二十五話、黒聖女が来る
〔ネルロンの街〕
ここはネルロンの街。
以前黒鴉の他のアジトがあった街達のようにあまり治安が良いとは言えない街である。
ギルドと騎士団で残り二つのアジトの内もう一つを攻めているためサーストン領兵達とアリシア達はこちらのアジトを潰しにやって来た。
今日アジトを壊滅させる事が出来れば黒鴉が持つ建物は本部だけとなる。
黒鴉との戦いもこれにて最新局面を迎えたと言う事だ。
「攻撃開始!」
アレスは今回は正面から堂々と叩く事にしたようでいきなりサーストン領兵達を突撃させる。
「みんなも行くわよ!」
アリシア達も彼等に続き建物の中に突入した。
「…いつもより少ないにゃ?」
中に入ると敵兵がいつもより少ないのにニャルカが気付く。
「恐らくですがここは捨てて本部に残る戦略を集結させているのかもしれません…」
だからここにいる戦力は少ないのでは?とチェルシーは考えた。
「恐らくそうでしょうね…」
流石に数が違いすぎるため戦いはサーストン領兵達が圧倒している。
ここにいる戦力が壊滅するのは時間の問題だろう。
「これなら余裕ですね」
セレティアはこちら側の怪我人は少なく済みそうだとホッと胸に手を当てる。
その瞬間であった。
「!」
アリシアが何かの気配を感じ取り鞘に収めたまま振るっていた剣を引き抜いた。
「流石ですね、忌々しいアレシア・サーストンの子孫なだけはあります」
現れてアリシアに斬りかかってきたのは黒聖女レイラだ。
「あなたはまさか!」
セレティアがその姿を見て反応する。
「はいそのまさかです、私こそ黒聖女レイラ、偉大なるご先祖様であらせられるレイリーゼ様の子孫です」
「!、アリシア様!油断しないでください!かなり強いはずです!」
「ええ!」
アリシアはレイラの腹に蹴りを叩き込み下がらせる。
「うふふ、効きませんねぇ?」
しかしレイラに攻撃が全く効いていない。
「なっ…」
アリシアは少しと効いていない事実に驚く。
「私はこれまであなたが戦って来た敵とは格が違います、何故なら私はレイリーゼ様に直々に鍛えられた存在なのですから」
強力な魔人であるレイリーゼの教えを受ける事でレイラはこれまでアリシアが戦って来た敵とは格の違う力を持つのである。
「これまではその才能でどうにか出来たのでしょうが、今回ばかりはどうにもならない現実と言うものを教えて差し上げます」
レイラはそう言うとアリシアの目の前から消え次の瞬間には手刀でアリシアの仲間三人の意識を奪う。
「みんな!」
アリシアは仲間が一瞬でやられたのを見て確信する。
本当に格が違うと。
「ちぃ!」
その様子を見ていたアレスが割って入るが軽くあしらわれ蹴り飛ばされるとレイラはアリシアの目の前に現れ蹴りを叩き込んだ。
「かっはっ!?」
その一撃は下半身がなくなったかと思う程の威力であった。
なんとか意識は繋ぎ止めたがアリシアは前のめりに力なく倒れる。
「うふふ、力の差が分かりましたか?」
レイラはアリシアの頭を掴むと持ち上げながら言う。
「けほっけほっ…」
アリシアはまだ咳き込んでおり喋れない。
「…、少しガッカリです、もう少し楽しめるかと思っていたのですが、この程度なら殺す必要すらないですね」
レイラはそう言うとアリシアを離し地面に落とすと顔を踏み付けた。
「あぁぁ!!」
朝顔を踏み付けられたアリシアは悲鳴を上げる。
「フン、拍子抜けです、本当は今日殺してあげようと思ってましたがもう良いです、次会う時はもっと私を楽しませなさい、そうすれば殺してあげます」
レイラはアリシアを蹴り飛ばすと去って行った。
「大丈夫か?アリシア」
アレスは地面に倒れているアリシアに話しかける。
「大丈夫よ…他のみんなは?」
アリシアはなんとか立ち上がると仲間達の安否を確認する。
「問題ないようだ」
アレスと共に確認し意識が奪われただけだと確認出来アリシアはホッとした。
「こんなに何も出来ず負けたのは初めてよ…」
アリシアは何も出来ずに負けた事を悔しく思い俯く。
「負けをいつまでも悔やんでいてはいかんぞ?アリシア、その悔しさをバネにして更に己を鍛え次は負けないようにすれば良いのだからな?」
「そうね」
アリシアは父の言う通りだと思う。
負けを悔やんでも何もならないむしろその悔しさを乗り越えてもっと強くなるべきだ。
「私、もっともっと頑張るわ!」
「うむ、共にな!」
「ええ!」
レイラとの戦いの間に領兵は黒鴉に対しての勝利を収めていた。
アリシア達四人は今回は敗北してしまったが黒鴉に対しては今回も勝利を収める事が出来たのである。
「アリシア、セレティアが起きたら治療してもらえ、俺はこのアジトの内部を調べて来る」
「分かった」
アレスは娘の肩を叩くと去って行った。
アリシアは仲間が目を覚ますのを待つ。
〔魔王軍のアジト〕
「どうだった?あの小娘は?」
「まだまだ成長途中と言った感じですね、現状は私の敵にすらなれません、アレでは楽しめないので今回は生かしています」
「殺せる時に殺さなければ後悔する事になるかもしれんぞ」
男は殺さなかったレイラに対して怒った。
殺せる時に殺しておくのが一番良いからだ。
「嫌です、そもそもあんな雑魚を倒しても我が一族の恨みは晴れませんよ」
「…」
男は納得いっていない様子だが。
レイラは無視し自分の部屋に向かって行った。




