第36話 悪夢!異世界合コン (前編)
オーガ=ナーガ帝国で仕事を果たしたおれはエリーザに見つかる前に帰ろうとしたが、夕飯時だったので友人である皇子アルフォードに呼び止められて帝都内の店に移動し、食事を奢られることになった。繁華街にあるが落ち着いた隠れ家的な店である。
ミキオ「ちゃんとした店だな、その辺の食堂で良かったんだが」
アルフォード「ま、中へ入れ」
コンペート「アルっち、こっちこっち〜」
アルフォード「ああ、いま行く…紹介しよう、これは私の同期でオグニー辺境伯家のコンペート・チャーザー」
コンペート「おつかれちゃ〜ん」
先に店に来ていたコンペートという男はおれやアルフォードと同年代。貴族の息子なんだろうが色付きの眼鏡など派手な服装で軽薄を絵に書いたような男だ。
アルフォード「実はさっきコンペートから鳩が来てな、帝都トノマで飲むから合流しないか、と」
ミキオ「こういうのは先に言っておくのがマナーだと思うがな」
知らない男と飲むことになっておれはちょっとイラついた。まあ奢りだし誰と一緒だろうがこっちは飯だけ食えばいいのだが。
アルフォード「いや、すまん。食事が終わったら帰ってくれていいから」
コンペート「なになにナニィ〜? もめてる感じ? せっかくだから楽しく飲んで行こうし〜」
これは相当に鬱陶しい男だな。あまり深く関わらないように接することにしよう。
アルフォード「ああ、こっちは中央大陸連合の男爵でミキオ・ツジムラだ」
ミキオ「どうも」
コンペート「ミキミキね、よろしくちゃ〜ん。これから女の子3人来るからサ」
アルフォード「おい聞いてないぞ。それならそれで事前に鳩してくれ」
コンペート「怒んなし〜。どーせアルっち彼女いないっしょ? ここで彼女探ししたらいいじゃん」
アルフォード「いや、まあ…ミキオ、この話はフレンダには内緒にしような」
ミキオ「やましいことがあるならやめりゃいいだろうに」
つまり今日はこれから3×3の合コンになるということか。面倒くさい…おれは前世において東大卒ということでそれなりに合コンの誘いはあったが、楽しかったことなぞ一度もない。まず東大大学院でバリバリ研究しているおれと話題が噛み合う女子などいないし、集団かつ飲みの場でテンションの上がっている相手のノリに合わせるのが本当に苦手だ。グイグイ来る女も中にはいたが、そういう女ほどこっちの好みじゃなかったりする。要するに確率論として合コンで好みのタイプと出会って話が盛り上がって仲良くなって交際に発展するなんてことはほとんどあり得ないのだ。
おまけに男女平等のこのご時世に必ず女子の分は少し割り勘も安くしようなどという話になる。カネが惜しいわけではないが理屈として納得いかない。女子だけ割り勘が安くなる件について納得のいく理由をこれまで聞いたことがない。「女の子は化粧品や服装にお金がかかるから」などと言う人もいるが服は男も同じだし化粧はこっちが頼んだわけじゃない。そういうことを言う輩には男女平等についてどう思うのか、じっくり訊いてみたい。
話が逸れたがともかくさっさと飯食って帰るとしよう。
コンペート「あ、来た来た。こっちこっち!」
リバーサ「こんばんはー」
アクアーラ「始めましてー♡」
コンペート「ウチらもいま来たとこよ。座って座って。とりあえず男子は全員泡酒でうぃーね?」
アクアーラ「あたしカシスウーロンハイで」
ユーキューザ「あたしはピーチフィズ」
リバーサ「ファジーネーブル」
どこの世界でも若い女はチャラいものを頼みたがるな。こういうものをバラバラに頼むと乾杯が遅くなるんだが。
コンペート「じゃ女子チーム自己紹介してよ」
ユーキューザ「ユーキューザ・コーウェン、OLです」
アクアーラ「アクアーラ・ガオッカ、スポーツインストラクターです」
リバーサ「リバーサ・イドセンス、服飾です」
やってきた女子チームはたぶん全員が只人だ。みんな小綺麗な格好してるからそれなりに気合を入れてこの合コンに臨んでいるのだろう。
コンペート「うぃーねうぃーね、テンション上がってきたよ。はい男子も自己紹介してし」
アルフォード「ええと、アルフォード・ド・ブルボニア。オーガ=ナーガ帝国皇帝の第三皇子だ」
アクアーラ「すごーい」
リバーサ「なんかうち魔法配信で見たことあるかも」
リアクション弱いな。帝国の皇子が合コンに来たというのに地元の商店街の名物おじさんが来たくらいのリアクションだな。
ユーキューザ「ね、こっちの彼は?」
ミキオ「ミキオ・ツジムラ。男爵だ。あ、店員さんここに鶏釜飯ひとつ」
アクアーラ「飲み会でいきなり鶏釜飯いくタイプの人なんだ」
いや男爵はスルーか。こいつら皇子だの男爵だの辺境伯だのの肩書きにまったくビビッてないな。普通は鶏釜飯よりそっちに注目するだろうに。
ミキオ「腹が減っていてな」
ユーキューザ「いつもそういうハーフパンツにコートなんですか?」
ミキオ「すまないが服装いじりはNGで」
リバーサ「職業は何してるの?」
ミキオ「召喚士だ」
ユーキューザ「それって名刺交換とか押印みたいな?」
ミキオ「それは商慣習だ。召喚士。人間や魔獣を召喚する」
アクアーラ「すごーい、ね、ちょっと何か召喚して♡」
こいつらおれを芸人か何かだとでも思ってるのか。
ミキオ「ちょっと今日はMP無いんで(嘘だが)」
ユーキューザ「ね、グループ鳩作らない?」
グループLINEみたいに言うな。
コンペート「何なに、モテるねミキミキ!」
女子たちのグイグイっぷりに若干ヒキつつも宴は続く。おれは既に帰りたくなっていた。




