第3章 影の向こう側
放課後の教室は、薄暗く静かだった。窓の外では細かな雨粒が絶え間なく降り続け、湿った空気が室内にも漂っている。湊はスマホの画面をじっと見つめていた。そこに映っていたのは、クラスメイトの誰かがネット上で受けている誹謗中傷の書き込みだった。
「なんで、そんなことするんだろう…」湊は小さく呟いた。SNSは誰もが自由に発信できる反面、その言葉が誰かの心を傷つける刃にもなる。彼はその匿名の暴力に、どうしても無関心でいられなかった。
イヤホンからLilyの声が静かに響く。
『表に出てこない闇は、想像以上に深い。見えないからこそ、傷は隠れてしまう』
「助けたいけど、どうすればいいのか分からない」湊は正直な気持ちを漏らす。
『まずは情報を整理しよう。感情に流されず、事実だけを見つめることが大切だよ』
湊は深く息をつき、周囲のクラスメイトの様子を思い返した。誰もが忙しそうに日常を過ごし、問題から目を背けているように見える。そんな中で、傷ついている誰かがいる。
『人は複雑だ。傷つくのも、傷つけるのも、理由がある。理解しようとすることが、最初の一歩』
Lilyの言葉に、湊は少しだけ心が軽くなった気がした。まだ解決の糸口は見えないけれど、彼はこの“影の世界”と向き合う決意を固めた。
その夜、雨の音が窓を叩く中、湊は再びスマホを握りしめた。