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第78話 神々の宴!笑っていいとも最終回(中編)

 唐突なようだが、おれは笑っていいともの最終回こそ日本のお笑い界におけるひとつのピークポイントと考えており、その放映日である毎年3月31日には必ず録画した“いいとも”最終回を観るようにしている。今年もひとりで日本の実家に帰って観るつもりだったがなぜか成り行きでザザやアルフォードたちまで連れていって上映会を開く羽目になってしまったのだった。


 おれたちは2階にあるおれの部屋に移動した。おれは2ヶ月前に異世界転生したわけだが、部屋の中は何事もなかったかのように保たれており2ヶ月前のままだ。6畳の狭い部屋は大柄な連中で満杯となった。


ザザ「じゃまずは乾杯しようぜ!」


ミキオ「そっちは勝手にやってくれ」


 おれは大事に保存していたブルーレイディスクを取り出していた。ディスクは経年劣化するものなので2枚作ってあり、5年ごとに焼き直すことにしている。


ザザ「へーへー勝手にやらせて頂きます。ほんじゃ皆さん、かんぱーい」


永瀬・アルフォード・ガーラ「かんぱーい」


ザザ「くうぅ〜! やっぱこっちのビールってやつはうめえな!」


永瀬「第三のビールだけどね」


 飲む気マンマンの彼らは実家に来る前に一旦近所のスーパーに寄り買い物してきたのだ。ゆえに彼らが飲んでいるのは発泡酒であり、たこワサや生ハム、チーちく、カルビーのピザポテトなど酒飲みの好きそうなものばかり酒肴として買い揃えてきた。


アルフォード「ピザポテト、美味い! こってりしていて、これはもうおやつというより食事だ!」


ザザ「皇子、お前も飲め飲め! ホラ!」


アルフォード「相変わらず君たちは貴種に対する敬意というものがないな…貰おう」


ザザ「今更だろ。イチカは飲める方なのか?」


永瀬「一応ね」


 気がつけば永瀬はザザに敬語を使うのをやめている。まあ細かく言えばザザの方が先輩だが入社日は15日ぐらいしか違わないし、年齢も永瀬の方が1歳上だし、そもそも東大を出て一流商社でバリバリのビジネスウーマンやってた女なのでこんなギャルにいつまでも敬語使ってられんてなことなのだろう。


ガーラ「美味い美味い。最高だな」


 と言いつつも人造人間のガーラは体内の永久機関で動いているため食事の必要がない。よって空のコップで飲んだフリをしているだけだ。


ミキオ「時間がない、始めよう。まずは本編の前にこれを観て欲しい」


 おれはテレビのリモコンを操作した。映っているのは通常放送の『笑っていいとも!』だ。


ミキオ「2013年10月22日(火)放送回、番組終盤間際に木曜レギュラーの笑福亭鶴瓶が突如乱入してくる」


永瀬「じ、自分で編集してあるんだね…引くね…」


ミキオ「いいから観てくれ。ここからだ」


 そう言いながらおれはテレビのリモコンを操作した。


-VTR開始-


タモリ「エンディングゲスト、笑福亭鶴瓶さんでーす」


客席「キャー!!」


鶴瓶「オレ聞いたんやけど、いいとも終わるてホンマ?」


客席「エーッ?!」


タモリ「はい、ホント。来年の3月でいいとも終わる」


客席「ウソー?!」


-VTR終了-


ザザ「…なんだこりゃ」


永瀬「つまり番組の終了はこういうハプニング的な感じで告知されたってこと?」


ミキオ「と言うことになってるが、正直いま見るとヤラセ臭いな。急に鶴瓶師匠が来るのも変だし…まあとにかくこういう形で32年間続いた番組の終了があっさりと告げられ、日本中がパニックとなった」


永瀬「日本中パニックは盛り過ぎ。わたし普通に生活してたもん」


ミキオ「そして番組は半年後に本当に終了となる。最終回の昼の部はさっきも言った通りビートたけし、明石家さんま(電話のみ)が登場し、ビッグ3が集結することになった。以後は日本のテレビ番組でこのビッグ3が集結することはない。これだけでもとんでもない奇跡だ」


