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第3話 異世界でモンスターハンティングをやってみた

 唐突に転生させられた異世界ガターニアの森近くの草原でおれは魔法陣に呪文を唱えた。


ミキオ「エル・ビドォ・シン・なんたら!我が意に応え、出でよ!汝、アントニオ猪木!」


クロロン「呪文をうろ覚えで適当に言うんじゃないよ!」


 妖精にツッ込まれたが、サモンカードからはさっきと同じ紫色の炎が吹き上がった。


ミキオ「呼べるじゃないか」


クロロン「礼儀の問題だよ!」


 なんだ、礼儀の問題なのか。いや誰に対する礼儀なんだ。呼び出される方は呪文なんかどうでもいいだろうに。


猪木「…なんだ、ここは」


 魔法陣から出現した顎の尖ったその男は辺りをキョロキョロ見回しながらそう言った。全身のはじけるような筋肉の張り、鋭い眼光、黒いレスリングパンツ、まさしく80年代後半のレスラーとしての全盛期真っ只中のアントニオ猪木である。


ミキオ「ここは異世界ガターニア。あんたに頼みがある。腹が減ったんでその辺の森に入って獲物を獲ってきてくれないか」


 いきなり無茶な話だが、猪木は快く頷いてくれた。


猪木「元気があれば何でもできる。この道はいかなる道か、行けばわかるさ!ダーッ!!」


 そう言いながら森の中へ駆け抜けて行った。猪木ってあんなに必要以上にシャクれてたか? どうもモノマネ芸人の芸風に寄せて誇張されてるような気がするが、考えてみればおれは若い頃の猪木なんか映像でしか見たことがないので意外と本物はあんな感じなのかもしれない。


クロロン「ミキオ、無茶なこと言うね…5分間しか召喚できないんだよ?」


ミキオ「無茶か? 伝説のレスラーだぞ?」


クロロン「いやまぁ…」


 妖精が当惑していると、4分経って猪木が帰ってきた。


猪木「元気があれば何でもできる。おいお前、グレートな小鹿を捕まえてきたぞー!」


 見れば猪木は一頭の小鹿を引きずって来ていた。時間のことを考えると凄いことは凄いが、獲物は小さいし、猪木もまあまあ傷だらけになっていた。


ミキオ「ありがとう、これで今日の飯は助かる。また頼む」


 フッフッフ、と必要以上に顎のしゃくれを誇張した笑い方で猪木は消えていった。きっとこれから80年代後半の地球で試合なのだろう。


クロロン「申し訳ないね…あんな大物を次から次へと…」


 妖精がすまなそうな顔をしていたが、誰に気を遣ってるんだという話だ。嫌なら召喚能力なんか与えるな。


ミキオ「でもこれじゃ足りないな。もう1人呼ぼう。エル・ビドォ・シン・どうたら!我が意に応え、出でよ!汝、ゴルゴ13!」


クロロン「だから呪文覚えなよ」


 妖精にツッ込まれつつ召喚の詠唱を行ったが、魔法陣はうんともすんとも言わない。


ミキオ「架空の人物は無理なのか」


クロロン「歴史上実在しない人物と、ミキオより格上の神仏は召喚できないよ!あと悪魔は呼べるけどやめといた方がいい」


 誰が悪魔なんか呼ぶか。ええと、誰かいたっけ、実在の人物でスナイパー…あ、そうだ。


ミキオ「エル・なんたら!我が意に応え、出でよ!汝、那須与一!」


クロロン「呪文を省略するなよ!」


 そうは言ってもちゃんと魔法陣から紫色の炎が吹き上がり、平安時代の武者が出現した。源平合戦で活躍した弓の名手である。


与一「ここは…いずこ?」


 見れば女かと思うような絶世の美少年である。何かの漫画の影響があるのかもしれないと考えたが、そんなわけはないので考えるのをやめた。


ミキオ「那須与一、あんたに鳥撃ちを頼みたい。その辺に飛んでる鳥を何羽か落としてくれ」


与一「心得た」


 なぜか召喚した人物はみな物わかりも聞き分けもいい。断るということがない。与一は森の上を飛ぶ小型の飛竜(レッサーワイバーン)を矢の連射で次々に撃ち落としていった。


与一「8羽は落とした筈、これでよろしいか」


 与一は呼吸も乱さず言った。


ミキオ「充分だ、ありがとう」


 おれがそう言うと与一はスーッと消えていった。これから壇ノ浦だろうか、ご苦労なことだ。


ミキオ「さて妖精、これらの獲物を運ぶ方法はあるか」


クロロン「あるんだよね、それが」


 妖精は待ってましたとばかり嬉しそうに自分の小さい羽根で空中に円を描くと、その円の内側が青白く発光し特殊空間となった。


クロロン「マジックボックスだよ。今回はボクが作ったけどミキオにも同じ術が使える。キミにはまた定番だなとか言われそうだけどこれでどんな大きな物でも収納できるし、持ち運ぶ際に重量は発生しない。入れてる間は経年劣化しない」


 いや、定番だが普通に便利だ。おれは与一が落としたレッサーワイバーンと猪木の小鹿をボックスに片付けて言った。


ミキオ「これでいい、ではこれまた定番のギルドに行こう」



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