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第16話 邪神教団との戦い(中編)

 冒険者ギルドの奥の間、邪神教団に拉致された王女フレンダらを魔法召喚によって奪還したおれは、多人数一斉召喚によりMPを大量消費し、床に片膝をついた。


ミキオ「大丈夫だ、ちょっと目眩がしただけだ」


アルフォード「…うむ、ならばいいが、貴様の魔法召喚は5分間しか維持できないのではなかったか。5分経ったらまた彼女たちは戻されてしまう」


 おれはおれを気遣うアルフォードの手をのけ言った。


ミキオ「実は、戻す場所は任意で選べる。今回彼女たちは魔法召喚を行なう際にここを返還先に設定しておいた」


アルフォード「そ、そうなのか」


 これはおれは最初から気付いていた。召喚術を行なう際に眼前にコマンド入力画面が浮かぶのだが、返還先は入力できるようになっているのだ。デフォルトは召喚元だが。


ミキオ「だがこれで一件落着とはならない。またいつフレンダや他の女が奴らに攫われるかわからない」


アルフォード「うむ」


ギルマス「放置してはおけませんな」


フレンダ「だけどミキオ、邪神教団の本拠地がどこにあるのかわかりませんわ。ザド島国で発生した宗教だからザドにあるとは言われてますが」


アルフォード「教団の幹部は召喚できないのか?」


ギルマス「奴らは転移魔法を使える大魔導師ですぞ、常に対魔法障壁を張っているレベルです」


影騎士「やはり何年でもかけて本拠地を突き止めて乗り込むしかござらぬか」


 やや議論が煮詰まってきた頃、おれはそっと部屋を出て妖精クロロンに小声で尋ねた。


ミキオ「おい妖精、出てこい」


クロロン「何?」


ミキオ「“逆召喚”の魔法、あるんだろう。呪文を教えろ」


クロロン「えー!? なんで知ってるの?」


ミキオ「おれは天才だぞ。エネルギー不変の法則からして、無いわけがない」


クロロン「アレかぁ…ちょっと無敵過ぎるから早いうちから教えるなってパシリス様に言われてるんだけど…ま、いっか。じゃあこれ」


 そう言いながら妖精は赤いサモンカードに対する青色のアンチサモンカードと呪文の書かれたメモ用紙を出してきた。


クロロン「気をつけてね、青のカードはMPを10倍消費するよ」




 皆の前に戻ると、おれは決然と言った。


ミキオ「みんな聞いてくれ。珍しくおれは怒っている。したがってこれからザド島国に行ってその邪神教団とやらをぶち壊すことに決めた。アルフォード、ザザ、影騎士、ついてきてくれ」


アルフォード「と言っても…」


ザザ「え、まさかあんた、転移魔法まで使えるの?」


ミキオ「そんなところだ」


 おれは青いアンチサモンカードを床に起き呪文を詠唱した。


ミキオ「ベーア・ゼア・ガレマ・ザルド・レウ・ベアタム!我ら4人、意の侭にそこに顕現せよ! ザド島国、邪神教団の本拠地!!」


 カードから黄色の炎が噴き上がり、おれと3人を包んでいった。




 次の瞬間、おれたちは転移していた。全身を包む黄色い炎がやみ、目の前の景色が明らかになる。どこかの施設の中だろうか、灰色の壁に囲まれた大きな部屋である。


ミキオ「“逆召喚”の魔法だ」


アルフォード「重ね重ね凄いな、貴様…」


ザザ「さすが“最上級召喚士(ハイエストサモナー)”」


ミキオ「これからこのパーティーで教団をぶち壊す。幹部は全員マジックボックスに捕獲してしまえばいい」


アルフォード「うむ」


ザザ「よし、じゃあ行こう」


ミキオ「その前にだ、影騎士、マスクを取ってくれ」


影騎士「…」


ミキオ「おれたちはこれから作戦終了まで命を預け合う関係になる。お前が何者かわからない状態で命を預ける気になれない」


影騎士「…合点した」


アルフォード「ほお」


ザザ「お、めちゃめちゃイケメン」

挿絵(By みてみん)

 影騎士が漆黒のフルマスクを取ると意外にも長い黒髪、女かと思うくらいの美形だった。


影騎士「人呼んで影騎士、出生時の名はカーレイ・バッセンタにござる。影に生まれ影に死す宿命ゆえ名前も顔も親も捨てた身にて」


ミキオ「すまなかったな、ありがとう。よし、ではザザ、アレを召喚する」


ザザ「え?」


ミキオ「エル・ビドォ・シン・レグレム!我が意に応えここに出でよ、汝、西方大陸の超大樹ユグドラシル!!」


 おれがそう叫ぶと赤いサモンカードより紫色の炎が現れ、中から超巨大な樹が出現した。幹の太さだけでたぶん東京ドームくらいはある巨木は天井を破壊し、その根や幹が出現するだけで複雑な施設がどんどん粉砕されていった。


影騎士「な、なんと…!」


ミキオ「みんな、枝に乗れ!」


ザザ「凄い、粉々じゃねーか…!」


アルフォード「これは手間がはぶけるな」


ミキオ「以前ザザに聞いたんだ、西方大陸には都市を覆うほどの巨木が存在するってな。木は生物だから当然召喚できる」


クロロン「教団ぶち壊すって、物理的な意味で言ったんだね…」


 空中の妖精がぼやいていると、破壊された教団施設の中から光の球体が次々に浮遊してきた。教団の魔導師が防御魔法と空中浮遊魔法を使っているのだ。


教団幹部A「おのれ、何者!?」


教団幹部B「いきなりユグドラシルを召喚したのか、非常識な!」


ミキオ「やつらと会話するな、どうせ話は通じない。死なない程度に攻撃してHPを減らしてくれ」


ザザ「いや、簡単に言う!」


アルフォード「どけ、みんな! 聖剣エブリガリバー全機能解放(オールフリー)! ほとばしれ雷霆、ゼグノ・ゲシュト・ガルバ!!!」


 相変わらず持ち方が変だが、アルフォードの持つ聖剣の刀身がアンテナのように変形すると電撃を発生させ敵陣に向けて放射した。なるほど、あれならばあの持ち方で理にかなっている。まさか本物の聖剣だったとは。


影騎士「失礼…雪中梅槍、伍ノ段、氷雨(ひさめ)!!」


 影騎士は身長ほどもある長槍(ランス)を腰にため、槍先から氷の弾丸を高速連射した。思った通り大した手練だ。このパーティーではおれに次ぐ術者だろう。


ザザ「あんたらちょっとレベチ過ぎね!? 神弓、キューピッドヴァレイ!!」


 ザザはエルフらしく弓を出してきた。矢先に魔法石を付けているため放つと同時に速度を上げていく。なかなかどうして、牽制という意味では充分に仕事をしている。


教団幹部A「ふおおおおっ!?」


教団幹部B「撃て、撃て!!」


 敵の反撃が始まり、四方からエネルギーの弾丸がおれたちを襲ってきた。



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