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第9話 伝説の映画女優、異世界で無双する

 ヴァンディーの街にある屋台の前でうなだれていた“お嬢様”だったが、キッと顔をあげまなじりを凝らしておれに言ってきた。


女「貴方ですわね、今の長髪の中年男を召喚したのは!よくもこのわたくしを侮辱してくれたものですわ、覚えてなさい!」


 ぷりぷりと怒りながら“お嬢様”は雑踏に消えていった。えらく気の強い女だが、知らねえよ…そう思いつつポポン焼きに手を伸ばすと、空中の妖精がガクガク震えていた。


クロロン「ミキオ…いまの子を画像検索したんだけど、あの子は中央大陸連合王国君主ミカズ・ウィタリアン8世の第一息女、フレンダ・ウィタリアン王女だよ…!」


 おれは思わずポポン焼きの袋を落としてしまった。




クロロン「やってくれたね、ミキオ!アレは買わなくていい喧嘩だったよ!」


 宿に戻ったおれはさっそく妖精に小言を言われていた。


ミキオ「あんなところにお忍びで王女がいるとは思わないだろう」


クロロン「下手したら捕まえられて処刑されちゃうよ!」


ミキオ「言っちゃ何だが神の子であるおれを処刑する方法があるとは思えないし、万々が一殺されたとしても陞神が早まるだけだ」


クロロン「まあそうだけど…」


 妖精がそんな心配をしていると宿屋の女将が部屋のドアをノックしてきた。


女将「ちょっと! 召喚士さん!あんた何かやったのかい!?下に近衛兵が来てるよ!」


 おいでなすったか。階段を降りてみるとロビーに真紅の軍服を着た王宮近衛兵が2人立っていた。


近衛兵「召喚士ミキオ・ツジムラ殿、フレンダ王女殿下が今夜の王宮の舞踏会にそなたを御招待された。正装して必ず出席するように」


 あまりに意外な言葉だった。舞踏会。なんでだろう、ダンスを知らないおれに踊らせて恥をかかせようとでもいうのか。それも今夜とは。


ミキオ「面白い、行かせてもらおう」


 この場合適切な回答かは知らないがおれはとりあえず無愛想にそう答えておいた。




クロロン「ミキオ、そろそろ行こう」


ミキオ「ああ」


 日本が誇る世界の服飾デザイナー、三宅一生を召喚して持ってきて貰ったパーティー用のダークスーツを着たおれは王宮に向かった。召喚した人物は5分間で消えても持参したアイテムは残るらしい。こっちの正装とはやや違うかも知れないが、仕立ての良さは伝わるだろう。なめられてはいかんので人力車で行ったが、なかなか高くついた。身体強化の神与特性で走っていけば数分の距離なのだが。




 王宮はこれぞ王宮といった建物で、やはりどこか中世西欧の建築物に似ている。おれは受付で招待券を見せて会場に向かった。自分で言うのも何だがこのスーツがなかなか様になっているのだろう、参加者の女たちがあら素敵、どなたかしらなどと噂しているのが聞こえてくる。転生してから神与特性のおかげで背筋も伸び、筋肉もついて肌艶も良くなっているから見た目が良くなっているのだ。


 会場につくとすぐにあの王女がやってきた。

挿絵(By みてみん)

フレンダ「のこのことよく来ましたわね、召喚士」


 この女、素で悪役令嬢みたいな台詞を言う。相当性格悪いな。


ミキオ「暇だったのでな」


 おれは軽くそう返してやった。


とりまきA「殿下、こちらの素敵な男性は?」


とりまきB「素晴らしいお召し物でございますわ、どこでお仕立てなさったのかしら…」


 側にいた貴族の令嬢とおぼしき女ふたりが口々に言ってきた。さすがイッセイミヤケ、彼を召喚して良かった。


フレンダ「ま、まあお衣装はそれなりですことね。でもわたくしと一緒に踊れるほどではないわ」


とりまきA「それはまあ、そうですわ」


とりまきB「姫はこの国でいちばんお美しいのですから」


 とりまきの令嬢ふたりが王女を褒めそやす。なんか無理して言ってるような気もするが。とりあえずイラッときたのでこいつらの鼻を明かしてやることにした。


ミキオ「エル・ビドォ・シン・レグレム、我が意に応えここに出でよ、汝、夏目雅子!」


 魔法陣が紫色の炎をあげて昭和に夭逝した伝説の映画女優・夏目雅子を召喚させた。20台前半の頃だろうか。世代ではないがおれにもわかる。この美しさは尋常じゃない。どうせおじさんがノスタルジーで言ってるだけで実際大したことないんでしょ、などと思ってるZ世代がいたら是非動画で検索して欲しい。彼女は普通のワンピースを着てるのに高級なドレスを着た会場の女たちすべてを圧倒していた。


フレンダ「まぁ、まぁ、まぁ…!」


とりまきA「え、女神? 天使?」


 言葉が出ない王女と、いいリアクションをしてくれる取り巻きの女。会場中の視線が集まるなかおれは夏目雅子に挨拶した。


ミキオ「よくぞ来てくれました。行きましょう、夏目さん」


 ニコッと微笑みおれと腕を組んでくれる夏目さん。なんと綺麗な女性だろう。まるで地上の星だ。異世界でも一番に輝いている。王女の歯ぎしりが背後から聞こえてきたが無視して歩いた。

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