第95話 悩ましのプールサイド!水着の3大プリンセス(後編)
ガターニアの転生者祭は地球で言うクリスマスのような特別な日。ガターニアの恋人たちはこの日に会って赤泡酒で盃を交わし愛を誓う。連合王国の王女フレンダとオーガ=ナーガ帝国の皇太女エリーザ、ジオエーツ連邦の女王クインシーにその日のデートを申し込まれ、おれは答えに窮していたが彼女たちはならば水泳で決着をつけようと意気込むのだった。
コンペート「さぁ、御三方とも水着へのお着替えも終わったということで、まずはこの方に御入場頂きましょう、この番組のメインMC、かつては皇宮騎士団にも在籍していた武闘派、オーガ=ナーガ帝国皇太女にして摂政宮、エリーザ・ ド・ブルボニア殿下!!」
トッツィー「おおーっ!」
トッツィーのおっさんや撮影スタッフの歓声と共に控室からエリーザが登場する。推定身長170cm、本場プレイメイトみたいなゴージャスボディだ。
エリーザ「は、恥ずかしいぞ、あんまり見るな!」
コンペート「いや〜とんでもないダイナマイトバディですね! 水着は殿下のイメージカラーのワインレッドと黒のツートンのいわゆる三角ビキニ! 成熟した肉感的なプロポーションはさすがと言った感じです。大変眼福でございます、視聴者に代わってお礼申し上げます、どうもありがとうございます!」
今日のコンペートは悪ノリがひどい。自分とこの国の次期皇帝によくこんなこと言えるなぁ。
コンペート「さて次はこの方、中央大陸連合王国ウィタリアン王朝の第8代国王ミカズ・ウィタリアン陛下の御息女にして我らがトップアイドル“イセカイ☆ベリーキュート”の期間限定メンバー、フレンダ・ウィタリアン王女!」
トッツィー「ヒュー!」
再びトッツィーのおっさんや撮影スタッフの歓声があがり、控室からフレンダが登場する。推定身長162cm、手足が長くすらりとしたプロポーションだがちゃんと出るところは出ているんだな、という印象だ。
コンペート「こちらも素晴らしいプロポーション! アイドルやってただけあって完璧なルッキングです。意外と言っては何ですが結構バストも大きい! 王女にしとくのは勿体無い! 水着は白いラインの入った紺のワンピースで露出度は控えめですがウエストに切り込みが入っており子供っぽさは感じさせません。ミキオ子爵、フレンダ王女のスタイルの良さについて何かコメントを!」
ミキオ「おれに聞くな」
フレンダ「趣旨が変わってますの! わたくしはただ泳ぎに来ただけですの!」
トッツィー「定番ですが、あんまり大胆に水着姿を披露されるより恥ずかしがっている方が萌えますな」
コンペート「誠におっしゃる通り! そしてトリを飾るのはこの方、ジオエーツ連邦第38代ウェスギウス朝君主、“ジオエーツの女龍”の異名を取る稀代の軍略家、クインシー・ウェスギウス女王陛下です!」
トッツィー「おおっ!!?」
トッツィーのおっさんや撮影スタッフから歓声というより驚嘆の声があがる。推定身長154cmほど、15歳の子供にこんなことを言うのはおれの本意ではないが圧巻のプロポーションだ。日本にいたらグラビアだけで稼げる人材だろう。全盛期の紗綾を思い出す。
クインシー「あんまり見ないでください…」
コンペート「出ました、ジオエーツの新女王! 弱冠15歳ながら圧倒的なスタイル! トランジスタグラマーと言うんでしょうか、清楚なフェイスに不似合いな非常に悪魔的なプロポーション! 男子がいちばん好きなボディでしょう! 水着はセパレートタイプでトップはビキニ型、ボトムにはフリルが付いてミニスカートのよう。色はもちろん女王のイメージカラーのショッキングピンク! 今日1日で一気にファンが増えそうですね!」
トッツィー「いやぁ、本当にこの仕事受けて良かった。私も最近の報道被害でつらい日々を送っていたこともあったけど、そんなストレスが一気に吹き飛ぶね」
ミキオ「あんたの不倫騒ぎは自業自得だろ」
トッツィーのおっさんは先月に不倫報道があって一時期雲隠れしていたのだ。
コンペート「おっと今来た情報ですが、このライブ魔法配信の観覧者数が凄いことになっているそうです! なんとガターニアの総人口の50%ほどが視聴しているとのこと! それはそうでしょう、この3人のプリンセス、クイーンが立ち並ぶと実に壮観!」
トッツィー「いくらでも見ていられるね。この瞬間を壁画にして飾っておきたい」
エリーザ「いつまでも興奮しておるでない! 我らとっくに準備はできているぞ」
フレンダ「そうですの、わたくしたち見世物になりに来たんじゃありませんの!」
