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第2話 異世界に昭和の大スターを召喚する

ミキオ「ここが…その異世界か…」


クロロン「そうだよ!」

挿絵(By みてみん)

 あたりを見回してたら急に相槌を打たれた。声の方を見ると空中に黒くて丸っこいゆるキャラみたいなのが浮かんでた。出たよ、妖精。異世界と言ったらこれか。芸がない。


ミキオ「お前は何」


クロロン「ボクは使者の神パシリスからきみに遣わされた異世界ガイド妖精のクロロンさ!…あ、あれ、驚かないね…」


ミキオ「日本人がこのテのキャラに驚くわけがないだろう。むしろ見飽きたレベルだ」


 調子に乗るといかんのでハッキリ言ってやった。


クロロン「そ、そう…」


 妖精は真っ黒でまんまるだがよく見ると小さい羽根や嘴が付いており、カラスに見えなくもない。なるほど、神の使いだからカラスか。これもおれが日本人だから合わせたのかもしれない。


クロロン「きみはこの世界について何も知らないだろうから、ボクがガイド役を仰せつかったんだ。何でも聞いてよ。ボクをiコンシェルだと思ってさ」


 ずいぶん懐かしいことを言う妖精だ。もうドコモがサービスを休止してから何年経つんだ。


ミキオ「それよりもだ、ここが例の異世界」


クロロン「そう!異世界ガターニアだよ!きみはこの世界で寿命まで第二の人生を過ごすんだ」


 なるほど、確かに転生している。服装もさっきまではTシャツとデニムだった筈だがそれっぽい服になっている。だが待て。


ミキオ「転生って、普通は赤ん坊からはじまるもんじゃないのか? まだ鏡を見てないがどう見てもおれは前世の頃と年格好が変わっていない」


クロロン「きみは神の子だからね。いろいろと特別なのさ」


 理由になっていないが、まあなってる気もする。こいつを問い詰めても仕方ないのでおれは切り替えた。おれは子供の頃から切り替えが早いのだ。


ミキオ「で、これから何をすればいい」


 おれはリセットした表情で妖精に尋ねた。


クロロン「まずは生活、食と住を確保しなきゃ。きみはこの世界では無職の無一文なんだから」


そう言えばそうだ。なんだ、なかなかの難易度だな…待てよ、そう言えばおれは召喚士じゃないか。


ミキオ「召喚てのはどうやればいいんだ?」


クロロン「そう言うと思ったさ」


 ややうきうきしながら妖精は何かカードを取り出した。


クロロン「サモンカード。魔法陣が書かれてる。これを地面に置いて一定の呪文を唱えれば対象を召喚できる。ただしMPを消耗するし、5分間だけしか召還を維持できない。これが呪文ね」


 そう言って妖精が差し出したメモ紙には日本語の明朝体で「エル・ビドォ・シン・レグレム 我が意に応え出でよ汝○○」と書かれてあった。非常にわかりやすい。


ミキオ「じゃ試しにやってみるか…エル・ビドォ・シン・レグレム。我が意に応え、出でよ!汝、美空ひばり!」


クロロン「あっあっ、そんな簡単に」


 おれの詠唱が終わるとサモンカードが紫色の炎を上げ、中からゆっくりと往年の昭和スターが出てきた。


美空ひばり「あーら、ここは一体どこ?」


 やや物真似芸人の声色に寄せ過ぎているきらいはあるが、間違いなく美空ひばりだ。見た感じ40代の脂の乗り切ってる頃だろうか。任意の年齢で呼び出せるのか? 召喚のシステムが全然わからない。


ミキオ「ここは異世界ってやつらしい。おれもここに連れてこられたばかりで戸惑っている。1曲うたってクールダウンさせてくれないか」


 おれがそう頼むと、意外にも往年の昭和スターはにっこりと微笑んだ。


美空ひばり「いいわよ、リクエストある?」


ミキオ「じゃ、AKB48の“ポニーテールとシュシュ”を」


 無茶なリクエストかもしれないが、実際におれの好きな曲だから仕方ない。往年の昭和スターは何故かこの曲を知っているらしく、練習もなしでファーストテイクで見事に歌い上げた。当たり前だが当時のAKBより圧倒的に上手い。感動のあまりおれは自然に拍手をしていた。


ミキオ「すごい、素晴らしい。さすが美空ひばりだ」


 お世辞でもなく本心からの賛辞を贈ると、ひばりはスーッと透明になっていった。


美空ひばり「あーら、ありがと」


 唇を歪めながら消えていくひばり。美川憲一も入ってないか? と思ったがよく考えたらおれは生前のひばりをよく知らない。まあ大体あんな感じなんだろう。


クロロン「最初からえらい大物を呼ぶね…しかもアレ歌わす⁉️ 見てるこっちがヒヤヒヤしたよ…好きな曲を聴いて少しは落ち着いたかい?」


 おれよりもひばりに気を遣いながら妖精は言ってきた。


ミキオ「ああ、落ち着いた。いい歌声だった。また気が向いたら呼ぼう」


クロロン「往年の大スターをSpotifyみたいに扱うんじゃないよ!」


 そう言われても扱えるんだから仕方がない。おれは決意し、立ち上がった。


ミキオ「まずは食料を確保しよう」



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