【第二十四話】炎、原野を焦がす
曹陽澗・戦場
白波賊の奇襲も空しく、張繍の騎兵隊による強襲により、献帝一行は再び危機に瀕していた。
だが、そのとき――
鋭い軍鼓が戦場に響いた。
魏延率いる騎馬隊が東方から駆けつけ、続いて呂蒙の軽弩隊が丘陵上より矢の弾幕を張る。
「影矢、展開! 張繍の突撃を止めよ!」
呂蒙の号令と共に放たれた連射が、張繍の騎兵の動きを封じる。これにより、戦線は膠着し、献帝一行は辛うじて退避に成功した。
そこへ、ついに孫堅本隊が到着。
病身をおして、軍馬を駆る朱儁が、先頭に立って進み出る。そして献帝の御前に膝をつき、声を震わせて拝礼した。
「陛下……中平元年より十余年、ようやくこの朱儁、陛下をお守りすること叶いました……」
その目には熱い涙があふれ、長年の苦労と忠誠が全身に現れていた。
荀攸もまた深く頭を垂れる。
「この方こそ、漢室の忠臣……」
朱儁の忠誠と、その歩みに誰もが胸を打たれた。
孫堅もまた堂々と拝謁し、献帝に対して宣言する。
「漢王朝の臣、孫堅、ここにまかりこしてございます。賊徒を討ち、陛下をお守り致します!」
その雄姿と声の力に、献帝以下、近臣たちは心打たれた。
「我が目の前に、これほどの偉丈夫が……」
献帝は呟き、楊彪が頷く。
朱儁は近衛兵二千を率いて、周瑜、孫河と共に献帝の警護を担当し、本陣後方へと献帝一行を誘導した。
そして、李傕、郭汜、張済連合軍に対して、孫堅軍は一気に攻勢に出た。
呂蒙の軽弩隊が張繍率いる騎兵を牽制。
李通、臧覇、昌豨が率いる予州兵二万が、正面より敵主力と激突。練度の高さ、士気の高さでじわじわと押し上げていく。
敵陣の崩れかけた隙を突いて、魏延の騎馬隊が左から突撃、陳到の敢死隊が右から一気に突破。
「ここが勝機、突き崩せ!」
挟撃の前に、敵陣は次第に混乱をきたす。
極めつけは、甘寧であった。
「敵の装備を纏い、百名を率いて敵中深くに潜入する」
敵将張済の本陣に対して、伝令を装い甘寧部隊が奇襲をかける。
張済は混乱の中で甘寧に斬り伏せられた。
「張済、討ち取ったり!」
その報に、張繍の騎兵隊は士気を失い退却。
李傕と郭汜も総崩れとなり、戦線は完全に崩壊した。
戦の終わり、孫堅は献帝のもとに戻り、帝の御前に立つ。
「賊徒、討ち果たしました」
献帝はうなずき、静かに言葉を発した。
「孫堅将軍、汝の忠義、朕は忘れぬ」
その言葉に、全軍の将兵が歓声を上げた。
「万歳! 万歳!」
ついに、献帝は救われた。
そしてこの勝利が、漢の未来を照らす一筋の光明となる。




