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おめめを拝借 小話の公園

まるまるショッピング

作者: 松本遊心

3-

「やぁ、メアリー。機嫌きげんはどうだい」

「最高よ、ボブ」

「 よし、じゃあ今日は僕がもっと最高の気分になるものを君に紹介しよう」

「まぁほんとなの?はやく教えて」

「ははは、慌てるなよメアリー。さぁ、まな板の上にあるこれは何かな?」

「ただのトマトに見えるわ」

「そうだね、完熟したとても旨そうなトマトだ。早速味をみてみよう。メアリー、悪いけどそこのナイフでスライスしてくれないか」

「わかったわ。切るだけならあたしだって出来るわ」

「その長い爪じゃあ、レトルトパックの袋を開けるのも大変そうだね」

「そんなことないわよ。だけどあたしはふだん食べる専門なの。・・・あら、いやだ。ぐちゅぐちゅしてちっとも切れないわ」

「おいおい、メアリー。押しつぶすんじゃなくてスライスしてくれよ」

「だってこのナイフちっとも切れないんだもの」

「そうなのかい。じゃあ今度はそちらのナイフで切ってみてくれないか」

「え?こっちのナイフね。新しいトマトを使うわよ。じゃあさっきと同じように・・・、えぇーっ!?いやだボブ、ちょっと待って」

「おやおや、すいすい切れてるじゃないか、メアリー。とても見事なスライストマトだ。パセリを添えて、ジョージの店で4ドルで出そう」

「ナイスアイディアね。でも違うのよ、あたしぜんぜん力をいれてないのに、こんなにすっすって、このナイフが凄いのよ」

「メアリー、ちょっといいかい。完熟トマトもいいけど、さて、この骨付きの魚はどうだろう。・・・大きすぎて鍋に入らないな。よし、半分に切るとしよう」

「そんなに大きな骨は簡単に切れないわよ」

「どれどれ。こうやってこのナイフをサクッといれると・・・、ごらんのとおり。あっというまに真っ二つだ」

「オーマイ・・・。信じられない」

「お次はこちらだ。フリーザーから出してまだそれほど経ってない豚肩ロース肉のご登場。見てくれよ、メアリー。・・・この通りカッチコチだよ、釘でも打とうか」

「ボブ、まさか・・・」

「そのまさかだよ。すーっと、ナイフをスライドすると・・・、この通り。この薄切り肉は味付けして密閉袋でボイルしたら、あっというまにチャーシューのできあがり。ジャパニーズ・ヌードルにのせて食べようか」

「わかったわ、もう降参。いいかげんにしてよ、ボブ。あたしは早くその魔法のナイフのことを知りたいの」

「オーケー。わかったよ、メアリー。そんなに怒らなくてもいいじゃないか。ヘプバーンのスマイル顔が台無しになるじゃないか。いいかい、このブレードマジックナイフは・・・」


 そこで監督からカットがかかった。

「メアリー、もう一段階オーバーリアクションにしてくれ。あとボブ、肉を切るとき少し顔が力んでるな。チーズを切るような表情でやってくれ。手の浮きでた血管は加工で消すから心配するな」紙パックの”鬼ころし”という日本酒をぐびぐび呑みながら彼はいった。


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