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僻地に追放されたうつけ領主、鑑定スキルで最強の配下たちと共に超大国を創る  作者: 瀬戸夏樹


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第165話 ルドルフの挑戦

 法王とルドルフとの会談を終えたノアはオフィーリア達と合流した。


 ノアがいない間、微妙によそよそしくしていたアークロイ勢とマギア勢だったが、ノアが帰ってくるとすぐにノアを中心にしてまとまりだす。


「おつかれさまです」


「おかえりノア。演説かっこよかったよー」


「領主様の演説にみんな聞き入られていて、感動しました」


 オフィーリア、イングリッドにエルザが盛んに褒めそやす。


「みんなありがとう。ドロシー」


 ノアは家臣達に軽く笑顔を振り撒いただけで、すぐにドロシーを呼び寄せてヒソヒソ話を始める。


「おい。ルドルフの奴、ブラムを失脚させろとか言ってきたぞ」


「むむ。それはあとで言い聞かせておかなければなりませんな」


「あいつ全然封じ込め策のこと理解してないんじゃないか。大丈夫なのか?」


「ご安心ください。(はかりごと)は上手くいっております。法王様との会談はどうでしたか?」


「予想通りセイレーン、ザールグラードのことを突っつかれたが上手くはぐらかしておいた」


「十分です。あとは私にお任せください」


 ノアとドロシーがヒソヒソ話するのを見て、イングリッドはプクーと頬を膨らませる。


 オフィーリアも少し寂しそうにする。


「ノアったらドロシーとばっかり密談して」


「国際会議の場だからな。外交に関する細かい打ち合わせがあるのだろう」


「それは分かるけど。もうちょっと構ってくれてもさー」




 ♦︎




 ラシュヴァンとナヴァルは控え室で会談していた。


「このまま何の成果もなしに国許に帰るのはマズい。どんどんアークロイの言い分が通ることになる」


 ナヴァルは腕を組んで難しい顔をする。


「ナヴァル。貴様も出資してくれる商人達への面目(めんぼく)があるだろう。このままではアークロイに通商利権まで奪われかねんぞ。セイレーンがナヴァルよりもアークロイとの関係を重視し始めたらどうする?」


「分かっている。私もこのままおめおめ帰るつもりはない」


「とにかく例のアークロイ封じ込め策を進める必要がある。ルドルフを持ち上げて、マギア連邦を成立させるぞ」


「だが、どうやって? 情勢はこちらに不利だ。フェルミナスはすでにアークロイに取り込まれている。おまけにセイレーンとザールグラードも後ろ盾にいるとなれば武力での脅しはまったくきかんぞ」


「他の弱小国を利用する。数の力により会議の場でアークロイに圧力をかけるのだ。そのためにもこの国際会議の間に事を決する必要がある」


 こうしてナヴァルとラシュヴァンは社交パーティーに戻ると盛んに策動した。


 ナヴァルの外交力で要人と要人を繋ぎ、ラシュヴァンの謀略能力で巧みに説得していく。


 アークロイの伸長に懸念を示している領主には、アークロイの力を封じ込めることができると言い、マギアの魔石を欲しがっている領主達には、魔石の安定供給に繋がると囁き、それぞれ味方に引き込む。


 こうして各領主達の立場に応じてそれぞれ説得し、連邦派を形成していく。


 当然、ルドルフも巻き込んでマギア連邦成立に向けて国際世論を固め、会議二日目に臨む。





 会議二日目では、ルドルフがノアに挑戦した。


「果たしてこのまま魔法院を放置しておいてもよいものでしょうか。ユーベル第三公子として、マギアの不安定な情勢に懸念を表明いたします。もはや待ったなしです。アークロイ大公には早急にマギア連邦を成立させるよう要求いたします」


