表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/223

第50話 死闘!北朝鮮特務機関・火犬(プルゲ) (中編)

 翌朝8時、おれと巌おじ、母さんの3人でユジンさんが手配してくれたソウル市内、東大門(トンデムン)近くのホテルのラウンジで朝食を取っていた。チヂミと赤いウインナーとキムチ、甘いダルゴナコーヒーの不思議な組み合わせだ。申し訳ないが韓国で食べる白飯はいつもイマイチなのでチヂミは有り難い。


ミキオ「さて、何から話せばいいのか」


由貴「だいたい巌、あんたが公安でスパイやってるなんて聞いてなかったよ。なんでわたしたちに言わないの!」


巌「いや守秘義務! 言ったら姉貴たちに危険が及ぶだろ!」


母さんと巌おじは10歳離れた姉弟であり、弟の巌おじは姉に頭が上がらない。


由貴「韓国語も英語も中国語もペラペラなんだって? あんたがそんな頭いい子だなんて知らなかったよ! どっちかって言うと出来の悪い弟だと思ってたわ」


巌「っせえな! 俺のことはいいだろ!」


ミキオ「巌おじ、まあこれも言えなかったことなんだけど、母さんの彼氏、おれの父親はゼウスなんだ」


由貴「あっちはヘラ神っていう正妻いるから不倫だね」


巌「…? 外国人?」


ミキオ「神様だよ。オリンポスの神々の最高神」


由貴「男の色気ムンムンのイケオジだよ」


巌「…何? 二人してどんなギャグセン?」


ミキオ「巌おじは昨夜おれの能力見たろ。あれは父親のゼウスがおれにくれたギフトなんだ。体そのものから一部、抽象概念まで、魂のあるものなら何でも召喚することができる。おれは半神半人、神と人間のハーフなんだよ」


巌「…いや、信じられねえ」


ミキオ「何なら今すぐ北朝鮮の政府首脳全員召喚してもいいけど」


巌「いや、やめろ。かえって混乱を呼ぶだけだ」


由貴「嘘言っても仕方ないでしょ。わたしはゼウスと恋をしてこの子を産んだこと後悔してないよ」


巌「まあ、信じるとして、それが本当ならまさしく三樹夫は世界のミリタリーバランスを崩壊させるゲームチェンジャーだ。軍事国家の独裁者がどんな強固なシェルターに篭っていても三樹夫なら一瞬で召喚して逮捕できる。逆に独裁者が雇えばどんな政敵でも瞬時に葬ることができる。航空機や潜水艦などから兵士のみを召喚して軍事行動そのものを阻止することも可能だろうな。どんな手を使ってでも三樹夫を欲しがる国はいくらでもある」


 そう言って巌おじは甘いダルゴナコーヒーを一気に飲み干した。


巌「林鵬リポートにはハイエストサモナーは国家最大の脅威にも救国の英雄にもなり得る、と書かれていたらしい。誇大妄想みたいなもんかと思ったが、そうでも無さそうだな…」


ミキオ「そんな独裁者なんかの味方をするつもりもないけどさ。さてと、このまま逆召喚で母さんを日本に連れて帰りたいところだけど、空港で出国と入国の手続きを取らないとややこしくなるんだろ?」


巌「まあ、そうだな…お、電話俺か。非通知?」


 巌おじの携帯が鳴っていた。


巌「もしもし」


電話の相手「ヨボセヨ(もしもし)、ツジムラ君。朝鮮労働党直属第88機関“火犬(プルゲ)”だ」


巌「…どこでこの番号を」


電話の相手「時間の無駄だ、答えるわけのない質問はやめたまえ。甥御さんと話がしたい」


 巌おじはスマホをスピーカーモードにした。


電話の相手「はじめまして、ソンセンニム(先生様)。あなたを共和国で迎え入れたい。月10億円の契約金を約束しよう」


ミキオ「そのカネで飢えた人民にたらふく食わせてやったらどうだ」


電話の相手「2千500万の人民よりあなた1人の方が価値がある。いかがだろう。あなたは一生遊んでも使い切れない大金を手にする事になるが」


ミキオ「エル・ビドォ・シン・レグレム、ここに出でよ、汝、この電話の相手」


 おれのサモンカードの魔法陣からスマホを持ったスーツ姿の男が出現した。


電話の相手「 뭐야?(何だ?) 무슨 일이야?(どうなってる?)」


ミキオ「巌おじ、確保して」


巌「あ、ああ」


 巌おじは慣れた手つきで銃をつきつけ、手錠をかけて転がしたあと、両足首をハンカチで拘束し片手で抑えながら片手で携帯を操作した。


巌「もしもしユジン、いま“火犬(プルゲ)”の工作員と思われる男を確保した。すぐにパトカーで来てくれ」


 拘束された男はいかにも北朝鮮の工作員といった風貌でもなく、ちゃんと現代風の韓国のサラリーマンに見える。


電話の相手「これが召喚士の力か…おれは指示を受けて電話しただけの末端でしかない、大した情報は持ってないぞ」


巌「うるせぇな。尋問があるから覚悟しとけよ、KCIAはそんなに紳士的じゃねえぞ」


 その時、再び巌おじの携帯が鳴った。また非通知だ。


電話の相手B「焦るな、まだ話の途中だ。ミキオ氏にかわってくれ」


巌「ちっ…!」


電話の相手B「ミキオ先生、どうか手荒な真似はお止め頂きたい。あなたはこの地上で唯一の魔術を使う無敵の男かもしれないが、あなたの母親や叔父はどうだろう? 我々はいつでもスナイパーでそちらを狙撃できますぞ」


ミキオ「エル・ビドォ・シン・レグレム、ここに出でよ、おれたちを狙ってるスナイパー」


 サモンカードの魔法陣から紫色の炎が噴き上がり、中からスナイパーライフルを持った黒ずくめの男が出現した。


スナイパー「그런 바보 같은(そんな馬鹿な)!」


ミキオ「巌おじ、確保して」


巌「忙しいな、ったく!」


 巌おじは手早くライフルを奪いそのストックでスナイパーの側頭部を殴り、昏倒したところ手足をテーブルクロスで縛った。


ミキオ「そのスナイパーてやつをここに召喚した。キリがないぞ。お前も召喚しようか? なんならお前の心臓だけ召喚してやってもいいぞ」


電話の相手B「…やはりソンセンニム(先生様)は恐ろしい…だがよく考えて欲しい。日本にも我々の同士はいる。あなたのおじい様とていつでも狙撃できるのだ。また連絡します。ごきげんよう」


 電話が切れると当時にユジンさんがパトカーで現れた。拘束した2人の北朝鮮工作員に驚いている。


ユジン「巌サン、これは一体なんデスカ?!」


巌「うちの甥っ子の手柄だよ」


ミキオ「ユジンさん、広い部屋と警官を50人ほど手配して欲しい。こうなったら一網打尽にしよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