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三話

〔霧の宮殿〕


三人は霧の宮殿にやって来た。


「本当に真っ白ね!」


霧の宮殿は巨大な森であるがその全てが霧に覆われている。


かなり視界が悪いためこの国の中にある地域では特に危険な場所と言えるだろう。


「ここは私が修行をした場所でもあるわ、幼い頃ここに母様に放り込まれて自力で脱出するって修行をね…何回もね…」


テレシアは相当にトラウマなのだろうこの霧の宮殿での思い出を遠い目をして語る。


「私はそう言うのやらなくて良いの?」


スカーレット家の血も流れているアリシアは同じ修行をしなくて良いのか聞く。


「あんなの修行じゃなくてただの拷問だから、私の可愛いアリシアちゃんにはさせません」


そう言って親馬鹿ママンは娘を抱き寄せ抱きしめた。


「えー、楽しそうなのになぁ、ねぇチェルシー、あなたもそう思わない?」


「…こんな何処から魔物が飛び掛かって来るか分からない場所で修行はしたくないです…お嬢様は戦闘が好きすぎますよ…」


「そう?楽しそうだと思うのだけれど」


前世ヤンキーの影響かアリシアは戦うのが好きのである。


そのため何処から敵が来るか分からないこの場所での戦いも面白そうだと思えるのだ。


「とにかくここは何処から魔物が来るか分からないから注意して進みましょう、それで?アリシアちゃん、ご先祖様の隠れ家の場所って分かるのかしら?」


闇雲に進んでもこの視界の悪さだ迷って同じ場所をずっとクルクル回る事になる可能性もある。


そのため目的地が分かるかどうかはここを進む上では重要な要素である。


「知らないわよ?」


しかしアリシアは知りませんけど?と首を傾げた。


「ええ…ならどうやって行くのよ…?」


テレシアはどうしたものか…と思う。


「安心しなさい子孫達よ」


困っていると空から声がして透けた姿のエレシアが再び現れた。


「ご先祖様!」


アリシアはその姿を見てさっきぶり!と手を上げた。


「安心したわ、ここは案内人がいないと本当に遭難するから…」


テレシアがここで脱出しろと奥まで連れて行かれた時はまずは上に上昇して霧から抜け家まで帰った。


そうしなければ帰れないと判断しての行動であったがテレシアの両親は良く機転を効かしたと褒めてくれた。


ここは迷った時もそう言う機転を効かせないと脱出出来ないほどに奥に行けば行くほどに今何処にいるのか分からなくなって行く場所なのだ。


「ふふっしっかりと案内しますから安心してください、それでは行きましょうか」


「ええ」


エレシアの案内で一行は霧の宮殿内部を進み始めた。




「本当に何も見えないわね…」


霧が濃すぎて視界がない中をアリシア達は進んでいた。


「注意してくださいお嬢様、目的地に着く前に転けて怪我をしてはいけませんから」


チェルシーはそう言うと令嬢の手を取った。


「ありがと」


アリシアは転けないように手を繋いでくれるメイドに感謝をする。


「三人とも敵がいます、戦闘を任せますよ」


「分かったわ、アリシアちゃん、気を引き締めて!」


「ええ!」


アリシアが剣を抜いた瞬間に敵が現れた。


斬りかかって来たのはゴブリンだ。


アリシアは攻撃を余裕で避けカウンター気味に剣を振るまで仕留める。


「殺せ!!」


ゴブリンは次々と襲いかかって来る。


チェルシーも斧で次々と斬り伏せるがゴブリンはとてもしつこく次々と襲いかかって来るがアリシア達は苦戦せずに安定してゴブリンを倒して行く。


「流石ですね子孫達よ」


エレシアは子孫達の実力を見て満足気に頷くそして少し羨ましそうだ。


何故なら自分にはこのように戦う才能はなかったからだ。


「二人とも下がりなさい!」


テレシアが自分の後ろに下がるように言いコメットボムを辺りにばら撒き纏めて薙ぎ払った。


「来ませんね、勝ったようです」


ゴブリンに勝利したアリシア達は再び霧の中を歩き始めた。


「ご先祖様、なんでこんな所に隠れ家を作ったの?」


「私の研究資料があるからですよ、私の封印術は自分で言うのも恥ずかしいのですが、当時世界一と言われていたものでした、その技術を他の者達は敵対者を封印するために欲しがっていましてね、ここなら私の隠れ家の場所を知らない者以外は辿り着けませんから、ここに隠れ家を作って私の研究資料を保存しているのです」


