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【第十八話】治の礎、許昌に築く

193年 晩秋 予州・許昌


予州一帯の平定からおよそ三月、戦火の痕跡を消すように、秋雨が静かに大地を潤していた。


沛国遠征から戻った孫堅は、許昌にて全予州を掌握した政権の体制整備に着手した。

政務の中枢に召集されたのは、朱儁、荀攸、陳羣、趙儼、劉虔、杜襲、梁習、朱治、張機ら重臣たち。そしてその末席には、若き孫策と周瑜が控えていた。


荀攸が口火を切る。


「まず、現在の予州支配地域と、その統治体制についてご報告いたします」


潁川郡:孫堅直轄、軍政補佐に陳羣、兵站と輸送統括に杜襲


汝南郡:太守に袁奐、司馬に黄蓋


梁国:国相に孫静、丞に桓階


魯国:国相に程普、丞に劉琰


沛国:国相に劉馥、司馬に韓当


趙儼が続けて兵站と人口に基づく分析を述べる。


「予州全体の人口およそ三百万。そのうち兵役可能な男子は二十万、兵糧の年間収支から見て、四万の兵を半年維持する外征は可能と見積もられます」


孫堅が頷いた。


「よい。だが数の論ではなく、質もまた肝要。朱治、新兵の訓練状況はどうか」


朱治が真っ直ぐに進み出る。


「はっ。泰山より加わった臧覇・昌豨らの兵は勇猛にして規律に欠けるも、我が軍規にて鍛え上げております。新兵も含め、三ヶ月あれば精鋭として仕上げましょう」


「よし、朱治が鍛練している兵に加え、現有兵力の内、外征に向けた編成に再編を行うべきと考えるが、皆、いかに思う」


荀攸が発言を求め、


「朱儁将軍の旗下におられた精兵一万を近衛兵とし、汝南兵二万の内、精鋭を選りすぐり五千とします。魏延の騎馬隊二千に加え、計一万七千に再編はいかがでしょう」


朱儁が続ける。


「では、わしが陳到と共に汝南兵の選別を行うとしよう。影矢隊は我らの要となる力を持っているが、遠征には不向きかのう」


趙儼が答える。


「現在、遠征に向けた軽弩の開発、生産を急がせております。準備でき次第、訓練に入ります」


陳羣は文吏の整備について進言した。


「法の基準なき地に安寧はなく、今、礼と律を以て基を築く時と存じます。劉虔殿と協力し、漢制を基本とした新たな法典を編纂中です」


劉虔が厳粛な面持ちで続けた。


「祭酒として、学官の整備と共に郷校の再建を進めております。文を修め、礼を知る者を育て、各地の政務に補佐として送る仕組みを築いてまいります」


杜襲と梁習は街道と税制の整備について報告した。許昌を中心に街道を整備し、各郡との連絡を強化。徴税の簡素化と不正の取締を進めた結果、民心の安定が図られつつあるという。


張機は医療制度と公衆衛生の観点から意見を述べた。


「郷ごとの簡易治療所の設置を進めております。水源の管理、病の予防もまた、兵の維持に直結いたします」


重臣たちの報告と討議は夜まで続き、孫堅は静かに締めくくった。


「予州を興し、民を富ませ、士を育てる。それが、漢室再興への礎となろう」


重臣たちは深く頷いた。許昌に灯った治世の炎は、やがて中原の夜を照らす光となるだろう。

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