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第159話 ツッコミ千本ノック! 映画キン肉マン観賞会(第二部)

 いつものように朝から事務所に来訪した帝国のバカ姉弟エリーザとアルフォード、今回の彼らの依頼は病弱な皇子レズンザンドに健康的な筋肉への興味をもたせることだった。おれは大学時代の先輩である針毛園美貴さんの家にブルボニア兄弟を連れて行き、キン肉マンの映画を見せてもらっていた。


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キン肉マン「イエーイ! みんな観てる? キン肉お兄さんですよ〜!がんばるけんね〜!!」

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 映画冒頭、キン肉マンことキン肉スグルがスクリーンの外のちびっ子たちに向けて直接話しかけている。いわゆる“第四の壁を越える”というやつだ。これが初の映画なのでその気負いだろう。キン肉マンの声優はケンシロウや冴羽獠など往年の二枚目役でおなじみのレジェンド声優・神谷明だが、『キン肉マン』ではコミカルに振り切って見事にキン肉スグルを演じている。物語内で解説役であるアデランスの中野さんが語ったところによると、今回の物語は時系列的にキン肉マンが超人オリンピックのV2チャンプとなり、その記念としてキン肉マンランドという遊戯施設を建設するための寄付金(目標額1500億円)を集めているところらしい。


エリーザ「だいたいなんだこのブヨブヨした顔のブサイクな男は! こいつが主人公なのか?」


針毛園「本編の主人公キン肉マン、本名キン肉スグル。キン肉星の王子で超人レスラーだ」


アルフォード「わからんものだな、ニホン人の美的感覚は…」


ミキオ「いや、それが実はあの顔はマスクでな。素顔はなかなかの美形らしい」


エリーザ「無理がある! 表情に合わせてそのマスクの目や唇まで動いておるではないか!」


 画面の中ではキン肉マンたちが公園?でキン肉マンランドに寄付してくれるスポンサーを待っていた。


レズンザンド「まあ同じような顔立ちのこの3人は主人公の身内だというのはわかるのですが、それ以外はどういう?」


 確かにこのアニメはいきなり始まって人物紹介が何もないから知らない人が観たら面食らうだろう。同時上映のかぼちゃワイン目当てで来た女の子なんか何がなんだかわからないのではないか。


針毛園「よろしい、ではちゃんと説明しよう」


 先輩はそう言いながらかねて用意のホワイトボードにキャラクターの絵が描かれたマグネットシールを貼り始めた。


エリーザ「用意周到だな…」


針毛園「まずこの体毛が濃くて額に『王』と書いてあるのがキン肉マンの父親の真弓。キン肉族の大王だな」


レズンザンド「言われてみれば威厳を感じる」


針毛園「この額に『ママ』と書いてある女性がキン肉マンの母親の王妃。小さいのはミート君と言ってキン肉マンのお付きの少年だ。そしてミニスカートの女性が二階堂マリ。キン肉マンの恋人だ」


アルフォード「恋人あり状態からのスタートか、ハラハラしないアニメだな」


エリーザ「ではあの歯抜けのおじさんは」


針毛園「与作さん。どこにでも出てきて何にでもなる人だ。この場面では建設業者のようだな」


エリーザ「…そんなキャラあるか? ではあの黒くてちっこいのは何だ」


針毛園「ナチグロンだな。最初は巨大怪獣だったがいつの間にか小さくなって髪も生えてレギュラーになっていた。まあ“にぎやかし”だと思ってくれ」


アルフォード「聞けば聞くほどよくわからん世界観だ…」


針毛園「キン骨マン、イワオ、西墨田川署の五分刈刑事この辺もこれから登場するが本編の進行とは一切関係ないからそのつもりで。元々はそれぞれ原作のチョイ役キャラだがギャグシーンが無いと子供に飽きられるから、という理由でアニメ化で無理矢理コメディリリーフとして起用されたのだ」


ミキオ「なるほど、だから関係ないのにどこでもぞろぞろ付いてくるんですね」


針毛園「そう。“にぎやかし”だからシリアス路線の“完璧超人始祖(パーフェクトオリジン)編”には出てこない」


レズンザンド「本筋には関係ないにぎやかしキャラを別個に配置するとは斬新な発想だ。我が国の演劇にはとてもこういう発想はない」


ミキオ「まあいわゆる“尺稼ぎ”の要素もあると思うがな」


 その頃、画面の中ではキン肉マンランド建設のために続々と寄付者が集まってきていた。最初に来た高級車から降りてきたのは当時(1984年)総理大臣だった中曽根康弘っぽい人だ。懐から分厚い封筒を出してきたからこれが寄付金なのだろう。