今の時代でもエレシアの封印術は世界一と言える物だ。


そのためここの資料は場所が分からなければ辿り着けないここにこのまま保存しておいた方が良い。


「ご先祖様って凄いのね!」


「ふふっ、ありがとうございます」


凄い!と子孫に言ってもらえたエレシアは嬉しそうな顔を見せる。


「もうすぐ着きますよ、ほら見えました」


話しているとエレシアの隠れ家に辿り着いた。


見た目は小さな小屋である。


「私の隠れ家にようこそ、それでは中に入ってください、アルタネシアの保存場所についての資料を見ましょう」


「うん」


アリシアがドアを開ける。


中は数百年誰も来ていない筈なのにとても綺麗だ。


「とても綺麗ね…?」


テレシアもそう思ったようで疑問に思ったようだ。


「封印してあるのですよ、もし誰かがここに入り込んだとしても資料を持ち出せないようにね」


それを聞いたアリシアが資料を手に取ろうとしたが触れる事が出来ない。


「封印を解かないとあなた達でも触れませんよ、封印を解く方法は子孫の血です、ドアが封印の起点となっていますから、そこに血を塗ってください」


「私がやるわ」


娘に出来るだけ怪我をさせたくないテレシアがナイフで指を少しだけ斬りドアに塗る。


すると封印が解け物に触れるようになった。


「それでは資料を探しましょうか…」


「うん…」


小屋の中にはエレシアの研究資料が大量にある。


この中のどれかがアルタネシアの居場所について記したものであるが見つけるのはかなり苦戦しそうだ。


アリシアはこれは大変だと思いながら資料を探し始めた。


〔エレシアの小屋〕


アリシア達が大量の資料の中からアルタネシアの資料を探している。


「あのー?ご先祖様が私達に居場所を直接言えば良いのではなくて!?」


アリシアは探しているうちに思った事を祖先に言った。


「あはは、私は難儀な性格でして、子孫の案内人としてここに配置した私にアルタネシアの事について話せないようにしてあるのですよ」


「なんでそんな…」


チェルシーが面倒臭い…と言った顔を見せる。


「これも試練だと思ってやりました、はい」


「…」


アリシア達は思う本当に難儀な性格だ…と。


「でもあなた達は見事ここに辿り着きましたから、アリシアにテレシアよ、あなた達にここの封印術の研究資料を全て託します、あなた達ならば私の技術を継ぐ事が出来るでしょう…多分」


「多分なの!?」


「封印術は星属性の魔法ですが向き不向きがかなりありますからね、中には失敗したら自分自身が封印されてどうにか頑張って自分の封印から自分で抜け出さなくてはいけなくなりますし」


ちなみにエレシアが転生者としてあまり顔すら知られていないのはこうして自分に跳ね返って来た封印から抜け出そうともがいている期間がそれなりにあったからである。


その期間がなければもう少し封印術を活用して活躍して名も顔も知れていた可能性があるのである。


「ええ…」


アリシアは失敗して封印されたくない…と封印術を覚える気がなくなる。


「嫌そうな顔をしてるけどアリシアちゃん、あなたは魔王と戦うかもしれないのよ?その戦いの時封印術を使って魔王の動きを阻害出来たらかなり勝率が上がるわ?だから覚える価値はかなりあるわよ」


封印術はもし魔王が復活した場合勝利のための要となるかもしれない。


だからこそ覚える価値は十分にある。


「後私が自爆してもがいてる期間がそれなりにあったのは私の性格的に一人で封印術の研究をしていたからです、ですので別の術者がすぐそばにいればよっぽど強い封印術でやらかさない限りはすぐに封印を解いてもらえますよ」


