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第5話 異世界で褐色のギャルエルフに誘われる

 中央大陸連合王国の王都フルマティにある冒険者ギルドの施設内で出来上がったばかりの冒険者カードを受け取り、おれはエルフのザザに尋ねた。


ミキオ「ところでモンスターの買い取りを頼みたいんだが」


ザザ「さっそくだね、もちろんもうミキオはギルド所属の冒険者だから可能だよ。で、獲物はどこに置いてきたんだい?」


ミキオ「いやここにマジックボックスというものがあってな…」


 そう言いながらおれは空中に人差し指で円を描く。円の内側が青白く発光し特殊空間化するとその中から先程獲得したモンスターたちを取り出した。


ミキオ「小型(レッサー)ワイバーン8羽、あと小鹿1頭。査定を頼む」


 ザザは目を丸くして驚いている。この世界の魔法レベルがよくわからん。空中からモノを取り出すのはこの世界でも異様なのか。


ザザ「…あんた、魔法使いでもあるのか…え、というかこの赤いワイバーンはクイーンレッサーワイバーンじゃないのか!?」


 見れば確かに鶴ほどの大きさのワイバーンの中にやや大きくて赤い個体が1羽混じってる。


ミキオ「もしかして値がつかないのか?」


 おれが尋ねるとザザはすぐ否定した。


ザザ「いや、逆!希少種なんだよ。クイーンレッサー革の財布やバッグと言えばオトナ女子憧れのオシャレアイテムNo.1だ。これだけでノーマルレッサーの30倍の買い取りになる」


 そうなのか、わからんものだ。何にしても買い取り値が高くなるのはありがたい。喜んでいると奥からスキンヘッドに口ひげの小柄なおじさんが出てきた。


ギルマス「この度は誠に…当ギルドマスターのコッシーノ・カンバーです。他と合わせて75万ジェンで買い取らせて頂きたいのですが、いかがですかな」

挿絵(By みてみん)

 この男がギルドマスターか。さっき狼男とトカゲ男がモメてた時は奥に隠れていやがったってわけだ。そう考えると食えなそうな男だが、まあいい。ジェンってのがこの辺りの通貨単位ってことか。


ミキオ「妖精、75万ジェンを円に換算するといくらだ」


 さっきの件もあるのでおれは小声で妖精クロロンに訊いた。


クロロン「1ジェン=1.98円だから約2倍と考えればいい。150万円ほどだね」


 えっ、そんなに貰っていいのか。これはしばらく生活に困らないな。有り難い。


ミキオ「もちろんだ。頼む」


ギルマス「これからもよろしく頼みますよ、ミキオ」


 おれとそんな会話を交わしながらカンバー老人はにこやかに微笑んだ。金歯が1本光ってる。




 さて、あとは宿探しと飯だが、この王都フルマティは商業でも賑わっているらしく料理屋らしき店も結構見る。神与特性のせいか空腹感もさほど無いが、まあ栄養のことを考えると腹に何か入れておいた方が良かろう。どこにしたものか、思案に暮れていると後ろからさっきのエルフが声をかけてきた。


ザザ「よ、飯屋でも探してんのかい?」


ミキオ「そうだな。そっちは仕事はもう上がりか」


ザザ「そ。どうせ右も左もわかんないんだろ? 今日はあたしが奢るからついてきなよ」


 さっき知り会ったばかりのおれに奢ってくれるとは。エルフ族というものはなかなか情に厚い種族のようだ。前世ではエルフなんていすゞのトラックくらいしか見たことがなかったが、こっちのエルフは人懐っこい。


ザザ「この街は海鮮料理が名物なのさ。海が近いからね」


 海鮮!いいじゃないか。おれは寿司が大好物なんだ。前世の院生時代はろくなものを食わずに不摂生して死んだようだが給料日だけは奮発して回転してない店に行ったものだ。


ザザ「ここでいいかい? ここはなかなか美味いんだ」


 看板には何故か読めるこっちの文字でコシヒッカ亭と書いてある。いいかも何もこっちは奢られる立場なんだからどんな店でもついていくまでだ。


店員「らっしぇい!どうぞお好きな席へ」


 ドアを開けると中から威勢のいい店員の声が聞こえてきた。中に入り、真ん中ほどのテーブル席に着席したおれたちは粗悪な紙に書かれた品書きを渡された。


ザザ「好きなの選びなよ」


 と、ザザに言われたがおれは今日この世界に転生してきたばかりでどんな料理文化があるのかすらわからない。文字は読めるが写真があるわけでなし、妖精を使って検索するとまたドン引きされそうなので選びようもない。お任せするよ、と言ってザザに委ねることにした。


ザザ「わかった、じゃあ大将、とりあえず酒を2杯。それとンーメロッカとンーモネーテを大皿で1人前ずつ」


板長「あいよっ」


 ザザがおれの神与特性のオート翻訳機能でも翻訳できない固有名詞の料理をオーダーし終え、しばらくすると木のコップに注がれた酒が出てきた。ビールのように泡が上面を覆っているが中の酒は淡い青緑色だ。待っていたがこちらでは乾杯の習慣は無いようなので軽く飲んでみる。うむ、ほろ苦いがコクがない。炭酸でうすめた激安の発泡酒みたいな味だ。正直あまりうまくないが、これがこの世界の味なのか。


ザザ「ふー、うめえ。今日一日の疲れが吹っ飛ぶぜ。大将、酒おかわり!」


 エルフだの森の種族だのと言いながらどこの世界のOLも似たようなことを言ってるんだなぁと思ってたら1品目の料理が運ばれてきた。まだ脚が動いてるアンモナイトのぶつ切りに野菜の入った熱々のとろみ餡をかけたものらしい。これ海鮮料理って言う? 一応箸をつけてみたがやはり旨くない。アンモナイトのヌメリをよく取ってないのか舌触りが悪いし、だいいち不衛生だろう。そしてかかっているとろみ餡もひと味もふた味も足りない。これは箸が進まないな…。


ザザ「ミキオ、どうだい、美味いだろ」


 ザザが言ってきたのでそうだなと軽く相槌をうつ。こいつ早くもほろ酔い気分になってやがる。2品目の料理が運ばれてきた。今度は丼に盛られたチャンジャみたいな料理だ。盛り付けが悪いし、これ何? 単に生の魚肉とハラワタを和えたもの? 味は濃いが生臭くてまったく洗練されて無い。それに魚自体の鮮度も良くない。これ昨日の魚じゃないの? せめてワサビか生姜、大葉かなんかの薬味があれば食えるのだが。


ザザ「ミキオ、これはこうやって酒と交互にちびちび食うんだ」


 ザザはそう言ってくるが要するに酒で生臭さをごまかそうってわけだ。これは駄目だな…我慢できなくなり、おれはカウンターの奥の大将に言った。


ミキオ「すまない大将、ちょっと板場と包丁を貸してくれないか」



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