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【第五十六話】許昌帰還

<第七章> 嵐の胎動


198年初秋 許昌


秋の風が許昌の城郭を黄金色に染め上げていた。


呂布との激戦を終え、孫堅軍三万の兵は整然と行進し、戦塵を払いながら都へと帰還した。

街路に集まった民衆は口々に「孫堅将軍、万歳!」と叫び、兵士たちに食や水を差し出した。

長き混乱の世にあって、孫堅こそは平和をもたらす英雄と信じているのであった。


許昌の宮殿に入り、献帝へ呂布・袁燿討伐の報告をした。

「臣、孫堅、逆賊袁燿及び呂布討伐を行い帰還いたしました。陛下の御心を乱す賊は平らげましてございます」


「逆賊袁燿、呂布の暴逆を討ち、天下の安寧を取り戻してくれたこと、朕は忘れぬ。将軍の忠義こそ、漢室の柱なり」


孫堅は深く拝礼、退朝した後、そのまま政庁に赴き、陳羣より留守中の報告を受けた。

「許昌の治安はおおむね良好にございます。司隷も鍾繇殿の治世は見事で、産業振興、都の再建は進んでおります。ただし関中の李傕・郭汜が依然として長安を掌握しており、西方の安定は得られておりません。これを放置すれば、再び帝室の威信が損なわれましょう」


孫堅は眉をひそめた。


その時居並ぶ朱皓の元に玄鴉が現れ耳打ちをした。

「殿、玄鴉よりの報で、長安に変事ありとのことです。どうやら、李傕と郭汜は再度仲違いをし、李傕が郭汜に討たれたようです」


庁内は騒然とする。


孫堅は即座に方策を定めた。

「趙儼よ、汝に此度留守居であった六営の陰(臧覇)、雷(甘寧)を預ける。弘農の朱治の軍を合わせ、長安を攻めよ。乱臣を除き、関中を安定させるのだ」


趙儼は直立不動のまま、低く答えた。

「この趙儼、必ずや使命を果たしてみせましょう」


重ねて荀攸、楊弘に命じる。

「荀攸、馬騰へ使者を送り、長安への挟撃を依頼してくれ。楊弘、敵陣営はおそらく乱れていよう。計を用いて趙儼を助けてやってくれ。」


「畏まりました。馬騰殿は漢室への忠義篤きお方。急ぎ使者を送り、参陣を依頼しましょう」


「承知いたしました。離間の策は私の得意とするところ。朱皓殿と協力して破滅へと(いざな)いましょう」


慌ただしくなる中で孫堅は趙儼へ声をかける。

「出陣の準備で忙しいなか悪いが、魏延と劉豹の騎兵隊の仕上がりはどうだ?」


「はっ!河内にて両隊共に五千騎を揃え訓練に励んでおります。実戦投入はしばしお待ちください」


孫堅は張遼に告げる。

「張遼!汝の騎兵の才は(さき)の戦で経験済みだ。并州には勇壮なる胡騎が多いと聞く。魏延や劉豹に加え、そなたにも勇壮な騎兵隊を任せたい。半年預けるゆえ、并州にて募兵し、我が軍の騎兵戦力を拡充せよ。入り用なものは陳羣に言え」


陳羣が苦笑いする横で、張遼は一歩進み出て、胸を打ち鳴らす。

「承知仕りました。この張遼、必ずや天下に比類なき騎兵を整え、将軍の御旗の下に馳せ参じましょう」


続けて孫堅は将軍達をみて告げる。

「六営の風林火山の四将は軍の再編を任せる!」


戦後の都は落ち着くことはなく、次なる戦に向けてなお喧騒に包まれているのだった。

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