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第45話 異世界・餃子の旅(大阪王将編)

 初めて行ったおれの領地ウルッシャマーにて村長と邂逅、名物料理“豚のしばり揚げ”のマズさに閉口した我々は餃子を村の新名物とすることを提案、日本に逆召喚して村長らに餃子の王将を案内していたのだった。


ミキオ「というわけで、君たちにはこれから“もうひとつの王将”に行き、両店を食べ比べして頂こう。店員さん、お会計」


村長「えらいことになってきたな…」


ミキオ「ベーア・ゼア・ガレマ・ザルド・レウ・ベアタム!我ら4人、意の侭にそこに顕現せよ、大阪王将道頓堀本店!!」


村長「な、何だこれは!?」


 大阪王将道頓堀本店。巨大な餃子皿のオブジェが飾られており、他に類を見ない迫力ある外観だ。もっとも道頓堀には他にも巨大カニや巨大フグ、巨大串かつ屋のおっさんなどを飾る店があり特に目立つとも言えない。ちなみに大阪王将の“本店”である道頓堀店は2012年オープンであり、1号店ではない。大阪王将最初の店舗は京橋店だが特に1号店としては扱われていないとのことだ。 


ミキオ「これがもう1つの王将、大阪王将だ。当初は“餃子の王将”から暖簾分けの形で独立したがのちに商標争いがあり大阪王将と改名し、現在は競合店となっている」


村長「なるほど」


ザザ「すげえ外装だな…」


 えらいもので褐色エルフが道頓堀商店街を歩いていても大して目立たない。もっと派手なギャルやおばちゃんがいくらでもいる。


ミキオ「中へ入ろう。ここは1Fカウンター席限定で餃子の食べ放題をやってるんだ。300ジェン(=600円)だな」


ザザ「ミキオ! あたしの聞き間違いか?! とんでもなく安いじゃねーか!」


村長「さすがに信じられませんな、冗談でしょう」


ミキオ「おれも長年これでどうやって利益を出しているのか不思議なんだが、本当だ。まあ今回はテーブル席で普通に食べよう。店員さん、元祖焼餃子4人前と麻婆天津飯2人前、牛バラ肉すい醤油ラーメン2人前。それと小丼を4つ」


店員A「焼き4に麻婆天津飯2、牛バラ肉すいラー2ね、まいど!」


ミキオ「大事な話だが、ハッキリ言って大阪王将は店舗によってメニューも値段もクオリティーも全然違う。そこがセントラルキッチン方式の“餃子の王将”と大いに異なる点だ」


村長「ほお」


ザザ「どういう事だよ、ここもチェーン店じゃねーのかよ」


ミキオ「チェーン店だが運営会社の戦略によって敢えて不統一にしているそうだ。この本店は皆にオススメできる間違いなく美味い店だ」


 おれが講釈してる間に店員さんが餃子持ってやってきた。


ザザ「お、キタキタ!」


店員A「へい焼き餃子お待ち」


ザザ「うお、これも美味そう!」


村長「じゃっかんさっきの店より小振りなような気がしますが」


ミキオ「うん、“餃子の王将”の方が餃子のサイズは大きいな」


ザザ「美味え! さっきのとこより肉の脂がガツンとくる感じだ。焼きめが強いのもワイルドでいい」


村長「生姜が効いています。白ご飯が欲しくなりますな。さっきの店のは主食としてのギョウザ、ここのはオカズとしてのギョウザだ」


ミキオ「村長、あんたなかなか物がわかるな。それとメニューを見ればわかるがここの餃子には“ぷるもち水餃子”、“道頓堀餃子”、“ネギマヨ餃子”など餃子自体にバリエーションがある」


ザザ「おお! それも食いてえ!」


村長「たしかさっきの店は焼きギョウザのみでしたな」


ミキオ「まあ確かにそれらも美味いが、うちの村では最初は焼き餃子1本で行きたいと思う」


店員A「お待たせしました〜麻婆天津飯です」


ザザ「おお! すげぇビジュアル!!」


村長「赤い豆腐料理の中に黄色くてまん丸の玉子がうかんで、まるで太陽です!」


ミキオ「シェアしよう、ひとり半人前だ」


 おれは手ずから取り分けて全員に配った。


ザザ「辛くて甘くて、最高に美味え!」


村長「ギョウザとの相性もバッチリです!」


店員B「こちら牛バラ肉すいラーメンね」


ザザ「これもうめーな! 牛肉を甘く煮たのがたっぷり載ってて豪華な味わいだ!」


ヒッシー「これは他の店で見たことがないニャ〜」


村長「これもギョウザと交互に食べると非常に美味しい」


ミキオ「そう、ここの餃子は丼物にも麺類にもよく合うんだ。加えてこの店はサイドメニューも充実しているんだ。店員さん、焼き餃子5人前テイクアウトで」


店員A「あいよ!」


ミキオ「これはウルッシャマー村に持ち帰って料理人の皆さんに食べて貰おう」


ザザ「どれも美味かった、腹パンパンだ!

村長「ですな、これは村の新名物になるでしょう」


ミキオ「喜んでくれて良かった。店員さん、お勘定」


 おれたちはテイクアウトの餃子をぶら下げて店を出た。


ミキオ「さて、どっちの王将が美味かった?」


ザザ「どっちの店も美味えぞ!」


村長「確かに…甲乙つけがたい…」


ミキオ「断っておくが日本にはもっとうまい餃子を出す店はある。ただコストパフォーマンスと利便性、ポピュラリティという点で両王将ほど優れた餃子屋もないとも思っている。その上でおれが選ぶなら餃子をガッツリ食べたい時には餃子の王将を、餃子を中心に色々と食べたい時には大阪王将をチョイスするという感じかな」


ザザ「上手くまとめやがったな、このうんちくメガネっ子野郎!」


 美味い餃子を食べてノッているのか、ザザがおれをいじる感じのパンチラインを出してきた。


村長「いや参考になりました、ありがとうございます。さっそく村に帰ってギョウザの開発に努めたいと思います」


ミキオ「頼みます。そう難しい料理ではない筈だ」


 その後、マギ地方ウルッシャマー村で次々と開店した餃子屋にはおれを模したディフォルメキャラの人形と「メガネっ子餃子」という看板が掲げられていることにおれが気づくのは半年ほど後のことだった。

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