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僻地に追放されたうつけ領主、鑑定スキルで最強の配下たちと共に超大国を創る  作者: 瀬戸夏樹


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第157話 魔女との駆け引き

 ノルンに帰還したドロシー達はノアにフェルミナス大公との会談の首尾について報告した。


「ただいま戻りました。ノア様」


「うむ。ご苦労であった。それで? フェルミナスとの会談はどうだった?」


「はい。首尾よく話をまとめることができました。途中、ナヴァル海軍と戦闘しそうになりましたが、こちらもどうにか上手く切り抜けました」


 ドロシーはフェルミナスとの魔石のやり取りに関する同盟、寄港することの自由、その他諸々の権利を獲得し、恙無(つつがな)く会談を終えたことを報告する。


「そうか。首尾よく終わったか。よくやったぞドロシー」


「は。ありがたきお言葉」


 ノアはイングリッドの方に向き直った。


「イングリッド。ナヴァルの海軍と交戦したそうだな。彼らの海軍力は我が軍と比べてどうだった? 君の率直な印象を聞かせてくれ」


「ご安心ください大公様。ナヴァルの海軍は我々が火砲を一発威嚇に撃ち込むだけであっさりと尻尾を巻いて逃げ出しました。火力、操船技術、運搬能力、全てにおいて我々ノルン艦隊の足下にも及びません。ナヴァル海軍と抗争する際は是非我々にお任せください」


 イングリッドはにこやかに言った。


 一方でブラムからの報告はそう楽観的なものではなかった。


「ブラム。フェルミナスの竜騎士を見てきたそうだな。どうかな? 彼らの竜騎士部隊は噂通り本物なのか?」


「フェルミナスの竜騎士はマギアのどの飛空戦力よりも高い空戦能力を誇ります。城壁ほどの高さのある塔の頂上に火の息で易々と火を付けておりました。飛行速度、旋回能力、火力、いずれも一級のもので、フェルミナス軍から城を守るのは容易ならざることかと存じます」


「ふむ。空から攻められれば城は守りきれないか。ゴーレムの砲撃や魔石銃でも撃ち落とせないのか?」


「いくらゴーレムや魔石銃の火力が高いといえども空を飛ぶ竜を正確に撃ち落とすのは難しいでしょう。攻囲戦に持ち込まれないようにするのが肝要かと存じます。隘路にて敵の不意を突く奇襲を仕掛けるか、もしくは開けた地での会戦にて撃破するのが得策かと」


「なるほど。では、こちらも飛行戦力をもって迎撃するのはどうだ?」


「!?」


 それを聞いてブラムはハッとした。


(言われてみれば竜騎士同士の戦闘はまだ見ていなかったな)


 竜騎士に対して竜騎士をぶつける。もしくは他の飛行戦力をぶつければどうなるのか。


「そこまでは考えが及びませんでした。確かにこちらも飛行戦力を開発すれば、竜騎士に対抗できるやもしれません。ただ、開発には多大な費用と期間がかかるかと」


 マギアにも竜に騎乗する魔導士はいなくはなかったが、せいぜい高い場所にレンガを運ばせるくらいの補助的なもので、フェルミナスほど巧みかつ強力に運用できている者はいなかった。


 フェルミナスにはマギアにはない何らかの最先端技術があるに違いなかった。


「ふむ。そうか。竜騎士と魔石の運用についてはどうだ?


 何か分かったか?」


「いえ、フェルミナス大公レオンハルトはしたたかな男です。竜騎士の強さについては気前よく見せてくれましたが、その運用の秘訣については隠し通していました。ただ、竜騎士を操るのに、物体に風力を与える風の魔石と火力を補強する火の魔石が使われていることは間違いありません」


