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第67話 異世界♡ハッピー♡ウエディング(中編)

 異世界39日め。今日はおれの東大時代の学友で召喚士事務所の共同経営者ヒッシーこと菱川悠平の結婚披露宴当日だ。披露宴と言っても仲間うちだけのカジュアルなもので、平服にて御参加をお願いしますと招待状に書いておいた。会場である“寿司つじむら”は王侯貴族が集まるということでサミット並みの厳戒態勢で魔導騎士ガーラと王宮近衛兵が厳重に警備している。今回、事務所のザザと永瀬一香は受付に入って貰った。


国王「おお、ヒッシー殿! 今日はおめでとう」


 開式前に真っ先に店内に入ってきたのは媒酌人を務める国王夫妻だ。あれほど平服で来てくれと書いたのに国王はマントと王冠まで着けたド正装で来ている。この人の流儀なのだろう。王妃は初めて見たがごく地味な方だ。


ヒッシー「本日はありがとうございますだニャ」


アマンビー「ありがとうございます」


国王「ナンバンビー伯爵の公女殿もおめでとう。早うお父上がわかってくれるといいのう」


アマンビー「はい!」


ミキオ「国王、どうも」


国王「お、ツジムラ子爵。次はお主の番だな。わしとフレンダをがっかりさせんでくれよ? ン? ン?」


ミキオ「いや、まあ…」


 次に店内に入って来たのはオーガ=ナーガ帝国のバカ姉弟、皇太女エリーザと皇子アルフォードだ。今回出席する王侯貴族たちは平服で来いと言ってるのに皆ちっとも言うことを聞かない。こいつら着飾っておかないと負けだとでも思っているのか。


アルフォード「ヒッシー、おめでとう! まさか君に先を越されるとはな!」


ヒッシー「ありがとうだニャ〜」


エリーザ「貴君のご成婚を心より祝福する。今後は私の婚活も応援して欲しい」


ヒッシー「わ、わかったニャ」


アマンビー「ありがとうございます」


エリーザ「ほう、これは可愛らしい花嫁☆」


 会場にどんどん客が入ってくる。次に入って貰ったのはおれが1時間前に所沢市から呼んでおいたヒッシーのご両親、菱川平蔵氏と美加子氏だ。ヒッシー父はヒッシーと似たような体型だがオールバックと口髭、高そうなダブルのスーツで非常に貫禄がある。ヒッシー母は普通の身長で恰幅のいいおばさまだ。なおヒッシー兄はどうしても外せない仕事があるということで欠席した。


ヒッシー「あ、来てくれてありがとうだニャ」


ヒッシー母「辻村君に話を聞いて連れてこられたけど、何がなんだかだわ。悠ちゃん東大辞めて異世界で会社を経営してて結婚するんですって? 一体どうなってるの。なんでもっと早く連絡しないの。普通はまず先方のご両親とお会いしてちゃんとしたお店で結納をやってから…」


ヒッシー父「まあまあ母さん、今日はいいじゃないか」


アマンビー「お義父様、お義母様、本日はお越し頂いてありがとうございます」


ヒッシー母「ま、あなたが悠ちゃんのお嫁さん? 可愛らしい人ね〜」


アマンビー「アマンビー・ナンバンビーと申します」


ヒッシー「伯爵令嬢だニャ」


ヒッシー母「は、伯爵令嬢!?」


ヒッシー父「アマンビーさん、不出来な息子だがよろしく頼みます」


 ヒッシー父はヒッシー夫人に深々と頭を下げた。口数の少ない重厚な人物だがちゃんと息子の結婚は喜んでくれているようだ。おれは安堵した。


 次に店内に入ってきたのはアマンビーさんのお母さん、ナンバンビー伯爵夫人だ。髪を高く盛った、やや上品な普通のおばさまといった感じだ。


伯爵夫人「アマンビー!」


アマンビー「お母様! よく来てくれて…お父様は?」


伯爵夫人「ダメよ、ああなると頑固だから。今日もお友達のところにでも行ったのか、朝から顔を見せないわ」


アマンビー「そう…」


 花嫁がこの場に似合わぬ曇った表情を見せるなか次に店内に入って来たのはこの連合王国の王女フレンダとそのお付きの隠密、影騎士である。フレンダはアイドルグループ“イセカイ☆ベリーキュート”の限定メンバーでもあり、そのプロデューサーのヒッシーとは仕事仲間ということになる。影騎士は常にフルフェイスマスクの男だが、今日はやや挙動不審な気もする。