「そう言う事なら私も封印術を覚えるわアリシアちゃん、そもそも私も魔王が復活するのならば戦うつもりだしね」


魔王との戦いは何度も行われたが毎回勇者や転生者一人で行われたわけではない。


その時代の勇者や転生者が集めた仲間達と共に協力して立ち向かい勝利や封印をして来た。


「そして今回もし戦う事になるのでしたら魔王とこの世界の因縁を断つための秘策を準備しましょう」


「因縁を断つ?」


アリシアはエレシアの言葉を聞いて思うただ倒すだけではダメなのか?と。


『ダメですよー歴代の勇者や転生者達は魔王を倒したり封印したりして来ましたがそれでは魔王の魂が生き残っています、その状態では魔王は宿主と慣れる身体を奪いその身体を魔王に作り変えて復活してしまうのです、ですから完全に倒すには魂を消滅させる必要があるのですよ』


神ならば漂う魔王の魂を消す事が可能ではあるがそれをすると強すぎる神の力の影響で世界が大きなダメージを負う。


そうさせないためには人間の手で開発した術で魔王の魂を消滅させる必要がある。


「そうそのための術の試作も作ってありますから、あなたが完成させてください」


「やってみるわ」


アリシアはエレシアの言葉を聞いて力強く頷いた。


「そして魔族達がアリシアの命を狙う理由は転生者であるあなたなら魔王の魂を断つ事が出来る封印術を作り出してしまうかもしれないからです、転生者の魔法の才能はそれが出来るくらいに優れていますからね」


魔王より少し劣るが強力な存在であるアルタネシアを封印してみせたエレシアが言うのだから説得力がある。


「頑張る!」


アリシアがガッツポーズをするのと同時にチェルシーが紙の束を頭上に掲げた。


「見つけましたよ!」


チェルシーが見つけたのはアルタネシアの居場所と使用した封印術について書かれた紙の束であった。


「お手柄ね!チェルシー!」


アリシアは親友でもあるメイドの肩を叩き紙の束を受け取った。


「場所はエルジリッジ渓谷ね」


「火山地帯でとても危険な場所だわ、人が住める場所ではないから誰も近付かないし封印場所としては最適ね」


「ええ、だからこそあそこを選びました、アリシアにテレシア、あなた方にアルタネシアの撃滅を任せます、封印が解けた直後ならあなた達三人なら十分に勝てる力しか出せない筈、準備が出来たら奴の元に向かい撃破してください」


「任されたわ!」


アリシアは再びやってやる!とガッツポーズをする。


「うふふ、任せましたよ、それとこれに触れてください」


エレシアが言うと部屋の中にある杖が光り輝いた。


「これ?」


アリシアが杖に触れると光がアリシアの中に吸い込まれて行く。


『成功しましたね』


その結果エレシアの声がアリシアの頭の中で響いた。


「私の中に入ったの!?」


『ええ、魔王を倒すために封印術を教えるためには師が必要でしょう?そのためにあなたに宿らせて頂きました、あなたとテレシアが封印術を学ぶ際には起きて指導をさせて頂きますから、これからよろしくお願いしますね?』


「え、ええ…よろしく、ご先祖様」


アリシアは思う頭の中で響く声がもう一つ増えたな…と。


『それでは封印術を学ぶために必要な資料を持って帰るためにまずはアイテムボックスの術を覚えましょうか』


「アイテムボックス?」


『封印術の一種で自分自身の空間を異空間に作ってそこに物を保管できるようにする術ですよ』


「はえー、便利ね」


『やり方は…少し身体を借りますね?』


身体に感覚を教えてあげればアイテムボックスはすぐに使えるようになる魔法だ。


そのためエレシアはアリシアの身体を使ってアイテムボックスを使用した。


「なるほど…何もない場所をイメージしてそこに自分の空間を作って物を入れれるようにする感じね!」


異空間とは世界と世界の間にある何もない空間だ。


アイテムボックスは魔力を使ってそこに接続して自分だけの空間を作ってそこに物を入れれるようにする魔法である。


『流石ですね、すぐにアイテムボックスの使い方を理解出来た時点であなたには封印術の才能があるようです』


「フフン、私はご先祖様の子孫ですもの、出来て当然だわ!」


腰に手を当ててドヤ顔を披露するアリシア。


『ふふっ、期待していますよ』


エレシアはその様子を見てクスクスと笑う。


「それじゃ帰りましょうか」


「うん」


アリシアはここにある資料や物を全てアイテムボックスに保存すると母とメイドと共に転移して屋敷に帰る。



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