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二話

〔サーストン家〕


アリシアはテレシアの手によって王都に行くためのおめかしをされていた。


(…私がドレスを着る事になるなんてね)


前世ではいわゆるギャルファッションをしていたが。


今世では普段着も他所行きの服もお嬢様お嬢様している。


前作の自分が今ここにいたら大爆笑されるだろう。


「はい!完成!とても可愛いわ!」


テレシアは青いドレスを着て可愛らしいピンクリボンの髪留めを付けたアリシアを見て頬に手を当てて喜ぶ。


「うむ、よく似合っているぞアリシア」


アレスもドレス姿のアリシアを見て頭を撫でる。


「えへへ、そう?」


鏡に写る自分は確かに可愛らしい。


そのため悪い気はしないアリシアはお嬢様ファッションも良い物だと思う。


「それでは王都、グランセイスに行こうか」


アレスが手を振ると魔法陣が現れた。


王都には転移魔法で向かうのである。


「転移魔法って初めて!」


アリシアは転移魔法とはどんな感覚なのだろう?とワクワクした瞳を見せる。


「ふふっ、初めてを体験出来るのも子供だからこそね」


テレシアはウキウキしている娘に優しい視線を送る。


「出発!」


アレスがアリシアを抱きテレシアと共に三人は王都に向けて転移する。




〔ナタリア王国、王都グランセイス〕


サーストン領が属するナタリア王国の王都グランセイスの王城前に三人は転移して来た。


「おお、アレス久しいな」


すると王城の入り口で客人の出迎えを行っていた騎士団長ケレスが話しかけて来る。


「ケレス!久し振りだな!」


戦友でもあるケレスにアレスは嬉しそうに近付く。


「テレシア殿もお久しぶりだ、そしてその子が?」


ケレスはアリシアを見る。


「あぁ、私の娘だ」


アレスは誇らしげに自分の娘であると紹介する。


「ほほう、テレシア殿に似たのだな、とても可愛らしい」


「そうだろうそうだろう、我が娘はとても可愛いのだ」


ケレスに娘を褒められたアレスは露骨に嬉しそうな顔を見せた。


「さぁアリシア?ケレス様にご挨拶をして?」


「はいお母様」


母に挨拶するように言われたアリシアはぴょんと軽く父の腕の中から飛び降りた。


ケレスは幼いのになんて事なく大人の男性の腕の中から飛び降りたのを見てん…?となったが流す。


「初めましてケレス様サーストン家のアリシアです、以後お見知り置きを!」


元気よくケレスにアリシアは自己紹介をしスカートの裾を持ち上げる。


「流石はサーストン家のご令嬢だ」


しっかりと挨拶を出来たアリシアを見てケレスは褒める。


「さて、アレス、積もる話は後でしよう、私は今は出迎えの仕事を続けなくてはならんのだ」


出迎えかつ不届き者が城内に入らないか監視する役目もケレスにはある。


「分かった、また後でな」


アレスはケレスの肩を叩くと再び娘を抱き上げ城内に入って行く。




今回のパーティは貴族を集めての王の誕生日パーティだ。


毎年同じ日に開催される。


「わぁ!」


煌びやかな装飾と美しい音楽が流れる会場はアリシアにとってはとても綺麗なものに見えた。


「とっても綺麗ね!お父様!」


「ふふ、そうだな」


アレスは娘と話しながら妻と共に王の元に向かう。


「おお、アレスか、よく来てくれた」


丁度別の貴族との話を終えた王エルゼンはアレスの姿を見ると歓迎した。


「お久しぶりです、お変わりないようでなによりです」


アレスは娘を降ろしてから妻と共に片膝を着く。


アリシアも真似をしてみた。


「うむ、お主は随分と変わったようだな?、それが娘か」


「はい、私の娘アリシアでございます」


「テレシアによく似ているな」


やはりアリシアの姿を見ると皆テレシアに似ていると思うようだ。


「何歳になる?」


「今年で五歳です」


「そうか、なら…サーシェス!、こっちへ来るのだ!」


王は第一王子サーシェスを呼ぶ。


「来ました、お父様」


アリシアと同い年くらいに見える少年サーシェスが父に呼ばれてやって来た。


「アリシアよ、我が息子サーシェスはお前と同い年なのだが、王子と言う立場故に共が少ないのだ、だから仲良くしてやってくれぬか?」