「なるほど。フェルミナスと事を交える際にはその二つの魔石を押さえるのが鍵になりそうだな」


 逆にフェルミナスからすれば、今のうちに可能な限り魔石を調達しておきたいところだろう。


「ま、フェルミナスの竜騎士が強力かつ最先端なのはよく分かった。それを念頭に防衛策を練ろう」


「ノア様。今は勢力均衡政策が最優先です。フェルミナスとは無用な争いは避け、友好関係を築くことが肝要です」


 ドロシーが釘を刺すように言った。


「ああ。分かっている」


 とはいえノアはフェルミナスと戦争が起きた際にはブラムを将軍に任命しようと心の中で決めるのであった。


「三人共ご苦労だったな。下がっていいぞ」




 ♦︎




 ノアへの報告を終えたドロシーは、今度はセイレーン海洋帝国との交渉に向かった。


 あまり対立点のないフェルミナスと違って、セイレーンとの交渉は難航することが予想された。


 ルーシーの伝手を借りて、大魔女の一人との会談を実現する。


 交渉は魔族領と神聖教会圏どちらにも属さない土地にて行われた。


 セイレーンの大魔女はドロシーを見るなり威丈高にこう言った。


「この侵略者共めが! アークロイのマギアでのあの振る舞いはなんだ? お前達の行動は魔族と神聖教会の長年にわたる協調を台無しにした。セイレーンはアークロイ領の是正を求める。マギアの港を開放し、市場への自由なアクセスを保証せよ。アークロイ軍は即刻マギアから引き上げろ。征服した魔法院は手放し独立させろ。さもなくば痛い目に遭うぞ!」


「いやだ。そっちがそんな態度で来るなら我々はお前らとは交渉しない」


 ドロシーがそう言うと、魔女は黙り込んだ。


「……ふー。いいだろう。何が望みだ」


「今後、マギアの魔石取引は全てアークロイが取り仕切る。魔石取引をする際はすべてアークロイを通してもらう。セイレーンにはマギアのすべての権益を手放してもらう。セイレーンはマギアから即刻出ていけ。さもなければマギア内にあるセイレーンの資産はすべて接収するぞ!」


「そんなにいきり立たないでもいいじゃないの」


 魔女は猫撫で声で言った。


「そんなことできるわけないって本当は分かってるんでしょう?」


 今度はドロシーが黙り込む番だった。


 実際、海での戦力ではまだセイレーンの方が上だった。


 セイレーンが本気で海上封鎖すれば、マギアの海を通した魔石取引は滞ってしまうだろう。


「……」


「飴食べる?」


「いらん」


 その後も二人は互いに相手を脅したり、宥めすかしたり、探りを入れたり、譲歩したりしながらジリジリと妥協点を探っていく。


 そうして交渉を進めていくうちに、セイレーンの妥協点はナイゼルとジーフの独立を維持することだと分かった。


(やはりそこがセイレーンの落としどころか)


「お主らがナイゼルとジーフの独立を重視していることは分かった。我々としてもお主らの要求を聞いてやらんでもない。ただし、我々の進める勢力均衡の一翼を担ってもらう」


「つまり?」


「マギア連邦を承認してもらいたい」


(マギア連邦……。魔法院の連合か)


「ナイゼルを生かすなら、魔法院の力を強めてナイゼルの力を削ぐのが絶対条件じゃ」


 この案についてはすでにナヴァルを通して魔女の耳にも入っていた。


(ナヴァルによるとマギア連邦は、ユーベル第三公子ルドルフの謀略らしいが……。アークロイ封じ込め策、果たして信用してもいいものか)


「この案についてはユーベルの第三公子ルドルフ様にも承認してもらっておる。あとはセイレーンとナヴァル、ザールグラードにも認めてもらえれば誰からも反対されることはない」


「……」


「もしこれが認められないというのなら、我々はザールグラード大陸帝国に魔石とゴーレムの技術提供を行うつもりじゃ」


「ちっ。ザールグラードのワニ共か」


 魔女は思わず本音を(こぼ)してしまった。


 セイレーンとザールグラードは同じ魔王四天王の治める国にもかかわらず仲が悪かった。


 特に近年のザールグラードによる小国併合は目に余る。


 セイレーンはザールグラードによる大陸制覇も止めたかった。


 大陸がすべて統一されてしまうと、海洋国は港から締め出され、貿易の利益にあやかれなくなり、やがて敵の編成した海軍によって侵攻されてしまう。


「逆にザールグラードが調子に乗りすぎたらお主らの海上封鎖を手伝ってやらんでもない。他にもフェルミナスやラシュヴァンが勢力を拡大する動きを見せれば、一緒に牽制できるだろう」


「ふー。ナイゼルとジーフの独立は保たれるんだな?」


「お主らがこちらの要求を呑むならな」


「いいだろう。貴様らのマギア連邦とやらを認めてやる。その代わり……」


「ナイゼルとジーフの独立は守る」


「魔石の供給については……」


「ナイゼルとノルンの魔法院を通して取引しよう」


「交渉成立だ」


「うむ」


 二人は握手を交わした。


 ドロシーは魔女から貰った飴を口に含んで、魔女はドロシーから貰ったよく磨かれた魔石を受け取る。


 その後は和やかに会談して、終始友好的な態度で互いの健闘を称え合い、酒と食事を楽しんだ。


 ドロシーは魔女と別れると今度はザールグラード大陸帝国へと飛んだ。




─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

・あとがき

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