表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/223

第47話 異世界アイドルデビュー!(中編)

 様々なハプニングもありながら異世界ガターニア初のアイドルグループ『イセカイ☆ベリーキュート』通称イセキューのプロジェクトが進行していった。


 おれたちが王都の召喚士事務所で紹介された翌日からダンスと歌唱のレッスンが始まり、案の定クロッサー氏がルックスだけで選んだ4人+1人なのでダンスの習得には困難を極めたが、メンバーのリンコが体操が得意とのことで曲の合間にバク転が入ることとなった。歌はみんな素人だったがチズルとユキノがまあ何とかなりそうだったので2人をメインボーカルとした。

 

 ステージ衣裳も決定し、事務所2階の会議室で歌唱レッスンが続けられていたが、ショートカットのリンコが暗い表情でおれたちのいる1階の事務所にやってきた。


リンコ「ミキオPにヒッシーP、ちょっといいですか」


ミキオ「何だ」


リンコ「わたし、もうユキノと一緒にやれません!」


ミキオ「おいおい」


ヒッシー「理由を言うニャ」


リンコ「衣装の件なんですけど、あの子さっさと自分でピンク色を持ってっちゃうんです。リンコは青がいいよって言われて!」


ミキオ「うーん、リンコはピンクが良かったのか?」


リンコ「だってわたしのラッキーカラーはピンクじゃないですか」


 いや知らんけど。


ミキオ「まあ、別に決まりがあるわけじゃないんだが、普通アイドルでピンクと言えばエースカラー、もっともアイドル性の高い子がピンクをやることになっている」


ヒッシー「ももクロで言えばあーりん(佐々木彩夏)、たこやきレインボーならさくちゃん(彩木咲良)、モー娘なら道重さゆみ、Berryz工房で言えば嗣永桃子、CoCoで言えば三浦理恵子だニャ〜」


 ついでに言えばプリキュアでもピンクはだいたい主人公キャラだ。


ミキオ「イセカイ☆ベリーキュートで言えばエースはユキノになるだろうから、まあピンクが妥当かな」


リンコ「じゃあ青はどういう子がやるんですか」


ヒッシー「まあ長身だったりショートカット、ボーイッシュ系かにゃ。ももクロだと早見あかり、Melodyだと望月まゆ、でんぱ組だと藤咲彩音。男子より女子人気が高いみたいな」


ミキオ「リンコにピッタリじゃないか。真の美人に似合う色だ。君は青の似合うクールビューティーを目指せ」


リンコ「ピンクがいいんだけどなぁ…」


 リンコはまだぶつぶつ言ってるがしぶしぶ納得したようだ。やれやれと安堵していると、また一人2階から降りてきた。


マルコ「プロデューサー! 私の衣装、なんで緑色なんですか!」


 5人のうちマルコとコマチだけは体型が違うので最初から決め打ちで作ったのだ。マルコは緑、コマチは黄色だ。


ミキオ「ヒッシーが決めたんじゃなかったっけ」


ヒッシー「ミキティが決めたニャ」


マルコ「どっちでもいいですけど、アイドルグループで緑色担当は何か猛烈に嫌な予感がします! 緑色担当はどういう人がなるんですか?」


ミキオ「いや、うーん、まあ癒し系というか」


ヒッシー「若々しい新緑のイメージだニャ」


マルコ「いや! 絶対違います! 緑色地味です! わたしもピンクがいい!」


 24歳にもなってなんだこの聞き分けの無さは。おれより年上だろこの人。


ヒッシー「わかったニャ、マルコは紫色担当にするニャ」


マルコ「紫も嫌! 絶対変な子が紫担当にされてる気がする! 5番手6番手の子が緑と紫担当にされてる気がする!」


 あやまれ、全国の緑色と紫色担当アイドルに。


ミキオ「じゃあなたはゴールドにしよう。スペシャルカラーだ、いいだろう」


マルコ「…それならまあ」


 絶対周囲から浮きそうな色を当てられてご満悦なマルコを見ながらおれたちはため息をついた。先が思いやられるな…と思っていたところに興行師、今はイセカイ☆ベリーキュートのマネージャーという立場のクロッサー・チャマーメが楽譜を持って入ってきた。


クロッサー「先生がた! 曲ができました!」


ミキオ「おお! 早いな」


 デビュー曲のタイトルについてもやはり『おんな度胸だ冬街道』『泣くな!もやしっ子』『詐欺師のバイブル』などの候補が上がっていたがおれの一声で『イセカイズム』となった。さっそく2階のレッスン場に行き、楽譜の読めるチズルに鼻歌を唄ってもらう。クセになる感じのなかなか良いメロディだ。