「はい!、サーシェス様!、よろしくね!」


アリシアは微笑みながらサーシェスに手を差し出す。


「あ、ああ、よろしく」


サーシェスは頬を赤く染めつつアリシアの手を取り握手をする。


「はい、これで友達よ!、ねっ!、会場の中を見て回りましょ!、良いわよね?お父様!」


サーシェスと友になったアリシアは父と王に会場を見て回って良いか聞く。


「構わぬぞ、サーシェスと遊んでやってくれ」


「だって!、行くわよ!」


「うん!」


二人は楽しげに駆け出し両親から離れて行った。


「もう二人、ご子息がいると聞いておりますが」


「第二王妃と第三王妃との子だ、まだ四歳と二歳でな、パーティに出すには早すぎるのだよ」


「なるほど」


この国では一般的にパーティに出すのは五歳ごろからとされているのである。


「して、サーストン領の様子はどうだ?、お前が送って来る報告書で聞いてはいるが細かいところをお前の口から聞きたい」


「我が領ですが…」


アレスは王に自領について話し始めた。




一方のアリシアは料理が沢山並ぶ机にサーシェスと共にやって来ていた。


「とても美味しそうだわサーシェス」


「そうだね、アリシア」


アリシアは美味しそうだと思うが食べて良いのだろうか?と思う。


「好きなものを食べて大丈夫だよ、アリシア」


その様子を見て料理を食べても大丈夫だとサーシェスはアリシアに伝えた。


「そうなのね、なら一緒に食べましょう?」


「うん!」


二人は空いている机に座る。


するとメイドが近付いて来た。


「料理を持って来てくれ」


サーシェスはメイドに料理を持って来て欲しいと頼む。


「承知致しました、サーシェス様」


メイドは微笑みながら頷くと料理を皿に取りに向かい数分後アリシアとサーシェスの目の前には沢山の料理が並んだ。


二人はそれを見て目を輝かせると嬉しそうに食べ始める。


(アリシア〜?聞こえてますか?)


(げっ…)


美味しい料理を食べ始めると神が脳内に向けて話しかけて来た。


(げっ、とはなんです…あなたに頼みたい事があるのですよ)


(なぁに?)


(そこにいる彼とあなたの父と話す王が今日暗殺されようとしています、それを防いでください)


(はぁ!?)


いきなり暗殺を防げと言われたアリシアは咳き込む。


「大丈夫かい?」


サーシェスは咳き込むアリシアを心配する。


「だ、大丈夫…」


アリシアは大丈夫だと手を振った。


(犯人は?)


(第二王子派のラルフです、その者が雇った私兵が既に侵入しており、あなたの目の前の王子と王を狙っています)


(なるほど)


アリシアは出来るだけ顔を動かさないようにしながら周囲を見渡し何か怪しい者はいないか探す。


(今見つけるのは難しいでしょう、ですから事が起こってからその私兵を捕まえる必要があります)


(…分かった)


事が起こるまでは何も出来ないのだなと思ったアリシアはとりあえず父の元に行こうと思う。


(ここで暗殺が成功してしまうと第二王子が王となり彼の母や貴族達の操り人形となる彼は悪政を行います、そうなるとあなたももちろん幸せに生きる事は出来なくなりますから、頑張って王と王子を守ってくださいね)


神はここまで言うとアリシアとの会話を終える。


「サーシェス、探検はこれでおしまいにしよう」


「どうしてだい?」


せっかく出来た友達と一緒に遊びたいサーシェスは少し不満そうな顔を見せる。


「絶対に大きな声を出さないって約束出来る?」


「出来る」


「なら」


アリシアは今神から聞いた話を彼に話した。


「なるほど…君は転生者で神の言葉を聞く事ができるんだね、それで僕が殺されそうになっていると知らされたと」



「そう、だからお父様ら王の所に戻った方がいいの」


「分かった、急ごう」


「うん」


最後の一口を食べ終わったアリシアは食べ物には何も入ってはいないのだろうなと思う。


入ってるのなら神が言って来る筈だからだ。


「こう言う事があるのなら昨日話してくれたらいいのに…」


愚痴りながらアリシアはサーシェスと共に父の元に戻る。




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