フレンダ「ヒッシーP、おめでとうですわ! わたくし、セカンドシングルも参加してもよろしくてよ!」


ヒッシー「あ、その件については協議中なんで決定次第また連絡するニャ」


 王女であるフレンダをイセカイ☆ベリーキュートの限定メンバーにした件については宮廷や右派議員から苦情が来ており、セカンドシングルには参加させない方向で動いているのだ。


フレンダ「アマンビー、久しぶりね。あなたがヒッシーPと結婚するって聞いて驚きましたわ。今日のあなた綺麗ですわよ」


 フレンダとヒッシー夫人は王侯貴族の社交界で旧知の仲らしい。ふたりは20歳で同い年とのこと。


アマンビー「ありがとうフレンダ、来てくれて嬉しい。そこの騎士さんもご苦労様」


 ヒッシー夫人が影騎士に声を掛けるが、影騎士は会釈しただけで声を発しない。どうも今日のヤツは変だ。


 その後、多忙なスケジュールの間を縫って来てくれたイセカイ☆ベリーキュートの4人とそのマネージャー、大スターのトッツィー・オブラーゲ氏、アマゾネスのガギに巫女のサラ、新婦側の友人らも次々に入場してそう広くない“寿司つじむら”の店内は満席となった。


コンペート「ええ本日の司会を務めさせて頂きますオグニー辺境伯家公子コンペート・チャーザーでございます。本日の式典はニホン式で、ということになっておりますのでご了承下さい。ではこれより披露宴に先立ちましてヒシカワ家、ナンバンビー家の挙式を執り行います。まずは新郎新婦の御入場でございます! どうぞ皆様、盛大な拍手でお迎え下さい!」


 こういうことになると必ず顔を出してくるコンペート・チャーザーの立て板に水のような司会ぶりが光るなか、狭い寿司屋で満席の店内にバックヤードから白いタキシードのヒッシーと純白のウエディングドレスのアマンビーさんが入場してきた。入場曲はヒッシーたっての希望で欅坂46の『世界には愛しかない』である。歌の前半は歌詞の朗読という斬新な曲だが爽やかでスピード感のある名曲だ。新婦のアマンビーさんは素朴な女性だと思っていたがどうして、ちゃんと正装してメイクをしたらなかなかの美人だ。拍手のなか新郎新婦が着席した。


コンペート「本日は新郎のたってのご希望により神前式にて挙式を行いたいと思います。神前と言えば神様ですが、本日は神の子のツジムラ子爵様がいらっしゃいますので、ツジムラ様に神様として登場して頂きます」


 と、言うことで今日は新郎新婦がおれに結婚を誓うことになっている。おれは用意されたギリシャ神話風の衣装に着替え登場した。誰だこんな馬鹿なことを考えたのは…。


ミキオ「新郎ユーヘイ、汝はここにいるアマンビーを病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も妻として愛し敬い慈しむ事を誓うか?」


ヒッシー「誓うニャ」


ミキオ「新婦アマンビー、汝はここにいるユーヘイを病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も夫として愛し敬い慈しむ事を誓うか?」


アマンビー「誓います」


ミキオ「ふたりの結婚を祝福する。おめでとう」


コンペート「ありがとうございます。神の子ツジムラ様の承認を得て、ここにめでたくお二人の結婚が成立いたしました。ご結婚おめでとうございます! 皆様、改めて盛大な拍手をお願いいたします!」


 万雷の拍手が狭い寿司屋の店内に響き渡る。


コンペート「ありがとうございます。ただいまをもちまして、新郎ユーヘイ様、新婦アマンビー様の神前結婚式を結びといたします。続きまして、このまま披露宴に移りたいと思います」



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