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第75話 異世界人、地上の楽園に行ってみた(中編)

 シンハッタ大公国君主ムーンオーカー大公から温泉を中心とした複合レジャー施設の企画を頼まれたおれは参考のためにと日本の竜宮城スパホテル三日月へ案内した。バカ皇子のアルフォードまで乱入し期せずして慰安旅行のようになってしまうのだった。


ミキオ「着いたぞ。ここが木更津市の竜宮城スパホテル三日月だ」


ヒッシー「初めて来たニャ〜」


永瀬「わたしも」


 木更津の竜宮城スパホテル三日月はホテル三日月グループが営業するグループ最大のホテルである。日帰り入浴も可能だ。以前は“竜宮亭”だけだったのだが“富士見亭”という別棟が近年完成した。竜宮亭が10階、富士見亭が11階建てである。


ザザ「すげぇ…海の上に建物が浮かんでやがる…以前行ったイオンとかいう奴よりもデケーじゃねーか」


アルフォード「ガターニア最大級の威容を誇る我が帝国アオーラ宮殿、どう見てもその数倍はある…」


ムーンオーカー「し、信じられん…異世界の建築技術はどうなっているんだ…」


ミキオ「休日は激混みなんだが、日本は平日の午前中だから空いてるな。さ、入ろう」


ザザ「ミキオ! もしかしてあの馬鹿デカいのが温泉か!?」


フレンダ「確かに大きいけど、これじゃ外から丸見えでちょっと恥ずかしいですの…」


ミキオ「落ち着け、それはプールだ。温泉はこの中。あっちの“富士見亭”の露天風呂は宿泊客じゃないと利用できないので今回は“スパ棟”のみだ」


 このエリアには建物が3棟あり、正面に向かっていちばん右が大浴場のあるスパ棟、真ん中が10階建ての宿泊客棟“竜宮亭”、左が最新11階建ての宿泊棟“富士見亭”だ。それぞれの棟は回廊で繋がっており、日帰り入浴客はスパ棟に直接行くことになっている。


 受付は秘書の永瀬一香がすませてくれたのでおれたちは館内着とタオルセットを受け取った。全員日帰り入浴コースである。


アルフォード「おおお…ロビーも広い…」


フレンダ「あまりの壮大さに気がおかしくなりそうですわ…」


永瀬「まあまあ年季入ってるかな」


ヒッシー「でも結構広いニャ」


 異世界チームは全員驚いて開いた口がふさがらないといった感じだが、地球チームは普通のリアクションでなかなかの温度差がある。


ミキオ「じゃ男風呂は1階、女風呂は3階だ。女子たちは後で大公に報告できるよう感想をまとめといてくれ。3階の湯上がり処で会おう」


永瀬「はい」


ザザ「後でな〜」




 おれとヒッシー、アルフォード、ムーンオーカー大公の4人はこれまたとんでもなく広い脱衣室で服を脱ぎ、浴室に入った。アルフォードの聖剣エヴリカリバーはロッカーに入らなかったのでおれのマジックボックスに入れておいた。


アルフォード「うおおおお! なんという大きさ、広さ! 外のプールとそう変わらん!!」


 実際、内湯は非常に巨大でまるでプールと見まごうばかりだ。ヤシの木やフラミンゴ、孔雀などの銅像が置かれて気分は南国リゾートだ。楽園と言えばフラミンゴとヤシの木、この感覚が我々日本人にはDNAに刻み込まれているのだろう。それを古いとか昭和臭いとか言って簡単に切り捨ててはいけない。


ミキオ「驚くのもいいがまず体をサッと洗え。マナーだぞ。あっちに洗い場があるから」


アルフォード「お、おう」


ムーンオーカー「いやしかし何もかもが斬新だ、これが温泉だというのか!」


ヒッシー「まあ、でも実際はじめてこんなの見たら驚くよニャあ」


ミキオ「おれの知り合いのムーブメント・フロム・アキラという男は最初に来た時はあまりの極楽ぶりに3時間あまりも風呂に入っていたらしい」


ヒッシー「3時間?! のぼせニャいの?」


ミキオ「水風呂と外気浴を間に挟んだら全然いけたらしい。腹が減ったから出たがイートインスペースがあればもう5時間居たと言っていた」


アルフォード「ええい、いつまで全裸で説明を聞かせる気だ! 我慢できん、私が一番乗りだ!!」


 アルフォードがそう言って股間に当てていたタオルを投げ捨てて浴槽に飛び込んだ。まったく皇族とは思えない腕白ぶりだ。


アルフォード「はっは、温かい! 紛れもなく温泉だ!」


ミキオ「この皇子はマナーがなってないな…」


 おれも続いて入浴。熱くもぬるくもない、きわめてちょうどいい湯だ。泉質は弱アルカリ性の塩化物強塩温泉でそんなに強い泉質ではない。


アルフォード「いやなんだこれは! 立っているだけで流れていく!」


ミキオ「湯が流れているんだ。まあ流水プールみたいなもんだな」


アルフォード「おおおお、突っ張っていないと流されてあの滝に吸い込まれる!」


ムーンオーカー「本当だ、屋内の風呂なのに滝がある!」


ヒッシー「いや〜極楽だニャ〜」


ミキオ「まだまだ、この木更津ホテル三日月の恐ろしさはこんなものではない。露天風呂に行ってみよう」


アルフォード「そ、そうか! 露天風呂もあるのか」


 おれたちはドアを開けて露天風呂に出た。


アルフォード「おおおおお、なんという絶景!! そして潮風が全身に当たる!」


 海上のホテルなので当然だがオーシャンビューなのだ。


ムーンオーカー「内風呂とはうって変わって岩風呂ですな、定番だがやはり落ち着く。そしてこの巨大さ! ドラゴンの巣くらいはありそうだ!」


ミキオ「あっちの浴槽は段々になっているぞ」


アルフォード「本当だ、露天も内風呂と同じくらい広い、数限りないな!」


ムーンオーカー「おおっ! 空に飛竜(ワイバーン)が!!」


 上を見ると旅客機が真一文字に飛行機雲を描いて飛んで行っていた。


ミキオ「ああ、ここはジャンボジェットの飛行ルートの真下にあるんだ」


ムーンオーカー「天空の飛竜(ワイバーン)を仰ぎ見つつ、この蒼き海を観ながらの入浴は実に爽快だ! まるでこの大海の主になったかのような気分ではないか!」


ミキオ「あとは大きなサウナが2つある。高温と低温だな。水風呂の水温が25度とかなりぬるいのが難点ではあるが」


アルフォード「サウナとやら、貴様から聞いたことがあるな。トトノウという謎のキーワードを何度も言っていた」


ミキオ「そのサウナだ。個人的に水風呂は13〜15度がベストだと思う。25度では絶対に整わないので改善を促したいところだな。で、一旦内風呂に戻って頂きたい。ホテル三日月の看板とも言える豪勢な風呂があるのだ」


ムーンオーカー「何と!?」


アルフォード「この上まだあるのか!?」



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