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第31話 異世界スター殺害予告(後編)

 この異世界の大スターであるトッツィー・オブラーゲを恐喝した犯人は元格闘技チャンピオンのブラッカ・ ミギュー、通称“悪夢のブラッカ”だった。おれたちは王都フルマティの東港マリーナでヤツを見定めた。


トッツィー「追いかけましょう!」


ミキオ「その必要はない。ここからは召還士の得意分野だ。エル・ビドォ・ シン・レグレム、我が意に応えここに出でよ、汝、悪夢のブラッカ!」


サモンカードの魔法陣が紫色の炎をあげて逃走中のブラッカ・ミギューを召喚した。


ミキオ「落ちぶれたもんだな、悪夢の」

挿絵(By みてみん)

ブラッカ「く、糞!」


ミキオ「わけを言え。ヤクザとは言え普通こんなアコギなシノギはやらないだろ」


ブラッカ「…カネが要るんだよ」


ミキオ「そのカネが要る理由を言えと言っている」


ブラッカ「…」


ミキオ「仕方ない、乗りかかった舟だ。お前の“本心”を召喚してやる」


ブラッカ「な、何!?」


ミキオ「エル・ビドォ・ シン・レグレム、ここに出でよ、汝、悪夢のブラッカの本心!」


 カードの炎の中から紫色の光球が出現し、ブラッカの声で「闘病中の妹の手術代が必要なんだよ!」と言った。おれたちは全員、呆気に取られた。


ブラッカ「…」


ミキオ「何の病気だ」


ブラッカ「るせえ! おめえに関係ねえだろ!」


ミキオ「またお前の本心を召喚してやってもいいが」


ブラッカ「わ、わかった! 言うよ! 俺の妹アガノヒーは魔血病ってやつだ。治すには全身の細胞から魔血細胞を除去しなきゃあならねえが、難易度が高くて高額な手術代がかかる」


平賀源内「だからって犯罪はダメだよ〜ヨホホ〜」


ブラッカ「わかってるよ!」


ミキオ「おい、悪夢の。お前の妹はどこにいる、案内しろ」


ブラッカ「はぁ!? 何言ってんだおめえ!」


ミキオ「まあ言いたくないならいい。逆召喚なら“アガノヒー・ミギューの居場所へ”で行ける」


ブラッカ「…わかったよ! 妹はトゥヤーノ診療所に入院してる」


ミキオ「よし、じゃあ今すぐ行こう。あ、源内さんはここで。今日はありがとう」


 付いてこようとした平賀源内を制し、おれは青のアンチサモンカードを取り出した。


ミキオ「ベーア・ゼア・ガレマ・ザルド・レウ・ベアタム、我ら、意の侭にそこに顕現せよ、トゥヤーノ診療所!」


ブラッカ「お、おい! てめえ…ウワッ!!」


 おれとヒッシーとトッツィーのおっさん、それに悪夢のブラッカは黄色い炎に包まれて中央大陸連合王国のトゥヤーノ市にあるトゥヤーノ診療所に“逆召喚”し、ブラッカの妹アガノヒーの入院している部屋に移動した。




ブラッカ「入るぜ、アガノヒー」


アガノヒー「兄さん! こんな時間に…!」


ブラッカ「すまねえ、こいつらがどうしてもって言うんでな」


 アガノヒーはブラッカと同じミノタウロスだが、ブラッカよりは人間に近い容姿だ。正直言って全然兄に似ていない。10代後半から20代前半といったところか。


ミキオ「邪魔をする」


トッツィー「夜分に恐れ入ります」


ヒッシー「にゃ」


アガノヒー「この人たちは? え、トッツィー・オブラーゲ? なんで?」


トッツィー「いつも応援ありがとう」


トッツィーのおっさんはそう言いながらアガノヒーに握手しに行った。


ブラッカ「いや、まあ…最近知り合ってな。具合はどうだ」


アガノヒー「ずっと同じよ。毎日毎日採血されて、頭がおかしくなりそう」


ブラッカ「そ、そうか…」


ミキオ「話は聞いた。悪夢の、洗面器を持ってこい」


ブラッカ「何?」


ミキオ「おれの能力で君の体内から魔血細胞だけを部分召喚する」


ブラッカ「な、何だと!?」


アガノヒー「何言ってるの、この人」


ブラッカ「できるのか、そんなことが…」


ミキオ「やったことはないができる、多分…エル・ビドォ・ シン・レグレム、ここに出でよ、汝、アガノヒー・ミギューの体内すべての魔血細胞!」


 カードの魔法陣から紫色の炎が噴き上がり、かざした洗面器の中にぼとぼとと濃紅色の肉塊が落ちていく。


ブラッカ「こ、こりゃあ…」


ヒッシー「最上級召還士、なんでもアリだニャ〜」


アガノヒー「…すごい、体が軽くなったような気がする…信じられない…あなた、神様なんですか…?」


ミキオ「まだ“神の子”だがな。今日はもう寝て明日からたっぷり栄養を摂れ。欠損した細胞が増殖したら退院できる筈だ」


 横を見るとブラッカがぽろぽろと落涙している。


ブラッカ「うおおおお! 召喚士の先生! 先生と呼ばせてくれ! 俺はこれからの人生をあんたに捧げるぜ!!」


ミキオ「ちょ、ちょっと待て、おれはやくざの人生なんて要らないぞ」


ブラッカ「イオボアの親分には盃を返すよ! 先生、何でも言ってくれ! こう見えても元格闘技チャンピオンだ、必ず役に立てる!」


ミキオ「いや、あのな…」


 その時、診療院の窓から忍者のような男たちが顔を出した。パパラッチだ。こんなところまで追いかけてくるとはなんと執念深い。


パパラッチA「トッツィーさん、夜の密会ですか?」


パパラッチB「横にいるのは元格闘技チャンピオンのブラッカ・ミギューでは?」


パパラッチC「反社の人間と黒い交際ということですか?」


トッツィー「 ふ、不肖、このトッツィー・オブラーゲ、逃げも隠れもしない! 男として最後まで責任を果たしますっ!」


 てんやわんやになったのでおれとヒッシーはさっさと逆召喚で宿に帰った。



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