クインシー「男性の視線、怖い…」
コンペート「失礼しました! まあ正直言って我々は競技そのものはどっちでもいいというか(笑)、この奇跡のビジュアルを全国の視聴者の皆さんにお届けできただけで仕事の9割は終わったと思ってますので」
エリーザ「素直だな!」
コンペート「とは言え参りましょう。皆様、スタート台に上がってください!」
3人がスタート台に上がり、スイムキャップをかぶる。ビキニの2人は明らかに競泳に適してないような気もするが、まあそこは女としてのプライドなのだろう。
合図係「Take your marks!」
合図係の掛け声を受け、プリンセス3人は腰をかがめてスターティングポーズを取る。みな水泳が得意と言うだけあってポーズもしっかり決まって美しい。
合図係「 Go!!!」
良いことだとは思うがこのガターニアではまだピストルが発明されていないので3人は合図係の掛け声で一斉に水面に飛び込んでいった。
コンペート「スタート! 飛び込みました、非常に美しいフォルム! 今回、泳法に規定はありませんがスピード競技でもあるのでやはり全員クロール泳法です。華麗にコースを泳ぎ行くさまはまるで人魚のよう! 御三方ともほとんど対等に競り合っている!」
トッツィー「真剣勝負だねえ。彼女らそんなにまんじゅうが欲しいんだろうか」
コンペート「100ナーゲ(=50m)を泳ぎ切り、いまキックターン! ここまでほぼ互角、体格の差でクインシー陛下が遅れたか? わずかにエリーザ殿下が先行! 長い手足でしなやかに水面をかき切る様が非常に美しい!」
トッツィー「とは言えクインシー女王は稀代の軍略家、このままじゃ終わらないと思うけどねえ」
コンペート「ああーっと、ここでハプニング!!! クインシー陛下、止まってしまった!! なんと水着の肩紐がはずれてしまった模様!! これは危うい! 何より私の理性が危うい! 撮影スタッフ、寄って寄って!!!」
トッツィー「これは神様がくれたハプニングだね!」
結んだ肩紐の水着なんか着て競泳したらそりゃそうなるだろう。何やってんだあいつ…いや、まさかこれもヤツの戦法のうちか?!
コンペート「水着を手で抑え、プールサイドから投げ込まれたバスタオルに身を隠すクインシー陛下。残念ながらここでクインシー陛下はリタイヤとなりますが、採点にはフォルムの美しさ、パフォーマンスも加味されますのでまだまだわかりませんよ! 問題はこれを審査員のミキオ子爵がパフォーマンスととるかです。いやぁ興奮しまくりましたねトッツィーさん!」
トッツィー「まあポロリが無かったのが残念だけどね」
ミキオ「あってたまるか、相手は15歳だぞ」
コンペート「ということで注目はエリーザ殿下VSフレンダ殿下ということになります! コースは既に残り半分、エリーザ殿下やや先行を保っていますが…ああっとここで再びハプニング! フレンダ殿下、足がつったか? もがき苦しんでいる! 苦しそう!!」
トッツィー「水を飲んでるね」
ミキオ「やばいな」
おれは赤のサモンカードを取り出し、詠唱略で召喚魔法を行った。
ミキオ「詠唱略! ここに出でよ、汝、フレンダ・ウィタリアン!!」
カードに描かれた魔法陣から紫色の炎が噴き出しプールの中からフレンダを召喚した。空中に出現したのを抱きかかえたため期せずして“お姫様抱っこ”の形になったが、そんなことを気にしている場合ではない。
フレンダ「み、ミキオ…」
ミキオ「大丈夫か」
コンペート「なんと! これは甘い! 甘すぎるよミキミキ! ミキオ子爵の召喚魔法の早わざにより溺れかかっていたフレンダ王女は救われ名実共にお姫様抱っこ状態! これはやられました、ごちそうさまーっ!」
トッツィー「ごちそうサマースキャンダルだね」
ミキオ「そっそんなつもりはない! フレンダ、お前も早く降りろ!!」
クインシー「フレンダ王女、やるわね…」
エリーザ「召喚士! 何をしている! ずるいぞ!」
コンペート「エリーザ殿下もゴールを目前にして足をついて止まっている! 今大会のルール上、一度でも足をついたら失格となります! なんということでしょう、この試合すでに成立していない!」
エリーザ「ふざけるな! こんな試合があるか! 再戦だ再戦!」
その後、これ以上王族の醜態をさらすわけにはいかないという三国首脳陣の判断により魔法配信は中止、エリーザはじめ番組配信スタッフは対応に追われることとなった。こうしておれの転生者祭当日のスケジュール交渉権は宙に浮いた形となったが、まさか当日別な形でリベンジマッチが行われることになるとは夢にも思わなかったのだ。