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【第六十七話】東安の激戦

199年仲春 徐州琅邪国・東安城西方


銅鑼が鳴り響く。

濛々(もうもう)と砂煙が立ちこめる中、五万の大軍旗がうねりを上げて迫ってきた。

先頭に立つは曹操――その背後には青州兵の黒き波。精鋭を誇るその軍勢は、まるで雪崩(なだ)れの如き勢いで押し寄せた。


「なに!?曹操自らが出陣したというのか!」

張飛が眼を剥き、蛇矛を振り上げる。


「ははっ!面白え!ならばこの張飛が相手になってやるわ!」


太史慈と高順の軍も続き、張飛・太史慈・高順の一万五千が先陣として迎え撃つ。

だが、青州兵の密集陣形は強靭で、夏侯淵の騎兵が矢のように走り、楽進の歩兵が鋭く切り込む。満寵の統率は隙なく、許褚は虎の如き猛威で突入した。


劉備は二万五千を率いて急ぎ合流し、旗を高く掲げた。

「お前ら、ここが踏ん張りどころだ!俺達の義を天下に示すぞ!」


両軍は激突し、矢と槍が乱れ飛ぶ。

戦場は血で染まり、呻き声と怒号が入り混じった。


だが、曹操の用兵は恐るべきものだった。

青州兵は劉備軍を正面から圧しつつ、夏侯淵と楽進が側面を突き、包囲しつつあった。


「殿、我らが劣勢にございます!」

魯粛が叫ぶ。


劉備は歯を食いしばった。

「見りゃ分かる!」


その時、諸葛亮が静かに進言する。

「曹操軍はさすがに強力ですな。しかし、その攻め口は荒々しく急ぎすぎております。彼らは孫堅軍を恐れ、焦っておるのです。殿、ここは一度兵を退き、孫堅殿に後背を衝かせるのが得策かと」


魯粛も続いた。

「諸葛亮の言は尤も。我らは曹操を引き付け、時間(とき)を稼げば、我らに優位になりましょう。そのためには遅滞戦術を用いるが最善にございます」


劉備はしばし黙考し、やがて力強く頷いた。

「その策でいくか。張飛!」


「おう!」


「おまえに殿軍(しんがり)を頼む。全軍が東安城に退けるかはおまえにかけた」


張飛は眼をぎらつかせ、蛇矛を振り回した。

「任せとけ!俺様が見事に殿軍(しんがり)を務めてやるわ!」



---


やがて劉備本隊が徐々に退き始める。

その背後に張飛が独り、馬上で蛇矛を構え立ちはだかった。


「曹操軍の腰抜けども!この燕人(えんじん)張飛が相手だ!命のいらないやつからかかってこォォおい!!」


大喝が天地を揺るがす。

青州兵の先頭を走る兵達はその声に怯み陣形が乱れた。


その隙に劉備軍は退却の路を開き、太史慈・高順も張飛を援護しつつ後退。曹操軍の猛攻を最小限に食い止め、東安城への退却に成功した。


城門が閉じられる頃、張飛はなおも門前に立ち、蛇矛を振りかざして咆哮した。

「曹操ォ!この張飛がいる限り、一歩たりとも通さんぞ!」


その豪声は城壁を揺るがし、曹操軍をひととき止めるのに十分なものであった。


曹操は馬上からその姿を見つめ、眉をひそめつつも唇に微かな笑みを浮かべた。

「……万夫不当(ばんぷふとう)(おとこ)よ。たとえ十倍の兵を以ってしても、あの将に正面から挑むのは容易ならんな」


こうして劉備軍は大きな被害を受けつつも東安城に拠って体勢を立て直すのであった。


そして、曹操軍の背後に――孫堅軍五万がじわじわと迫っていた。

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