第144話 同盟国の将
バーボン城では、ブラムがノアに呼び出されて謁見しようとしていた。
表向き社交パーティーという名目で、平和的外交だったが、実際には今回の戦役に参加したナイゼル・ジーフの騎士や将校はすべて参加するよう強制されていた。
そこでアークロイに一人ずつ謁見する予定だという。
要はアークロイによる試験といったところだろう。各国の首脳や騎士に本当に友好的な関係を築くつもりがあるのか、叛心がないかどうか実際に顔を見て判断するつもりなのだ。
ここで印象を悪くすれば、どんな難癖を付けられるか分かったものじゃない。
ブラムにとっては第一公子となって初の大仕事。
アークロイとの講和をなるべく不利ではない条件で結ぶ。
兄のベルナルドが失脚した以上、今後はブラムがナイゼルの国政を回していかなければならない。
そのためにはノアとの会見をつつがなく終わらせる必要がある。
(いよいよ。アークロイ大公と会見か。緊張するな)
これまでブラムは軍務しかこなしておらず、外交は兄に任せっきりだった。
聞くところによると、ジーフ公とその配下の将軍達も呼ばれているらしい。
スメドリー、シャーフやソアレスも来ているとのことだ。
マギアの二大国に競争させようとしているのだろう。
ブラムとしては下手を打てない場面だった。
会場前の廊下で屯していると、煌びやかな衣装に身を包んだ一団に遭遇する。
地方貴族の令嬢達とその両親のようだった。
アークロイ大公がマギアの最高権力者になったと聞いて、早速お近づきになり、縁戚を結ぼうと企んでいるのだろう。
同様の連中は他にも多数見受けられた。
自慢の娘を従えて売り込み、人生一発逆転しようというわけだ。
(まったく気楽なもんだな)
そんな煌びやかな集団がソワソワしている一方で、やけに無骨な集団が通りすがる。
アークロイ軍の一団のようだが、その中心にいるのはこれまた普通のおっさんである。
あまりオーラはないのにやたら若い兵士達から敬意を払われている。
(な、なんだあのおっさんは……)
困惑したのはブラムだけではないようだ。
マギア地方の貴族や貴婦人達もその武骨な一団に一瞬眉をしかめ、しかしそれがアークロイ軍の精鋭だと分かると慌てて表情を引っ込める。
ブラムは警備兵の一人に尋ねる。
「君、彼はやけに敬意を払われているようだが、名のある将なのか?」
「は。あの方はサブレ城でユーベル軍とナイゼル軍を迎え撃ち、見事防衛したランバート将軍です」
「何!? あいつが!?」
(普通のおっさんじゃねぇか。こいつがサブレ城の守りを固めていた将?)
ブラムはついまじまじとランバートの顔を見てしまう。
(こんな普通のおっさんのポテンシャルを引き出すアークロイ大公ノア。いったいどんな奴なんだ?)
ソアレス
★統率:B
★武略:B
外交:D
内政:D
謀略:D
★野戦:B
攻城:D
★築城:B
海戦:F
空戦:F
近接:C
射撃:C
騎戦:E
★砲戦:C→B
開発:E
【ソアレス抜粋版
統率:B
武略:B
野戦:B
築城:B
砲戦:C→B】
(ふむ。いかにも地に足のついた野戦指揮官といった感じだな)
ノルン城で戦った時のイメージ通りの将だった。
(統率と武略がBとそこそこ高いのに加えて、野戦、築城、近接がかなり高い。要地で手堅く迎撃するのに向いてそうな将だな。逆に城攻めはイマイチ。砲戦や騎兵戦も微妙。それでノルン城は攻めきれなかったってわけだな)
「うむ。よく来たな。ノルン城で俺と戦った時のことを覚えているか?」
「は。その節は胸を借りることになりました」
「そう畏まらなくてもよい。私は貴殿の武勇を褒め称えたいのだ。ノルン城での布陣見事だったぞ」
「は、はぁ」
ソアレスは困惑しながらも、自分の首が刎ねられるわけではないと分かってホッとした。
だが、ノアから「更迭されたそうだな。何か私にできることはないか?」「よかったらアークロイ軍に来ないか?」と言われた時には再び畏まらずにはいられなかった。
ノアは二、三質問だけして、今日のところはソアレスを解放してやる。
次に現れたのはシャーフだった。
シャーフ
★統率:B
★武略:B
外交:E
内政:E
謀略:E
★野戦:B
攻城:D
築城:D
海戦:F
空戦:F
★近接:B→A
射撃:D
★騎戦:C→A
砲戦:D
開発:E
★忠誠:C→A
【シャーフ抜粋版
統率:B
武略:B
野戦:B
近接:B→A
騎戦:C→A
忠誠:C→A】
(ほう。騎戦、近接、忠誠がAの資質か)
優秀な騎兵隊長になりうる資質。
忠誠も高いから命知らずの突撃も厭わぬ騎兵隊長だ。
近接も高いから危険な突撃で暴れる猛将にもなりうる。
追撃時には戦果を大幅に上げることもできそうだ。
逆に外交、内政、謀略、開発など中・長期的な視点に立つ資質はすべてEと弱い。
根っからのせっかちなのだろう。
また、攻城、築城、射撃、砲戦など手厚く、面で捉える必要のある戦域もあまり強くない。
手堅い布陣を好むソアレスの下では、充分に資質を発揮できなかったというわけだ。
また、外交・謀略を好む実利的なジーフ公の下でも危険な機動戦を仕掛ける機会が限定的だった。
だが、神速の用兵を持ち味にするオフィーリアの下でなら……。
そして何より忠誠が高い。
忠誠の資質が高い奴はレアだ。
自軍より火力の高いイングリッドを前にして、スピリッツを守り切ったのもその忠誠心の高さがなせる技か。
変節漢のジーフ公の下ではなかなかその忠誠心を上げることはできなかったようだが。
(育ちきる前に、今のうちに手懐けておきたいところだな。敵にするとめんどくさそうだし)




