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第34話 5人のドラゴンスレイヤー(後編)

 中央大陸の聖峰ジャビコ山の大洞穴で戦っていたエンシェントドラゴンは既に死んでおり、5人のドラゴン討伐隊のひとり白魔導士のシリーに化けた邪神教団現教祖イゴネル・ ジルズによって死体を操られていただけだった。イゴネルはおれを陥れるために巧妙に舞台を作り罠に嵌めたのだ。


ミキオ「女を背中から撃つようなやつは許しておけない。お前も兄貴と同じ無明空間に入って貰う」


イゴネル「はは、言うじゃないか。言っておくけど、僕に召喚魔法は効かないぜ。魔法障壁はずっとフルシールド状態だからな」


ミキオ「それはこっちも同じだ。どうする? 殴り合いでもするか?」


イゴネル「攻撃魔法は使えるって言ったろ! ケル・エヴェド・ゼル・ギル・ゾロード! 邪神救世光!!」


ミキオ「マジックボックス!」


 イゴネルが空中に巨大な光球を発生させ、その球が分散しエネルギーの弾となって襲ってくる。おれは空中に指で円を描き、その円の中を特殊空間化させエネルギー弾を呑み込んだ。同じ技を使ったヤツの兄貴にやったのと同じ手だが、弟の方が弾数が多く拡散性も高い。逃した弾もいくつかあった。


将軍「く、くうっ!?」


ガギ「コンニャロー!」


 おれには魔法障壁があるし神与特性の身体強化で避けられるが、将軍とアマゾネスは魔法が使えないため避けきれない。言っちゃ悪いが彼らを守りながらのハンディキャップマッチは明らかに分が悪い。防御魔法を使えるサラは負傷してマジックボックスに入っている。


ミキオ「いいだろう、今日は恐竜祭りといこう。詠唱略ここに出でよ、汝、ヴェロキラプトル×10!」


 おれの赤いサモンカードが紫色の炎を上げ、中から中型の恐竜が10頭出現する。脚に鋭利な爪を持った敏捷な肉食恐竜だ。ギャア! ギャア! ギャア! 強力なハンターであるヴェロキラプトルたちはイゴネルに向かって一斉に襲い掛かっていった。


イゴネル「待ってたよ、この時を!! デッゾ・リガ・リンゲーボ! 仮死生体使役(アスフィクシア・ネクロマンシング)!!!」


 イゴネルが魔法杖から放った紺色の雷光が全てのヴェロキラプトルに直撃し、彼らの眼は紺色に発光して踵を返し、おれたちに向かってきた。


将軍「ウウッ!?」


ガギ「なんだ!? やめろ、お前ら!!」


イゴネル「ははははは、見たか! 僕は死体だけじゃなく、一時的に仮死状態にすることで生体も操れるんだ、言うなれば“最上級死霊呪術師(ハイエストネクロマンサー)”だ!!」


 10頭のヴェロキラプトルは相当に素早く、しかも明確な殺意を持って襲ってくる。思った以上に手強い。


ミキオ「くっ…!」


イゴネル「ははは、いいのかい?! 敵はその爬虫類だけじゃないぜ? ほら!!」


将軍「ぐがっ!!」


ガギ「ぎいっ!?」


ミキオ「おい、お前ら!!」


 イゴネルの紺色の雷光を浴び、将軍とアマゾネスの眼も紺色に発光して武器をこっちに向けて襲い掛かってきた。将軍のロングトマホークもアマゾネスのブロードソードも恐るべき威力とスピードだ。完全に彼ら本来の戦闘スタイルであり、ドラゴンの死体を操っていたのとは違い、こちらは肉体を操るというよりも生体の意思そのものをいじくる魔法のようだ。


イゴネル「どうだい、素晴らしいだろう僕の能力は!! 味方は倒せない、HPはどんどん削られていく、気分は最悪だろうねえ!!」


ミキオ「…仕方がない、許せよ」


イゴネル「はは、はは、はは! 仲間をコロス覚悟はできたかい?」


ミキオ「詠唱略! ここに出でよ、こいつらの血液6分の1!」


イゴネル「何だと?」


 赤のサモンカードから紫色の炎が上がり、空中に真紅の血液の球が出現しぽたぽたと滴り落ちたその瞬間、おれに目がけて襲い掛かってきていた将軍とアマゾネス、ヴェロキラプトルたちは一斉に膝を落とし、倒れていった。


イゴネル「き、貴様一体何を!」


ミキオ「貧血だ。死ぬような量じゃないが人間も恐竜も6分の1も失血したら立っていられなくなる」


 おれはすぐにマジックボックスを開き、2人と10頭を全員収納した。


ミキオ「だがおれに仲間を倒させたな、もう絶対に許さない」


イゴネル「…なめるなよ、僕は最上級死霊呪術師(ハイエストネクロマンサー)なんだ、コウモリ! トカゲ! ムカデ! ゴミムシ! 仮死生体使役(アスフィクシア・ネクロマンシング)でこの洞穴に棲む生物全てを使役して貴様に一斉に食らいつかせてやるぞ!!!!」


ミキオ「冗談じゃない、そんな時間を与えてやるものか。詠唱略! ここに出でよ、イゴネル・ ジルズの半径5メートルの酸素!!」


 ぶおうっ! カードの魔法陣から噴き上った紫色の炎とともに空気の渦が高々と巻き上がっている。


イゴネル「き…貴様…これは…」


 イゴネルが喉を掻きむしっている。その顔はもうチアノーゼを起こして青白い。


イゴネル「くっ…かっ…」


ミキオ「いくらお前が強力な魔法障壁を張っていても周囲の酸素を奪われたらどうにもならないだろう。酸素欠乏症はたった5分間で死に至る。まあその前にマジックボックスに入れてやるがな。さらばだ、教祖のおっさんの弟。この世の終わりまで兄貴と仲良く無明空間に入ってろ」


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