体が遺跡の奥の壁に激突する。
「くっ…このままでは終わらせぬぞ!」
アルタネシアは怒りながら立ち上がる。
その瞬間地面から何か近付いて来るのを感じる。
その力は地面を突き破るとアルタネシアの体に命中した。
「こ、これは…」
「うふふ、魔王様のお力よ?」
アルタネシアの体を力が貫いたのと同時に現れたのはネーラであった。
「ネーラ!」
「また会ったわねぇ?アリシア、今日は借りを返しに来たわ?」
ネーラはアリシアを睨み付けた後アルタネシアの様子を確認する。
「くっ、ククク!力!力が溢れるぞ!」
「魔王の力を受けて力を取り戻した…?」
アリシアはアルタネシアの様子を見てまずいと焦る。
『まだ半分以下の力です、全ての力を取り戻す前に撃破してください!』
「分かってるわ!」
魔王の力により力を取り戻して行くアルタネシア。
アリシアは完全に力を取り戻す前に倒す!と迫るがアルタネシアに体を掴まれ地面に叩き付けられた。
「かっは!?」
「ククク、先程までのように行くと思うなよ!」
アルタネシアが倒れたアリシアに向けてブレスを放った。
「はぁ!!」
セレティアがセイクリッドシールドでアルタネシアの攻撃を止めた。
ブレスを放った後の隙を狙ってテレシアがコメットボムラッシュを放ち確実にダメージを与える。
「やるな!人間!」
竜の尻尾が振り下ろされた。
チェルシーがそれを受け止めアリシアが弾く。
「くははっ!いいぞ!これこそ戦いよ!」
アルタネシアとアリシア達の戦いは続く。
〔エルジリッジ渓谷〕
アルタネシアが再びブレスを吐いた。
先程より威力が上がっている攻撃だがセレティアが防いだ。
「聖女め!小賢しい!」
聖女の防御力は厄介だと一番最初に殺す事に決めたアルタネシアは先程とは比べ物にならないほどのスピードでセレティアに迫ると腕を振り下ろす。
「くっ!!」
セレティアはなんとか攻撃を避けるが続けて迫った尻尾に直撃して吹き飛ばされる。
「セレティア!」
アリシアがそれを見てミーティアを使いセレティアに追いつくと受け止めた。
「大丈夫?」
「回復すればなんとか…」
今の攻撃でセレティアの左腕は折れていた。
セレティアはそれを回復魔法で回復させる。
「シャインレイ!」
セレティアに回復させまいとアルタネシアが追撃を仕掛けようとするがテレシアが割って入り砲撃魔法で足を止める。
そこにニャルカがドロップキックを命中させて下がらせた。
「カァァ!!」
アルタネシアは下がりながら強力なブレスを放つ。
「これはマズイ!!」
防ぎ切れなければ全滅級の攻撃が放たれたのだテレシアとチェルシーが防御に回るが防ぎ切れずアリシア達は爆発に呑み込まれた。
「…、!」
終わったかと思ったアリシアだが生きている事に驚く。
「これは…」
『緊急時ですので左腕を使わせて貰いました、シャインシールド、テレシアが使ったシャイン系統の星属性魔法です』
アリシアもテレシアもシャインシールドは使えるがエレシアのものは二人が使う同じ技とは格の違う防御力だ。
攻撃力を上げたアルタネシアのブレスでも傷一つ付いていない。
「ありがと、助かったわ」
『ふふっそれでは一緒にあいつを倒してしまいましょう!』
「うん!」
アリシアがアルタネシアにミーティアを使い迫る。
「ちぃ!小娘が!」
アルタネシアが少女に向けて腕を振り下ろしたがエレシアが再びシャインシールドを発動させ腕の攻撃を防ぎアリシアは体を回転させて腕を斬り飛ばした。
「ぐぅ!!」
腕を失ったアルタネシアは巨大な牙を使ってアリシアを噛み砕こうとするがチェルシーが顔を蹴り上げてその攻撃を止め。
回復したセレティアがセイクリッドブレイクを直撃させダメージを確実に与える。
「くぅ…人間共め…全ての力を使えればお前達如きに負けはせぬと言うのに…」
アルタネシアは悔しそうに言いながら最後の攻撃として今出来る全身全霊の砲撃を放とうとする。
「アリシアちゃん!トドメを任せたわ!」
「ええ!究極階梯魔法第三章!スターバーストレイ!」
スターバーストレイはドラゴンのブレスに似た直線的な砲撃魔法だ。
アリシアとアルタネシアは同時に砲撃を放ち競り合いもなった。
「負けぬ!我が全てを支配する世界のために!」
「あんたなんかに世界を支配させたりするもんか!この世界は誰のものでもない!」
アリシアは強い想いを見せ砲撃の威力を更に上げアルタネシアのブレスを上回って見せた。
「ぐぉぉぉ!!!」
スターバーストレイに呑み込まれたアルタネシアは跡形もなく消滅して行った。
「はぁはぁ…」
アルタネシアに皆と共に勝利したアリシアは疲れ果てた様子で地面に座り込む。
「よくやったわアリシアちゃん」
テレシアは頑張った娘の肩を叩く。
『私からも感謝しますアリシア、よくぞ私の役目を引き継ぎ果たしてくれましたね』
アリシアはエレシアの役目も引き継ぎ果たした事になる。
戦闘の才能はなかったエレシアが果たせなかったアルタネシアの撃退という役目を。
「ご先祖様が手を貸してくれたおかげよ?あなたの盾がなければ勝てなかったもの、だからありがとう」
アリシアは勝てたのはエレシアのおかげだと良いお礼を言った。
『ふふっそう言ってもらえると嬉しいです、それでは私は暫く眠りますね?』
「うん」
エレシアはアリシアに眠ると言うと静かになった。
この会話の間に呼吸が整ったアリシアは立ち上がる。
「ニャルカ、セレティア、二人も力を貸してくれてありがとう」
「良いにゃ、友達の助けになれただけで十分にゃよ」
「ええ、ニャルカさんの言う通りです」
三人は会話を終えると笑い合った。
「さぁ帰りましょう」
「うん」
アルタネシアとの戦いを終えたアリシア達はこの場を後にするとそれぞれの家に帰って行った。




