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第110話 離脱と開戦

 クラウスがレイス城方面の攻撃を担う。


 それを聞いて、イングリッドは首を傾げた。


(確かバーボン侵攻の時、ちょっとだけ役に立ってた人よね)


 イングリッドだけでなくマギア地方の諸将は、クラウスと聞いて首を傾げた。


 クラウスが誰か知らない人間も多々いた。


 アークロイ勢の中でもクラウスの実力に疑問を持つ者は少なくない。


(でも、ノアがこの大事な場面で推すってことは凄い人なのかな?)



 クラウス

 統率:B→B

 武略:B→B

 外交:B→B

 謀略:B→B



(クラウス。腕は鈍っていないようだな)


「クラウス、バーボン城の守りよくぞこなしてくれたな」


(ノア様。見ていてくださっていたのか)


 クラウスは主君の言葉に感激する。


「アークロイとマギアを繋ぐこの地点の守りは貴殿にしかできない役目だった。が、長らく前線から遠ざけて暇させてしまったな。ジーフ攻略戦では存分にその手腕を発揮してくれ」


「は。身命を賭してこの任に当たらせていただきます」


「クラウス、レイス城方面は搦手だ。敵を引き付けつつ、場合によっては主攻を担うオフィーリアに呼応して攻める必要がある」


(攻守の切り替えが難しいということか)


「それだけではない。レイス城方面にはおそらく謀将スメドリーが守りにつくと思われる」


(大国ジーフの老将。経験豊かな謀将となれば……厄介だな)


「オフィーリアが対決してみたところ、相当謀略に優れた将ということだ」


(難攻不落のレイス城、サリスとの外交、離れた場所にいるオフィーリア司令との連携、そして謀略に優れた将が敵か。相当難しい任務になるな)


「いけるか? クラウス」


「は。敗残の将であった私をここまで取り立ててくださったご恩必ずやこの戦で返させていただきます」


「よし。よく言った。頼んだぞ」


 ノアは残りの将にもそれぞれ役割を与える。


「エルザはオフィーリアの部隊に入って攻城を補佐。ガラッドはイングリッドの部隊に入って砲戦の補佐に当たってくれ」


「分かりましたっ」


「おう、砲戦は任せろ」


「グラストンとターニャはノルン城の守り。ドロシーはバーボン城でアノンら5国との外交およびナイゼル、ジーフの調略だ」


「かしこまりました」


「ノルン城は必ずや守りきってみせます」


「うむ。任せておけ」


 こうしてすべての部署に配置と指示を出したノアは、石田三成の挙兵を期待する徳川家康のような気持ちでバーボンの港から聖都サンクテロリアへと発つ。


 ルドルフが例の他責思考全開の演説をして暴発したのはこの直後のことである。




 ドロシーはルドルフが攻めてくると思われるサブレ城に援軍を寄越すよう、アノン、ネーウェル、リマ、エンデ、サリスに要請した。


 サブレ城が攻め落とされれば、次はこの5国がユーベル軍の標的になる可能性が高かった。


 5国からすれば自衛の意味でもサブレ城を支援する意義はあるし、アークロイ公からの守ってやってるんだからこの5国にも相応の負担を背負って欲しいという要求ももっともなことである。


 同盟5国は守りに必要な人数だけ自国に残して、サブレ城へと援軍を派遣した。


 同盟5国の兵士達はルドルフ憎しの気持ちで高い士気でもってサブレ城へと駆け付ける。


 だが、ジーフの側から見ればこの5国の動きはサブレ城でユーベルに備えるのではなく、ラスク城からジーフに攻め込む準備のように見えた。


 これを見たシャーフはナイゼル海軍をも扇動して、アノンら5国およびバーボンの港を攻撃するようにかけ合った。


 事前協議において、ナイゼル海軍による攻撃はサブレ城方面にブラムが進軍して敵軍をある程度引き付けていることが前提条件だったが、シャーフはルドルフがサブレ城に侵攻しているのでそれで充分だと考えた。


 しかも海軍はブラムの管轄ではなくベルナルドが実権を握っていたため、抑えることができず、ベルナルドもついついジーフ側の言い分に耳を傾けてしまう。


「アークロイ公が離れている今、海からアークロイ陣営を撹乱する絶好のチャンスだ。この機会を逃せば二度と海でアークロイ軍を圧倒するチャンスは来ないぞ」


「アークロイ公が離れたこの時をおいて、いつやるっていうんだ。今でしょ」


 こうしてシャーフ率いるジーフ軍はノルン城にナイゼル海軍はアノンら5国にそれぞれルドルフがサブレ城に食いつき次第、侵攻する方向で調整した。


 陸軍と海軍の指揮権を統合できなかったのがナイゼル兄弟体制の限界であった。




 ルドルフ率いるユーベル軍は、カルディ城に2万の兵力とクーニグを残し(反乱が起きているため守りに通常の2倍の兵力が必要と判断した)、5万の兵力でサブレ城へと侵攻していた。


 途中でナイゼル領を通り抜けるため、ナイゼル軍が襲いかかってくると見越していたが、予想に反してナイゼル軍は襲って来なかった。


 これにルドルフは困惑した。


 というのも、サブレ城へのルートの脇にナイゼルのダスカリア城があり、このままサブレ城へ向かえば、側面と背後を脅かされる可能性が高いからだ。


 仕方なく、ルドルフはまずダスカリア城を攻め落とそうと兵を向けた。


 しかし、これに対してはブラムの方が対応が速く、すぐに2万の増援をダスカリア城に派遣して守りを固め、容易には攻め落とせないようにする。


 仕方なくルドルフはヴァーノンに2万の兵を預け、押さえに残して、残りの3万の兵力でサブレ城へと急ぎ向かう。


 ルドルフには兵糧と補給の問題があったので、とにかく急いで敵軍を撃破し、力を見せつけて、領民を従わせなければならないのだ。


 情報によるとサブレ城を守る人員はせいぜい1万人。


 急いで駆け付ければ、力押しで攻めきれないこともなかった。


 そうしてサブレ城へと迫るユーベル軍3万だったが、そこに待ち構えていたのはランバートの築いた長大な土塁と塹壕だった。

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― 新着の感想 ―
地味な働きも評価してもらえるのは嬉しいものですよね。
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