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第9話 乱世の風雲

 ルイニカの戦いから一夜明けた。


 ルイニカは両陣営にとってまさしく要衝といえる地点であった。


 クルック軍は城に集結するにしても、直接アークロイ領に攻め入るにしても、ルイニカを経由しなければならない。


 ルイニカ以外の場所ではどれだけ努力しても1000名集結するのがやっとだった。


 現在、ルイニカにいるオフィーリアの下には5000名の兵士が集結していた。


 戦闘から1日経ったものの、依然として自軍の方が集まってくるのが早く、敵軍の集結は一向に捗らないのを見て、オフィーリアはこれなら敵の本拠地を攻めても問題ないと判断した。


 要所ルイニカの村に守りの兵200だけ置いて、自身は1000の兵を率い、敵の本拠地クルック城を目指した。


 城で酒を飲んでいたクルック公は、自軍壊滅の敗報を聞いて仰天した。


 城の物見から戦場の方を見ると、すでにオフィーリア軍1000がもうすぐそこ、目と鼻の先まで迫っていた。


 領主は着の身着のまま家族さえ置き去りにして逃げ出してしまった。


 この遁走劇には領民達もただただ呆れるばかりであった。


 城は陥落し、オフィーリアは領主の家族を捕虜にした。


 こうして戦争は終わった。


 9000の後詰と共にやってきたノアをオフィーリアは出迎える。


「こちらがご主人様の新たに手に入れた城でございます」


「うむ。ご苦労であった」


 ノアはオフィーリアと共に入城する。


 実家の城に比べれば、小さな城だったが、やはり初めて手に入れた城というのはなかなかに格別なものだった。


「時に1日で戦場に駆けつけた勇者達が1000人いたそうだな?」


「はい。此度の(いくさ)。勝利できたのはひとえに彼らの迅速な行軍の賜物です。彼らには特別な(ねぎら)いの言葉を」


「うむ。城の中に集めたまえ」


 ノアは1000人に対して、特別な労いの言葉をかけた。


 小隊長には首席小隊長の地位を与え、兵士1000人には身分の貴賤にかかわらず城内に入ることを許した。


 初陣に間に合わなかった9000人の兵士達は大層悔しがり、誰もが次こそは戦場に駆け付けて、オフィーリア将軍の一番槍になることを心に誓うのであった。


(クルック公を瞬殺か。国力や動員できる実働部隊の数に大した差はなかったはず。将軍の統率力が違うだけでここまで差が出るとはな)


 ノアはその日のうちに領内に戦が終わったことと、降伏すれば寛大な処置を下すことをお触れとして出した。


 旧クルック領内の村々ではしばらくノアのお触れを信じない勢力による継戦活動が行われた。


 戦が終わった?


 クルック領軍が壊滅?


 将軍ゴドルフィンが討たれた?


 クルック公が逃亡?


 城が陥落した?