 初めは「またルドルフが何か言ってるよ」と冷めた目で見ていた領主達だったが、ラシュヴァンとナヴァルが賛同するのを見て色を変える。


「ユーベル第三公子の言うところもっともだ。どうかな。アークロイ大公。この場で国際的な公約をしてはいかがだろうか」


「私も賛成だ。勢力均衡を主張するならばまずは自分から過度な勢力を手放し、国際協調に努める姿勢を見せていただきたい」


 そして事前に根回ししていた領主達の陣営から拍手が湧き起こる。


 ノアは目に見えて焦ったような態度を取る。


「なっ、何を言いやがる。マギア連邦だなんて。ま、マギアのことは我々アークロイ勢の管轄なのであって。マギアの諸領主達も私の権威をすでに認めているわけであって……」


 その後も会議は平行線が続く。


 ルドルフ、ラシュヴァン、ナヴァルの三人がノアに詰め寄る。ノアはしどろもどろになりながらも態度を保留し続ける。


 しかし、領主達はノアの慌てぶりを見て、マギア連邦とはそんなにもアークロイにとっての泣き所なのかと関心を寄せ始める。


 その夜の社交会では、マギア連邦が話題の中心になり、ルドルフ、ラシュヴァン、ナヴァルの三人に領主達が列をなして教えを乞う光景が見られた。




 会議三日目になると、ルドルフ勢の挑戦はより露骨になった。


「アークロイは今すぐマギア連邦を公約しろー!」


「態度を保留するなー!」


「まあまあ皆さん落ち着いて」


「テメーやる気あんのかー!」


「出来ないんなら今すぐマギアから引き上げろー!」


「おためごかしばっか言ってるんやないで」


「いつまでならできるんだ」


「期限を言え。期限を」


 ノアは押されっぱなしだったが、ルドルフ勢もあと一歩押し切れなかった。


 というのも肝心のマギア勢が沈黙を貫いていたからである。


 それも当然のことだ。マギア勢は今、ノアに逆らったら潰されてしまいかねなかった。


 会議が終わるとルドルフ・ラシュヴァン・ナヴァルはまた集まって協議を重ねた。


 もはや今年の国際会議の主題はマギア連邦になっていた。


 機は熟した。


 そう感じたドロシーは連邦派の陣営に乗り込む。




 ラシュヴァンとナヴァルはギョッとする。


 ドロシーがルドルフに伴われて会議室に乗り込んできたからだ。


「おい。どういうことだルドルフ」


「話が違うじゃないか。なんでアークロイの家来がここに来てるんだよ」


「まあ落ち着け。彼女は敵ではない。我々の協力者だ」


「何?」


「ニュー・ワールド・オーダーじゃ」


「……」


 突然のドロシーの発言にどう反応していいのか分からず全員黙ってしまう。


「ラシュヴァン・ナヴァル両大公よ。話はルドルフ様から聞かせてもらった。実は私もマギアに連邦制を導入するようノア様を説得したいと思っていてな」


「……」


「もし、お主らが私の外交方針に協力してくれるなら、私の方でマギア勢とアークロイ大公を説得してやってもいい」


「……」


 ラシュヴァンは少し不審に思った。


(なんか……トントン拍子に話が進み過ぎているような……)


 謀略家特有の勘だった。


 何かに糸で操られている。そんな感覚。


「バーボン公ドロシーよ。マギア連邦への賛同と協力感謝する。だが、腑に落ちないな。マギア連邦を成立させて貴殿にはいったいどのようなメリットがあるというのだ?」


「マギア連邦が成立した暁には、マギアへの外交はすべてこの私、バーボン公ドロシーを通してもらいたい」


「……」


(なるほど。つまり自分の外交官としての地位を向上させたいということか。これは……望外の戦果かもしれんな)


 アークロイの力を削いだ上、外交官も取り込めるとなれば、アークロイ家臣団に(くさび)を打ち込める。


 もし、ドロシーの野心を焚き付けることができれば、アークロイで内乱を起こさせるこのも可能。


(やる価値はある。むしろメリットしかない。だが、うーむ……)


「つまりご自身の外交官としての地位を強化したい。そういうことですか?」


 ナヴァルがなるべく上品な言い回しで尋ねた。


「うむ。要するにニュー・ワールド・オーダーというわけじゃ」


「お前それ言いたいだけだろ」


 ルドルフが突っ込む。


 ナヴァルもドロシーに危うさを感じていた。


(確かに対外的な地位は強化されるかもしれんが、……だが、分かってるのかこの女。こんなあからさまに外国に協力すれば、アークロイ内で嫌われ者になってしまうぞ。それを分からずにやっているとしたら……彼女に近づくのは危険だ)


「皆様のご懸念はよく分かります。私が皆様に協力した結果、私のアークロイ内での立場が悪くなるのではないか。そうお考えですね?」


 ドロシーが両大公の不安を先回りして言った。


「ご安心ください。私がアークロイ大公の信を失うことはありません。アークロイ大公は私に絶対の信任を置いております。私にお任せください」


(察しのいい奴だな。なるほど。流石にアークロイに重用されるだけのことはある。ただの無茶苦茶な奴ではないというわけか。……だが、甘いな)


 ラシュヴァンは心の中でほくそ笑んだ。


 ノアの信用を得ていたとしても、アークロイ家臣団から反発されないかどうかはまた別だ。


 家臣団からの反発を受ければ、ノアといえどもドロシーを遠ざけざるをえなくなる。


 そうなればラシュヴァンがドロシーを取り込める可能性はより高くなる。


(この賭け。こちらに分があると見た)


 ラシュヴァンはそう思った。


「いいだろう。バーボン公ドロシーよ。貴殿と手を結ぼう」


 ラシュヴァンはドロシーと握手した。


 ナヴァルがなおも迷っている様子を見せると、リンゼンが痺れを切らして進み出た。


「皆さん、何を迷っているのですか? もう国際会議の日数は残り少ないんですよ? これだけ立派な領主様方が集まって何も決められないとはいったいどういうことです? ここで団結しなければマギア連邦を成立させる機会は永遠に失われることになるんですよ?」


 リンゼンのこの一言でナヴァルもドロシーの提案に乗らざるを得なくなった。


 その夜、ドロシーはマギアの有力者達を連れてアークロイ大公の宿所を訪れる。


 続いてラシュヴァン・ナヴァル・ルドルフが訪れる。


 その様を外から見ていた者達はいよいよ明日が山場になるとの観測を立てた。


 ドロシーは「圧力に屈して連邦制を認めるか、ご自身で連邦制を決断するか。お選びください」と言ってノアに詰め寄った。




 翌日、ノアは本会議の場でマギア連邦を公約した。


「マギアの安定化のために連邦制へ移行することを私アークロイはこの場で皆様にお約束いたします(半ギレ)」


「「「「「う、うおおおお!」」」」」


 弱小領主達は自分達が大公を動かしたことに感激して拍手喝采をあげる。


 ラシュヴァン大公やナヴァル大公も演説でアークロイ大公の賢明なる決意に敬意を表すると共に、ドロシーとルドルフの働きに感謝の意を表明する。


 こうしてバーボン公ドロシーは、国際政治においては新大公達を動かしうる大人物と目されるようになった。


 ルドルフの国際的地位も少し上がり、閑古鳥が鳴いていたその拠点コスモ城にも再び外国の使者が訪れるようになった。


 こうして国際的な合意の下、マギア連邦は成立した。

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