アルフォード「よくわからんな。その男たちはガターニアで言うとどの程度のレベルなんだ」


永瀬「大スターだから…トッツィー・オブラーゲさん?」


ミキオ「いやあんなのと一緒にするな。タモリたけしさんまはそれまで芸能の添え物とされてきたお笑い芸人を一躍メインのスーパースターにのし上げた偉大なる存在だぞ」


永瀬「そ、そっか…ごめんなさい」


ガーラ「イチカ! 謝ることはないぞ、君の感覚で言いたいことを言え!」


ミキオ「ではその昼の部をちょっと観てみよう。冒頭では月曜レギュラー陣が揃って挨拶している」


アルフォード「なるほど、この黒眼鏡の男がメインMCなんだな?」


ミキオ「タモリさんこと森田一義氏。某番組のアンケート調査で何度も“日本一有名な人物”として1位になっている。九州でボウリング場の支配人や喫茶店のマスターなどをしていたが30歳で芸人デビューし、わずか8年後にはNHK紅白歌合戦という日本最大の音楽イベントの司会者を務めた破格の人物だ」


アルフォード「そんな凄いお人には見えんが…」


ミキオ「そこがいいんだよ。飄々として飾らず、大きく構えない自然体。でも安定感がありそこにいるだけで番組が成立する。こんな人はそういない」


アルフォード「な、なるほど」


ザザ「今日のミキオはちょっと気持ちわりいな!」


ガーラ「この女はずっと泣いてるな」


ミキオ「指原莉乃だな。当時の日本のアイドルだ」


アルフォード「??? アイドルというのは見た目の可愛い女の子のことじゃなかったか?」


ミキオ「そうなんだが、まあそこは気にするな。CMの後はテレフォンショッキングのコーナーだが、この回はビートたけしさんがゲストだ」


ザザ「もしかしてこの爺さんもすげー人なのか?」


ミキオ「こら! 爺さんとは何だ! 日本を代表するお笑い芸人であり映画監督だぞ。日本一の番組の最終回を飾るにこれ以上の人物はいない」


アルフォード「ほー、そんな凄い御仁か…」


ザザ「つまんねー。爺さん二人が延々と仲良く喋ってるだけじゃねーか」


アルフォード「いつもながらミキオの召喚術のせいかニホン語は理解できるのだが会話の内容は3分の1も意味わからん…会話の中に頻繁に出てくるサムラゴーチってのは誰だ」


ミキオ「この当時よくネタにされていた作曲家だな。ゴーストライター問題があった」


永瀬「懐かしい」


ミキオ「ここで“次回のゲスト”と電話がつながり、相手が明石家さんまであることが告げられる。この人も70歳近くなっても現役でゴールデンタイムの番組のメイン司会を務めるお笑い界の至宝だな。この番組の頃は57歳だ」


ザザ「ニホンの番組てのはこんな爺さんばっかりなのか?」


ミキオ「いやこの人たちは若い頃から毎日テレビで見ない日がないほど活躍してきてこの場にいるんだ。お前、口が悪いぞ」


 コンコン。その時おれの部屋のドアがノックされた。母親だ。


由貴「三樹夫、焼きうどん作れるけど、いる?」


ミキオ「あ、お前たち、焼きうどん食べる?」


アルフォード「ヤキウドン、なんだそれは! 怪獣の名前のような響きだ、食べたい!」


ザザ「あたしも」


永瀬「じゃあわたしも」


ガーラ「おれも食うフリをしたい!」


ミキオ「じゃあ悪いけど4人前貰おうかな」


由貴「はーい」


 


 数分後、4人前の焼きうどんを持って母親が現れた。うちの母親は得意なのか、何かというと焼きうどんを作る。転生前から実家に帰っていなかったおれにとっては半年以上ぶりの“おふくろの味”だ。


ミキオ「ありがとう」


アルフォード「おお! ヤキウドンとは麺料理なのか!」


ミキオ「紹介するよ。おれの異世界の友達。帝国の皇子アルフォード」


由貴「お、皇子様!?」


アルフォード「はじめまして。ヤキウドン美味しゅうございますぞ」


ミキオ「おれの秘書、永瀬さん」


由貴「あんたの秘書!?」


永瀬「辻村クンにはいつもお世話になってます」


ミキオ「でウチの事務員のザザ」


ザザ「うぃーす」


由貴「事務員さん、ギャル!?」


ミキオ「書生でロボットのガーラ」


由貴「ロボット!?!?」


ガーラ「そうだ。おれは永久機関で動いているからヤキウドンは食えない、だから食ったフリだけするのだ」


 頭上にいくつもの?マークを浮かべながら母親は下へ降りていった。



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