 あまりに速すぎる。


 彼らは御触れを見た時、狐に摘まれたような気分になった。


 彼らはクルック公から「アークロイ公を名乗る痴れ者が宣戦布告してきたから兵を集結させるように」との命令を下されたばかりだ。


 その動員令の書状が届いたのが昨日の今日の話である。


 彼らは新領主のお触れをデマだと思い、動員令に従ってもはやこの世にいない将軍の下に兵士を送ろうとした。


 だが、オフィーリアが5000の軍を引き連れて、ゴドルフィンの首級を掲げながら彼らの前に姿を現すと、彼らも負けたことを悟るしかなかった。


 先を争うようにしてノアに降伏の使者を送る。


 初戦に遅れて次こそは手柄を立てようといきり立っていた兵達は、肩透かしを食らった。


 ノアは既存の地主利権は残しておくものの、兵力はオフィーリア軍に組み込むよう命じた。


 オフィーリアの指揮系統には新たに1万人の兵士が加えられた。




 旧クルック領の有力者達はすっかり兵の入れ替わった城に参内した。


 新たに領主の座についたノアを見ると、一人一人がノアに臣従と忠誠を誓った。


 その日のうちにノアは評議を開いて、今回の戦争について戦後処置を言い渡すと共に今後の方針を言い渡した。


 旧クルック領の重臣達にこの度の戦争は旧領主の不徳により起こったものであり、すべての責めは旧領主に帰せられること。


 新たな領主としてノアがアークロイ公として旧クルック領に君臨することを認め、法王への領地替え承認要請の手紙に署名すること。


 旧領主を捕縛次第ノアに引き渡すことを約束させた。


 重臣達は項垂れてノアの要求を唯々諾々と受け入れるしかなかったが、一方でノアの側近くの席に座っているメイド服の娘はいったい誰だろうと不思議がった。


 これが戯れにメイド服で会議に参加しているオフィーリアだと気付く者はいない。


 会議に集中しているフリをしながらこの美しい娘に好色な目を向け、目の保養にする者もいたが、腹いせの対象にしようとする者もいないでもなかった。


「アークロイ公。決してこの会議に異議を唱えるわけではありませんが、1つだけ言わなければならないことがあるようですな。これほど重要な会議の席にそのような端女を同席なさるとはいったいどのような了見か」


 この意見に何人かが同調する。


「そうだ。これは我々に対するあまりにも不当な侮辱だ」


「その召使いの退席を要求する」


 ノアはイタズラが成功した子供のようにニヤリと笑った。


「ああ。これは失礼。彼女のことをみんなに紹介するのを忘れていたな。彼女はオフィーリア。今回の戦争で旧クルック公の軍勢を撃破した勲功第一等の騎士だ」


 居並ぶ重臣達は反応に困ったようにキョトンとする。


「アークロイ公。あまり我々を揶揄うのはやめていただきたい。無礼が過ぎますぞ」


「よかろう。では、見せてやれオフィーリア」


「かしこまりました」


 オフィーリアは剣を抜くと、抗議した男の隣の席、いつもゴドルフィンが座っていた鉄製の椅子を一刀両断した。


「ひっ、ひいい」


「なっ、なっ、何をっ」


「これなる剣はゴドルフィン将軍の首を討ち取った剣でございます。嘘だと思うなら、私と死合いして、その斬れ味、ご自身の身で試してみますか?」


 オフィーリアがそう言うと、周囲の警備兵達が目を光らせて一歩前に進み出た。


 剣の柄に手をかけて威嚇する。


 アークロイ公と将軍オフィーリアに刃を向けようとする者がいれば、いかなる者でも即刻首を刎ねるよう彼らは厳命されていた。


 これらの圧は旧クルック重臣達の心胆寒からしめるに十分だった。


(じょ、冗談じゃねーぞ。この小僧、うつけどころか、とんでもない武闘派じゃねーか)




 ノアは新たにオフィーリア軍に編入する新兵を募集した。


 これを受けて、内心、この国の(てい)たらくにうんざりしていた者達は、「アークロイ公のために働かせてくれ」「オフィーリア将軍の一番槍になりたい」と言って志願し、クルック城に列を作って殺到した。


 ノアとオフィーリアは旧クルック領の新規兵を軍に編入させるための施策を次々と打っていく。


 アークロイ公の衝撃に周辺諸国は戦々恐々だった。


 ついにこの僻地にも戦国乱世の風雲が垂れ込めたのかと。


 時代の流れについて行けない者達は、乱世の移り変わりの速さにアタフタするばかりである。



 ・ノア

 城:1つ

 騎士:300人

 兵力:20000人

 税収:2万グラ

 友好国:なし



 ・オフィーリア

 統率:A(↑2)→S

 武略:A(↑2)→A

 近接:A(↑2)→A

 野戦:A(↑2)→A

 忠誠:A(↑2)→S

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