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僻地に追放されたうつけ領主、鑑定スキルで最強武将と共に超大国を創る  作者: 瀬戸夏樹


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第40話 盤上の支配者

 キーゼル・ヴィーク連合軍による攻城はますます困難になっていた。


 (やぐら)を組めば、守将ランバートは向こうよりさらに高い台を即席で作り応戦してくる。


 梯子をかければ、翌日にはその部分の城壁を厚くして梯子をかけにくくする。


 火矢を打ち込めば、その場所を燃えにくい材質で保護し、近くに水を置いてすぐに消火させる。


 攻め手側の選択肢はどんどん少なくなっていった。


 士気も目に見えて下がっていった。


 援軍として求めた兵士は一向に来ない。


 それに彼らはまだ半農半兵の兵力を導入して日が浅かった。


 調練が十分とは言い難く、命令違反や離脱が相次いだ。


「うちの畑が気になるんで一旦帰ってもいいですかね?」


 一部の者はそんなことを言う始末である。


 脱走兵は日に日に多くなっていった。


 彼らをまとめるだけの統率力がキーゼルとヴィークの将2人にはなかった。


 どうにか事態を打開しなければならないとは思っていたが、それも難しかった。


 砦を迂回して、ノアの本拠地に直接攻撃するルートはあるにはあるが、今、砦に背を向ければ背後を襲われる恐れがある。


 立地も絶妙だった。


 今、連合軍がここを離れれば、2国本拠地の城を強襲されないとも限らない。


 逆にノアの本拠地クルック城はまだ遠かった。


 しかもこの砦を残して進めば、砦に残った兵士とノアの本拠地にいる兵士とで挟み撃ちにされかねなかった。


 この砦には守りとしての役割だけでなく、牽制の意味もあったのである。


 これらのリスクを冒してこの砦を迂回するだけの度胸も武略も統率力も連合軍2将にはなかった。


 指揮官が2人いるのも事態を悪化させた。


 2人は細かい方針をめぐって日々対立してしまう。


 クルック城下の大商人の蔵を荒らすだけでいいと思っていた両軍は、思わぬ難局に直面して完全に機能不全に陥った。


 オフィーリアがいない間、敵を釘付けにしたいノアの思惑通りの展開であった。


 そうして無為に過ごしているうちにノアはクルック城から1万の兵を率いて悠々と砦に辿り着く。


 この時点でキーゼル・ヴィーク連合軍の兵力は8000にまで減っており、砦の兵士5000と援軍1万を足した1万5千のアークロイ軍は、敵に対して約2倍の兵力を誇っていた。




 ノアが砦に到着すると、ランバートが忙しく施設内を見回って指示を出しているところだった。


 砦内に不安の色は一切ない。


 みんなランバートの指揮を信頼しているようだった。


 ランバートは野戦においては100〜500人を率いるのが限界の小隊長止まりの男だったが、築城や籠城においては5000人の兵士を束ねることのできる器だった。


 防御の仕組みを考え、構築し、兵士達に規則を守らせることはできるのだ。


 兵士達の方でも、素朴で信頼のおけるランバートが頭を抱えながら図面片手に忙しく走り回っているのをみると、つい彼のことを支えたくなるのである。


 ノアは改めて彼のことを鑑定してみる。



 ランバート

 統率C++

 武略C++

 築城A(↑2)

 信頼A(↑1)



(築城スキルと信頼がAクラスになっている。そして何よりも統率と武略に+値がついている。築城と守城を任されて、実力以上の統率力と武略を発揮したというわけか。人は任された役割と環境によって実力以上にも以下にもなるということだな)


「よう。忙しそうだな」


「あっ、領主様。もう、お着きでしたか」


 ランバートは慌てて敬礼する。


「自分には無理と言っていた割には随分張り切って築城しているじゃないか」


「いやぁ。ははは。実際にやってみるとあれこれアイディアが出てきまして」


「まあ、これからも頼むぞ。信じてるからな」


 ノアはポンとランバートの肩をポンと叩く。


 ランバートは胸にジーンとくるのであった。




 翌日、砦に1万の援軍が来たことがキーゼル・ヴィーク連合軍側にも伝わった。


 両国将軍の動揺は計り知れないものだった。


(バカな。こちらの方が本拠地が近いはずなのに。敵の方が早く援軍が到着するなんて)


 両将軍からすれば奇襲を受けたようなものだった。


 ノアは敵情を見て、これならオフィーリアの到着を待つまでもないと思い、決戦を仕掛けることにした。


 砦の前にある平地に全軍を布陣する。


 連合軍側も逃げ出すわけにはいかず応じる。


 ノアは兵士達の前で演説した。


「敵はオフィーリアがいないと思って、舐めてかかっているぞ。我が軍がオフィーリアだけじゃないことを見せてやれ」


 ノアがそう言って檄を飛ばすと兵士達の士気は否応なく上がった。


 開戦の火蓋が切られる。


 我こそはと心に思う小隊長達とそれに率いられた兵士達は、喜び勇んで敵陣に切り込んでいく。


 逆に2国側の兵士達は見たこともないほどの大軍と敵の士気に怖気付くばかりだった。


 敵将2人はこの期に及んで意見を一致させることができなかった。


 指揮系統には混乱が見られ、2国の兵士達は矛盾した命令が飛び交う中、どちらの指令に耳を傾ければいいのか戸惑い、大いに混乱した。


 戦闘は昼になる前に終わった。


 士気と兵力で圧倒的に勝るノア側の攻勢に、敵の兵士は1人、また1人と逃げ出して、潰走を始め、やがて撃破される。


 敵将2人は捕虜として捕まった。


 領地にほど近い場所で自軍が打ち破られたことを聞いたキーゼル公とヴィーク公はノアに降伏する。


 ここにアークロイ最大の戦役は終わりを告げた。


 ノアは成人の儀を終えたばかりにもかかわらず、5つの城と広大な領地を保有する領主となった。


 この大陸においても中堅レベルの領主といえたし、僻地においてはかつてないほどの勢力が生まれた。


 成人の儀を終えたばかりの若者がこれほどの領地を持つのは異例のことと言える。


 盤上・駒の配置を鑑定スキルで掌握した者がいることに気づいた者はいない。

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