君達に相応しいと思ってね
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
喚かないのが~。の二人。
ラスボス系母、再臨。
彼とはややぎこちない空気になったまま夕暮れになった。もうすぐ母が帰ってくる。そう思っていたら、インターホンが鳴り響いた。
「出てくるね」
「俺も行く」
淡々とそう言って、玄関のまで降りて扉を開けた。目の前には両手に紙袋を抱えた母と弟が佇んでいた。母は私と彼の顔を一瞥しても無表情で、弟はパッと顔を輝かせた。
「ただいま、兄ちゃん」
きっと両手に荷物が無ければ抱き着いていた事だろう。そんな弟の様子を見て、彼は少しだけ表情を柔らかくした。膝を折ると弟と目を合わせ、ポンっと頭を撫でる。
「悪いな。姉ちゃん借りて」
「良いんだよ!! だってそうしたら兄ちゃんずっと此処に居てくれるでしょ?」
果たしてアンタは私と彼のどっちが好きなんだ。思わず沸き立った冷こい感情に、思わず口を引き結ぶ。けれども良かった。二人が居るお陰で、空気の流れが変わった。
母はそんな仲睦まじい二人の様子を見て、ただ淡々と言う。
「ただいま。つまらない物だがお土産はこれで良いかい?」
差し出されたのは、両手で抱える程のぬいぐるみ。触り心地が良く、つるふかしている。
母の特技はクレーンゲームである。大抵のものは数回アームを動かしただけで漏れなく手に入れる、末恐ろしい人だ。今回もその景品であろう。
「有難う。とても可愛い。ベッドに置くよ」
けれども珍しいな……何時もは『邪魔になるから』とお菓子を取ることが多いのに……。
そう悩んでいると、母の視線が真下に動く。
「君、娘と同じもので良いか?」
「はい?」
問い掛けられた彼は驚いた様に顔を上げた。何を言われているか分からないと言った表情だ。娘の私が言うのもなんだが、母が彼にぬいぐるみを渡す想像が全くつかない。だからこそ、此方まで困惑する。
「ぬいぐるみだよ。……君達に相応しいと思ってね……」
「有難う御座います……」
そう言って彼はぬいぐるみを胸に抱えた。少したじろいでいたけれど、其れでも気に入ったらしい。抱き締める力を強くした。
「じゃあ、俺はこれで……」
「待ちなさい。夕飯、食べていくと良いよ。君の母方には連絡投げとくから」
「でも……」
「え、兄ちゃん帰っちゃうの? 母ちゃんもこう言ってるし、俺達としばらく一緒に居よう。そうだよね? 姉ちゃん」
「え……うん。君は平気?」
そう問い掛けると、やや困惑した表情で頷いた。
このタイトルこそが伏線。
そして疑問。胸に抱える程のデカイ縫いぐるみは、果たして複数置きしてくれるのだろうか? と。
それによって連載時にサイズ変更の予定です。
このラスボス系母が物を送ったり、食事に誘ったりするのは、それだけ信頼を置いたということ。
もしかしたら弟が引き止める描写に変更するかも知れません。
将来、娘をお前にやる。お前が嫌がろうとも押し付ける。覚悟良いな?
という外堀ガチガチな一種の脅しです。
無関係な人間に恐らくそこまでしないので。