五話、初陣
〔カバマバ鉱山〕
カバマバ鉱山を舞台にした戦闘が開始された。
「アリシア、早速だが成長したお前の力を見せて貰おうか」
アレスは全力を出してみろと言っているのだ。
「分かったわ」
アリシアは浮かぶと魔力を解放する。
「ミーティア!」
少女は迫る敵に向けて猛スピードで迫る。
「!?」
速すぎるスピードに敵は反応すら出来ずに蹴り飛ばされて気絶する。
その直後に近くにいた敵が剣を振るうがカクカクとした動きで避けると剣を振るって相手の剣を折るとコメットボムを命中させて意識を奪う。
「素晴らしいな!」
敵の数は100人ほど。
こちらの数はケレスとその部下を合わせて20人。
しかしそのケレスとアレスだけで十分すぎる戦力となるため数の差は問題とはならない。
「はぁ!」
アリシアは母の戦術を披露し左手からコメットショットを放ち側から見ればオールレンジをしているかのようにしか見えない連続射撃で次々と敵を倒して行く。
「凄いな、剣術はお前、魔法はテレシアさんか、アレは相当に強いぞ」
ケレスはアリシアの戦いを見て強いと評価する。
「そうだ、私の娘は強いのだ」
ケレスの言葉を聞いたアレスは誇らしげに胸を張る。
「あらあら嬉しそうね?あなた?」
誇らしげにしていると妻の声がしたためアレスは上を見るそこにはいつの間にかテレシアがいた。
「や、やぁ?テレシア…」
「私の可愛いアリシアちゃんの初陣なんて一大イベントがあるのに私を誘わないなんてどう言うつもりなのかしら」
そう言いつつ右手に魔力を溜めるテレシア。
「忘れていた…」
「そう」
テレシアは夫の返答を聞きズドンと魔法を放つ。
「相変わらず効くな…」
アレスは妻の魔法の攻撃力の高さを久しぶりに体感しフラつく。
「次からは忘れないように」
「うむ…」
夫婦で戯れている間にアリシアは敵陣のかなり奥まで進んでいた。
「コズミックブレイク!」
剣に溜めた魔力を叩き付けて一気に放出する技コズミックブレイクで十人ほどの意識を一気に刈り取る。
「ふぅ、かなり減ったわね」
十分な戦果を上げたアリシアは浮かんで一息つく。
「お疲れ様ですお嬢様」
アリシアの背中を追ってアリシアの取りこぼしを倒していたチェルシーがアリシアの元に飛んで来た。
「後は兵に任せても…」
話しているとチェルシーがアリシアの背後に何者かが現れるのを見た。
「お嬢様!後ろです!」
チェルシーの声を聞いたアリシアは下に向けて急降下して攻撃を避ける。
「チッ」
アリシアの背中を狙って攻撃をして来たのはエルアーヌだ。
プライドの高いこの女は拠点を何もせず潰されると言う事を嫌ってこちら側に少しでも被害を与えようと戻って来たのである。
「あなたがエルアーヌ?」
「そうよ、私がエルアーヌ、小娘、お前は噂のアリシアね?」
「あら?レディに小娘とは失礼ではなくて?」
アリシアはそう言いながらエルアーヌに迫り剣を振るう。
エルアーヌは少女の剣を受け止めた。
「生意気なガキねぇ!」
イラついた様子のエルアーヌは力で押し込もうとして来た。
ならばと引くアリシアこの動きでエルアーヌは前方に向けてよろめく。
「せぇやぁ!」
アリシアは下がって来たエルアーヌの顔を全力で蹴り飛ばした。
「ぐぅ!!」
顔を蹴り飛ばされ血を吐きつつもエルアーヌは剣を振るって来る。
アリシアはそれを左手に張ったシールドで止め女の腹を狙って全力の蹴りを叩き込んだ。
「くっそぉ!!」
かなりの戦闘経験があるエルアーヌであるが才能に溢れておりしっかりと実戦も経験も積んでいるアリシアにはかなり苦戦している。
「コズミック!ブレイド!」
星の力を込めた斬撃を下から少女は振り上げたエルアーヌは剣で防ぐが折られ地面に向けて吹き飛び激突する。
「くっそ…はぁはぁ…」
大ダメージを受けたエルアーヌは悔しそうにアリシアを見上げながら睨む。
「捕らえさせていただきます!」
チェルシーがエルアーヌを捕えようと動くがここで捕まるわけにはいかないエルアーヌは転移して逃げた。
「ふむ噂通り逃げ足が早いようだな」
「お父様」
逃げられたか…と思っていたアリシアは父の声がしたため振り返る。
「お母様も!?」
するとテレシアがいたので驚く。
「よく頑張ったわねアリシア、私達が教えた事をちゃんと出来てて良かったわ」
テレシアは教えた事をちゃんと実行出来ている娘を褒めて髪を撫でた。
「このくらい出来て当たり前よ、私はお父様とお母様の娘ですもの」
褒められるアリシアは腕を組んでぷいっ!とそっぽを向く。
しかしその頬は赤く喜んでいるのは確実だ。
「あらあら照れちゃって可愛いんだからー」
そう言いつつテレシアは娘を抱き寄せる。
「アレス戦闘は終了だ、鉱山の中を調べよう」
「了解、行くぞアリシア、テレシア」
「ええ」
「うん」
アリシア達はケレスを追って鉱山内に入って行った。
〔第二王子派アジト〕
アジト内部はいきなりこちらが攻め込んだため第二王子派の者達が残した資料などが机の上にある。
「他のアジトの場所も載っているな」
エルアーヌ達が残した資料には他のアジトの場所も載っていた。
明日以外全てのアジトに兵が向かうことになるだろう。
「他に情報は?」
「ないな、これ以上は他のアジトに期待するしかない」
他のアジトの場所が分かっているだけでも大収穫だ。
他のアジトにもなにか確実に情報は眠っているはずだからだ。
「撤退しよう」
「あぁ」
アリシア達はこれ以上調べる場所はないためカバマバ鉱山を後にする。
〔サーストン家〕
屋敷にアリシアとテレシアとチェルシーが戻って来た。
アレスは先程の作戦の結果を王に伝えるためにいない。
「夕飯はアレスが帰って来てからにしましょうか」
「うん」
母と一緒にソファーに座るアリシア。
これまで戦闘経験はかなりあるものの今回のような戦いは初めてで疲れていた少女は母にもたれかかって眠り始める。
「ふふっお疲れね」
テレシアは自分の膝にアリシアの頭を乗せると眠る娘の髪を愛おしげに撫でつつ夫の帰りを待つのであった。




