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第63話 地上最強の魔導師(第三部)

 南方大陸に出現し魔導十指狩りを始めた魔導騎士ガーラ。その恐るべきパワーで魔導十指のうち“マスター・エクソシスト”シャルマンと“嵐のフュードリゴ”が既に倒された。ガーラを捜索するため十指の皆はガターニア全土に散り、おれは十指を引退した“不死竜”ジョー・コクー”を尋ねるのだった。


 『もと魔導十指“不死竜”ジョー・コクーの居場所』というコマンドによって逆召喚し訪れたそこは、風がひゅうひゅうと入り込む朽ちた古城の中だった。


ミキオ「妖精、ここはどこだ」


 おれはおれにしか見えない空中の異世界ガイド妖精に尋ねた。


クロロン「西方大陸テンデイズ国アティマ地方だね」


ミキオ「やはり老いたりとは言えもと魔導十指、目の前には逆召喚させてくれないか」


クロロン「でもこの前方230mに人間型の熱源があるよ。わずかに呼吸音もある。生命反応だね」


ミキオ「つまり先代がこの奥でお待ちというわけか」


 おれが歩いて行くと陽の射さない奥の間に人型のものが座っていた。


ミキオ「あんたがジョー・コクーか」


ジョー・コクー「よくぞ来た若者よ。我こそは“不死竜”ジョー・コクーなり」


 不死竜ジョー・コクーは角の生えた竜の顔に長い首、人型の身体に鱗のついた緑色の肌の竜人(ドラゴニュート)だ。なるほど長い白髭が生えているからやはり老齢なのだろう。


ミキオ「ミキオ・ツジムラだ。異世界から来た。何の因果かわからないが、乞われて魔導十指の末席に座すこととなった」


ジョー・コクー「ならばカグラムが汝をここに遣わしたのであろう。あの爺め、まだ儂を働かせるつもりか…聞け若者よ、儂は既に二千年を生きた。二つ名は不死竜なれど死期を悟り今はここに座して昇天を待つ身なり。なれど同志カグラムは再び儂をいくさ場に駆り立てようとしておるようだ」


ミキオ「待て、おれにはそんなつもりは無い。無理をしないでくれ」


ジョー・コクー「我が後進よ、この剣を汝に贈ろう」


 そう言ってジョー・コクーは自分の持つ錆びた剣を掲げた。


ミキオ「いや、せっかくだがおれは剣は不得意で」


 おれが手で制してそう言った瞬間、ジョー・コクーの全身は眩しく光り輝き、光の奔流となってその剣に吸い込まれていった。剣は変形し、刃の中央にドラゴンの意匠が入る。錆びていた刃は鏡面のように美しく輝き、まるで打ちたての剣のようだ。


ミキオ「おお…」


全能分断剣「長命を全うした竜人は死して心を遺し、器物に宿る。これぞ器物転生。不死竜ジョー・コクーは天寿を遂げひと振りの剣として転生した。今や我は万物分断剣オール・シングス・ディバイダーなり」


 剣が空中に浮かんで喋っている。いや、正確に言えば剣にあるドラゴンのレリーフが喋っている。非科学的なことが続き東大で物理学専攻だったおれとしては納得のいかぬことばかりだが、それにしても万物分断剣とは。


ミキオ「御大層な名前だが、おれは剣技については素人なんだよな」


万物分断剣「案ずるな若者よ、この名の通り我は只なる剣に非ず。ひとたび振るわば物質のみならず光、磁力、重力に魔力、エネルギーまでも断ち斬る神剣なり」


ミキオ「待て待て待て、エネルギーを斬る剣とは何だ。いくら何でも聞き捨てならない。エネルギーとは物体などが持つ能力のことなのだから『斬る』などということができるわけがないだろう」


万物分断剣「万物分断剣の名は伊達では無い。使ってみればわかる」


ミキオ「非科学的なことを…」


 まったく納得いかないが一応、手に取ってみる。なるほど実にしっくりくる。振ってみてもそう重くなく、手に馴染む。月並な表現だがまるでおれのために誂えられた剣であるかのようだ。


ミキオ「つまりこれが“聖賢”カグラムがおれをここにやった理由というわけか」


万物分断剣「いざ行かん、若き魔導十指よ。我はこれより汝の剣となろう」


ミキオ「よろしく頼む、先代。『万物分断剣』は長いのでBBと呼ばせて貰うぞ」


万物分断剣「…まあ良いだろう」


 剣に挨拶するという人生初の体験をしておれはBBこと万物分断剣を左腰に具え、逆召喚によって南ウォヌマーのウラッサー城に戻った。




 おれがウラッサー城の地下、魔導十指の間に戻ると、そこには既に女王“絢爛たるマイコスノゥ”と参謀役の“聖賢”カグラムしかいなかった。残りは既に全員、魔導騎士ガーラの捜索に出たのだろう。


マイコスノゥ「戻ったわね」


ミキオ「ああ。カグラム、あんたがジョー・コクーの元に行けと言った意味はわかった。その名も万物分断剣だそうだ」


 おれは腰の万物分断剣を掲げた。


カグラム「おお、不死竜、そんな姿に…古き友よ、この若者を支えてくれ給え」


万物分断剣「心得た」


マイコスノゥ「喋るの!?」


 なるほどノームと竜人(ドラゴニュート)、この長命種の二人は十指の中でも特に仲が良かったのだろう。おれが剣をおさめ自分の席に座ろうとした瞬間、女王が立ち上がり長い髪をアンテナのように逆立てた。


マイコスノゥ「来たわ! ニノッグスよ! 現在交戦中!」


カグラム「医療神君か! シンハッタ国だな!」


ミキオ「まずはおれが跳ぶ、その後に呼ぶから待機していてくれ。ベーア・ゼア・ガレマ・ザルド・レウ・ベアタム、我、意の侭にそこに顕現せよ、魔導十指“医療神君”ニノッグスの居場所!!」


 おれがフルコーラスで呪文を詠唱すると、青のアンチサモンカードから黄色い炎が噴き上がりおれを包んでいった。



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