白い夜と黒い月① 敵対編2
第二章
数分後、私は手術台を前に(いつもながら)緊張していた。メスを使い、肌の外から的確に神経を取り出して行く。それを全身に行い終わったら、脳や四肢に専用の機械を取り付けて行く。あとは『雷』の情報を元に、体が勝手に順応するだろう。
ーー補足説明ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『脳内貫通型金タライ』のように特別な技(?)には『』を付けるが、この『雷』は、(面倒臭くて)名前が付けられていないので、便宜上『雷』と表現する。
(補足説明って、尺稼ぎに使えるから正義だね!)
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最後に出血が無いかの確認を済まして所定の位置に運べば、私のやることは終わり!さてと…あと2,3人か…。
「いや、今回はあと1人だけだ。」
「へ?少なくない?」
「あぁ、あの自由なアホが飽きたとか言い始めたからな。」
その瞬間、毎度の如く貴重な(運で選んだ)『卵』を光速で運んできた自由の神が脳裏に浮かんだ。
ーー補足説明ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この「光速」は、誇張表現ではなく、「光速より少し速いぐらいのスピード」という意味です。(これ言うためだけに補足説明を入れたの?)(あと『卵』って何?)(というか、光速って超えられないような気がするんだけど。)
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まぁ、この緊張感が少しでも軽くなるならまだ良いか。一応、どこか失敗しても、早急に対応すればなんとかなるけど…。
「にしても、今回は珍しく居ないなぁ。」
なんて、独り言を言いながら手術台に戻ってくると、案の定、居る。大体、一回に一人は居る、「神としての規模が大きすぎるが故に、情報量がうまく処理できてない奴」脳にも機械を取り付けるから、脳が働いていると、結構やりにくいから、かなり面倒くさい。大きなため息を付きながら、こういう場合の対処法を思い出す。確か…、『脳内貫通型金タライ』を数回脳天に直撃させ、脳死を起こした状態で、三分以内にさっきの全ての工程を終わらせる……だったはず!
ーー補足説明ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この『専用の機械』の動作の中に、「生命維持」があり、これを利用すれば脳死を回復させることができるが、何せ『雷』に当たってから、十五分ぐらいしか経っていなく、身体が『専用の機械』を使いこなせない為、3分という短い時間になっています。(あと、『卵』は?)(どうして光速を超えられるの?)(てか、やっぱり補足説明多くない?)
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えーと、まず手術台を立てて、金タライを持って、ガゴン、ゴガン、ドゴンと。それから手術台を倒して、深呼吸して、急いで手術を終わらせて機械を着けて………!?
「機械がない!」
やばい、やばい。もうすぐ三分経つ。貴重な『卵』を割ってしまったらと思うと……。血の気が引いてきた…。と、とりあえず深呼吸……。ふぅ、大分落ち着いてきた。それにしてもどうするべきか……。アレしかない。しかし、アレを使っても『卵』を割ってしまったら……。まぁいい、なるようになれば良いか。早速準備に取り掛かる。手術台を横に置き、床を半径3mの円錐に掘削ツールを使い、掘削する。そこに水をはり、水の中に細胞を放り込み、時間の進行を池の中だけ数億倍にする。5秒ほど経ったら、『卵』を池に浮かばせ『生命譲渡』を使い、池にいる細胞たちから、それぞれ一定の生命力を『卵』へ譲渡し、死んだものを生き返らせる事ができる。
ーー補足説明ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「生命力」とは、(ここでは)生命を維持させるための力です。にしても、命の神って心配性ですね。(命:今ここで、お前の命を潰してやってもいいんだよ?)(鈍い音)
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……良かった、成功だ。とりあえず、機械を探そう。うん。そうしよう。私は手術室を出て、キョロキョロと周りを見ながら、奥へと進んでいった。それにしても、いつ見ても、我々の世界とは、比べ物にならないほど、規模が大きいな。そう思いながらも、慣れたように扉を何度も開け、いつ見ても変わらず、進んでいくごとに辺りが暗くなってきた。そして、ある扉の前に立つと、私は戸を叩いた。
「合言葉は……?」
迷うことなく、私は言う。
「無限のエネルギーを求めて」
ガチャと、扉が開き同志たちが、一斉に私の方を見た途端、一瞬武器を構えかけたがすぐに下ろした。
「何だ、失敗したのかと思ったぞ。」
「僕だってお前らが先に殲滅されていたら、どうしよかと思うよ。」
軽いジョークを交えながら作戦を建てていく。
「とりあえず、最難関な第三段階はクリアだな。次は、『機械』を取り外す必要があるが、脳は使えるか?」
そういえば、尾行されないように急いで歩いていたので、この『身体』の脳の中身を確認していなかった。
「ちょっと待っていて。」
目を瞑り、『身体』の記憶を辿る。…なるほど、とりあえず、手術される前の状態に身体を戻し、それまでにその身体が受けた、経験、食事量、一分間の呼吸量の変化の推移、その他諸々を全て把握、記憶したうえで、そのような状態を完璧に再現するため……
「ん?どうした?」
「ダメだ、まだこの身体に順応していないらしい。方法を思い出そうとする度に頭痛がする。」
痛い頭を擦りながら、必死に考えようとするも、頭痛に邪魔をされて、うまく考えが纏まらなかった。
「まぁいい、とりあえず体力を回復させるために一休みしよう。」
その提案に、全員が賛成し一服しようとした時、一人があることに気づいた。
「なぁ、あそこにある仮面ってお前がまだ来てない時にはなかったよな?」
見ると、確かに白と黒で構成された仮面が置かれていた。
「……いや、僕はあんな仮面持ってきてないよ?」
その言葉にその場にいる全員が固まった時、ある声が響いた。
「やっぱり自由の神の特権って良いね。たとえ仮面でも、様々な物になりきれるからね。」