ヒッシー「良さそうだニャ〜」


クロッサー「中央大陸の若き天才作曲家、ジューゼン・ナッス氏に曲を書いて頂きました」


ミキオ「これは売れるんじゃないか?」


クロッサー「いい感じになってきましたね!」


ミキオ「歌詞は地球の知り合いに書いてもらおう。よし、どうにか形になってきたな」



 翌日、おれたちは再びレッスン場に集まり、振付師の先生を迎えてイセカイ☆ベリーキュートのデビュー曲『イセカイズム』のフォーメーションを決めた。5人は既にいかにもアイドルらしい衣装を着ており、なかなか壮観だ。担当カラーはチズルが赤、リンコが青、ユキノがピンク、コマチが黄、マルコがゴールドとなった。予想通りゴールドだけ悪目立ちしている。ちなみにリーダーは年長者でしっかり者のチズルとなった。最年長はマルコなのだが、あの人がリーダーになると権力を盾に横暴になりそうだからという判断だ。


クロッサー「はいみんな集まって〜。ええ『イセカイズム』のフォーメーションですが、今回のセンターはユキノで行きます。0番ユキノ、左1番チズル、2番リンコ、右1番コマチ、2番マルコ」


マルコ「ちょっと待ってください! なんで私いちばん脇なんですか!」


ミキオ「またあんたか…」


ヒッシー「身長などのバランスを考えての配置なんで、そういうもんだと思って欲しいニャ」


マルコ「嫌です! 納得いきません! 私がいちばん頑張ってるし、私がセンターになるべきです!」


 誰が言うてんねん、みたいな表情をその場の全員がしていたがメンバーで青担当のリンコが立ち上がって決然と言った。


リンコ「いい加減にしてよ! はっきり言うけどマルコがセンターだったらうちら売れないよ!」


マルコ「えっ!?」


 反撃は想定してなかったのか、狼狽するマルコ。リンコを皮切りに次々にメンバーが言ってきた。


コマチ「どう見てもユキノがセンターやるべきだよ、マルコがセンターだったらここのアイドルはえらいトウが立ってるやつセンターに置くなってなるよ」


 ちょっと言い過ぎじゃないのかコマチ。この子は小学生みたいな見た目なのにズバズバ言うな。


ユキノ「ていうかゴールドの衣装着た人がセンターだったらわたしたちバックダンサーみたいになるじゃん!」


 生々しいなぁ。ラブライブ!とかTHE IDOLM@STERではこういうシーンは無いだろうなぁ。


マルコ「じゃもういいです! 私、卒業します! 引き止めても無駄だから!」


 デビューもしてないうちからマルコが卒業を宣言してメンバーが安堵とも困惑ともつかない表情を見せた時、レッスンスタジオのドアが開き、中央大陸連合王国の王女フレンダ・ ウィタリアンが護衛の影騎士を伴って現れた。


フレンダ「失礼〜」


ヒッシー「あ、王女」


ミキオ「お前、何しに来た」


 緊迫した場面だったが、この国の王女が軽いタッチでやってきたのでイセキューのみんなはザワザワしている。


フレンダ「あなたたちが面白いことやってるって聞いて来ましたの。アイドル作るんですって?」


ミキオ「まあな」


フレンダ「ふーん。赤に青に黄色にピンクに金、変な配色ですわね」


リンコ「あ、でもマルコは辞めるって」


フレンダ「あら、じゃちょうどいいわ。わたくしがそのゴールドの衣装を着ます。イセカイ☆ベリーキュートwithプリンセスフレンダ。どう?」


 こいつ絶対事前に考えてきやがったな。


クロッサー「え! いやしかしそれは、あまりに急な」


ヒッシー「いや、いいんじゃニャい? この新曲だけの限定ユニットってことで」


ミキオ「こいつのこの国での知名度と人気を考えたらデビュータイミングでのブーストとしてはこれ以上ないな」


クロッサー「そ、それはそうですが、公務に影響は出ないので?」


フレンダ「王侯貴族の暇っぷりをナメないで頂きたいですわ」


 あやまれ、全国の王侯貴族に。


コマチ「すごい! 王女様が入ってくれたらうちら絶対売れるね!」


チズル「ようこそ、王女様! 一緒にレッスンしましょ」


マルコ「あ、あの…」


 アイドルとして売れる保証書みたいなのがついて急に残留したくなったのか、マルコは狼狽していたがフレンダはあっさりと切り捨てた。


フレンダ「卒業おめでとう。その衣装置いてってね。あ、でもサイズが違うから仕立て直さなきゃですわね」


 久しぶりにフレンダの性格の悪さが出たが、メンバー4人の瞳は野望と安堵にキラキラ輝いていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