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第41話 アークロイ統一

 アークロイ領に戻ってきたオフィーリアは、ノアがキーゼル・ヴィーク相手に勝利したという報に接した。


(ご主人様。よかった。無事であられたか)


 オフィーリアはその足で砦まで駆け付ける。




 オフィーリアが砦にたどり着いた時、ランバートは事後処理の指揮を取っていた。


「ランバート」


「あっ。オフィーリア司令」


「この砦を築城したのは貴殿らしいな」


 オフィーリアは砦の堅固さに感心しながら言った。


「貴殿の働きには常々感心していたが、まさかこれほど築城の才があるとは思わなかった。私が領地を留守にしている間、よくぞ領主様を守ってくれた。司令として感謝するぞ」


「いや。恐縮であります。自分は領主様の命令に従って、築城したのみ。お褒めに与るほどではありません」


「いやいや。貴殿の働きがなければこの度の勝利はありえなかった。どれだけ我々が敵の城を攻め落とすことができたとしても、領主様の城が落とされては意味がないからな。貴殿の働き、誠に感謝する」


「そうですよ」


 エルザも加わる。


「ランバートさんがしっかり領地を守ってくださったから、私達も思い切って敵地を攻めることができたんです。本当にランバートさんのおかげです。ありがとうございます」


「ランバートさんは補給の指示も的確でしたよ」


 ルーシーがふわりと箒に乗って浮きながら現れた。


「物資をいくつか運びましたが、とてもテキパキと指示を出されていて助かりました」


「ほう。そうだったのか」


「わー。凄いです」


 この美女達からの誉め殺しには流石のランバートも相好を崩さずにはいられなかった。


「いやぁ。照れますなぁ」


 デレデレとしてしまう。


 3人の娘達はきゃっきゃっとますますランバートのことを誉めそやした。


 ノアはその様を遠くから見ていた。


(まったく。領主である俺をよそに置いてチヤホヤされやがって)


 苦笑いする。


(まあ、いっか。大功を挙げたのは事実だし。今日のところは浮かれときな)


 ノアはランバートとオフィーリア達に見つからないよう、そっとその場を離れた。




 そうして、ランバートを褒めちぎっていたオフィーリア達だったが、3人はノアを前にすると夢見る少女のような表情になる。


 ほっぺを朱に染め、瞳を潤ませてまるで手の届かない星を見ているかのように切なげだった。


「ノア様」


 オフィーリアがノアの前に進み出て膝をついた。


「此度の戦役の勝利おめでとうございます。ランバートを見出し、築城の才を開花させた慧眼。敵の不意を突いて1万5千の軍を集結させた機動。敵が浮き足立っていると見るや撃って出た勇気。感服いたしました」


「いやいや。君も知将クラウスを倒したそうじゃないか。大したもんだよ」


「私は領主様のご指示に従ったにすぎません。此度の勝利はひとえに領主様の描いた戦役全体の絵図が優れていたからに他なりません」


「はは。指示通りにクラウスを倒せたのも凄いと思うけどね。それに今回の戦役のプランは君も一緒になって考案してくれたものじゃないか」


「だとしてもです。私の考えを余すことなく引き出し、使いこなせたのはノア様の才覚。まさしく王の器と言って差し支えないかと存じます。どうか私からお祝いを述べさせてください」


 オフィーリアはすっかり頬を熱っぽく赤らめて、その瞳はすっかりのぼせており、神を前にしているかのように心酔しきっている様子だった。


「私からもお祝い申しあげます。領主様」


 エルザが進み出る。


「これで領主様は5つの城を持たれたことになります。本当におめでとうございます。かっこいいです。この僻地で5つの城をお持ちになられた領主様なんて見たことも聞いたこともありません。スケールが違いすぎます。さすがは大公様のご子息。これでアークロイは統一されました。領民一同、領主様のご威光にひれ伏し、感謝しております」


 エルザもノアの手を取って手の甲にキスする。


 エルザのノアを見る目は憧れの公子様、もしくは白馬の王子様を見るような目だった。


「私からもお祝い申し上げます。領主様」


 ルーシーも慣れない仕草で膝をつき、ノアの手を取る。


「また領地が大幅に広がりましたね。これでまたビジネスの幅が広がることを想像すると、私もワクワクが止まりません。是非とも領地経営と品物の流通の際には私めにご一報を」


 ルーシーもノアを見ると照れたようにほっぺを赤らめて、モジモジする。


 まだ目覚めたばかりの自分の中の女の子に戸惑いながらも、ノアのことを意識したような仕草である。


(ルーシー。お前もか)


 ノアはなんとなく娘達3人からのプレッシャーを感じた。


(しょうがない。イキってやるか)


「まっ、俺にかかればこんなもんよ」


「きゃああああ。領主様かっこいいー」


「もーう。領主様ったら」


「おお、大物っぽいですノア様」


(ったく、ミーハーな奴らだぜ)


 まだまだ彼女らも憧れの異性に黄色い声を上げてはしゃぎたいお年頃だった。


 ノアも彼女らの手を取ってキスし、祝福を返した。


 オフィーリアは陶然とし、エルザは肩まで肌を火照らせて身悶える。


 ルーシーはこそばゆそうに照れ笑いを浮かべた。


 3人はますますノアのために頑張ろうと心に誓うのであった。




 ノアがアークロイ一円を支配下に収めたという知らせは瞬く間に大陸中を駆け巡った。


「アークロイが……統一された!?」


「あの鬼の棲む土地が?」


「新領主の名は……ノア? このノアとはいったい誰だ?」


「ユーベル大公の4男坊だそうだ」


「うつけじゃなかったのか? それも実家を追放された……」


「聞くところによると側室の子だとか。まだ成人の儀を終えたばかり」


「弱冠20歳にして5つの城を持つ領主になったというわけか」


「老将ゴドルフィンはどうした? 【剛腕】のヘカトンは? ルーク領の砦は? 知将クラウスは?」


「全員、オフィーリアという将軍にやられたらしい。何でも無類の強さを誇るとか」


「城5つなど。まだまだ中堅ではないか。しかも僻地アークロイ」


「取るに足りませんな」


「だが、まだ1年も経っていないぞ。それでこの成長スピード」


「この勢いが果たしてどこまで続くかな?」


「いずれにしても諸侯会議には出席するはず」


「そこでどんなツラしてるのやら見れるってことか」


「楽しみですな」


 そうして当然ながら、この知らせはユーベル大公領にも届くことになる。

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― 新着の感想 ―
寧ろこっからなんだよなぁ…。うつけと言われていた織田信長も、尾張を統一し、今川を討った事によって大躍進したんだもんな。 弓や築城、騎馬兵にそれを指揮する将、どれに優れているか、見極めなければ、それは…
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