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総理大臣「キン肉マン君、これを」


キン肉マン「ありがとう、ぞうり大臣」


マリ「ぞうりじゃなくて総理大臣よ」


キン肉マン「オー! アイムソーリー!」

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エリーザ「くだらん、バカか」


アルフォード「姉上、抑えて抑えて」


 その後、次々と高級車がやってきて裕福そうな男女が降り、キン肉マンに札束を渡す。タモリや王貞治(当時読売ジャイアンツ監督)、広岡達朗(当時西武ライオンズ監督)らしき人物も訪れて札束を渡していく。タモリさんらしき人は“友達の輪”のポーズまで取っているが絶対許可取ってないよな。当時デビュー4年目でトップアイドルの松田聖子らしき人物もやってくるがなぜか「わたしにも寄付させてぇん」と言いながら頬を染めて恥ずかしそうにキン肉マンに札束を渡す。キン肉マンに気があるのか? もっともキン肉マン自身は「どうもありがとう研ナオコしゃん」などと言って松田聖子をズッコケさせていたからあんまり興味無さそうだ。


レズンザンド「つまりこのキン肉マンという人はひと声かければ現職の総理大臣や有名タレントらがやってきて札束を置いていくほどの人物ということですか」


 レズンザンドはなんだかんだでこの中では一番食いついているようだ。一方でエリーザや永瀬は全然食いついておらず早くこの時間が過ぎないかなみたいな顔をしている。世の女子はキン肉マンにまるで興味がないという現実がよくわかる。


針毛園「この映画ではそう描かれているね。テレビ本編ではそんな描写全く無いけど」


ミキオ「まあ難しく考えず当時の有名人がいっぱい出てきて楽しいな、ぐらいで捉えておけばいいのではないだろうか。おそらく当時の子供たちもそんな感じだったと思う」


 有名人たちの似顔絵をおそらく無断で使ったコントが終わり、文字通りの暗雲が立ちこめ怪しげな宇宙船が来訪、中から黒マントの一団がキン肉マンたちの前に現れて展示していたチャンピオンベルトを奪っていった。


アルフォード「お、話が動いたな」


針毛園「これが本作の悪役、宇宙地下プロレス連盟のオクトパスドラゴンだ」


レズンザンド「凶悪な顔つきだな…」


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オクトパスドラゴン「このベルトは貰っていく。我々は宇宙地下プロレス連盟。何を隠そう俺がボスのオクトパスドラゴン3世だ」

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 そこでミート君の解説が入る。宇宙地下プロレス連盟とはメトロ星に拠点を置く宇宙一凶悪なプロレスの集団とのこと。オクトパスドラゴン3世の声は海原雄山でおなじみ大塚周夫さんだ。キン肉マンはオクトパスドラゴンに「少々のお代さえ渡してくれればそんなもんどんぞどんぞ」と言ってベルトを売り渡そうとするが、そこに父親の真弓が怒ってキン肉マンに馬乗りになりボコボコに殴りながら言う。


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真弓「スグル! 歴代のチャンプが血と汗を流して守ってきたチャンピオンベルトになんちゅうこと言うんじゃこのバカタレめが〜!」


 それを見た中曽根康弘っぽい総理大臣が感心しながら言う。


総理大臣「日本のオヤジもあのくらい強くならなくては」

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永瀬「このシーンいる?」


針毛園「当時のチビッ子たちは大ウケよ」


 オクトパスドラゴンは油断したキン肉マンを空中に放り投げ、宇宙地下プロレス連盟の連中がそれに群がりリンチを加える。ナチグロンが「キン肉マンさんに何をする〜!」と突っかかっていくがオクトパスドラゴンに一蹴され、五分刈やキン骨マンらコメディリリーフの連中も戦いに加わっていき大乱闘となる。件の総理大臣まで「日本のために私は戦う!」とハチマキをして参戦するが、このアニメはなんでこんなに中曽根さんをイジるのだろう。


 やがて乱闘が終わるとキン肉マンひとりがボロボロになっていた。


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オクトパスドラゴン「どうしてもこのチャンピオンベルトが欲しかったら明日の12時までにメトロ星の我らが基地に来るがいい。(中略)もし来なければ!」


 オクトパスドラゴンが指を鳴らすと部下たちがマリに走り寄り、当て身を喰らわせてマリを拉致する。


キン肉マン「ま、マリしゃん!!」


オクトパスドラゴン「チャンピオンベルトを頂くのはもちろんのこと、12時を1秒でも過ぎればこの娘はギラザウルスのエサになるのだ!」

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 敵の宇宙船に追いすがるが力尽きて地上に堕ちるキン肉マン。既に満身創痍なのだ。真弓大王と王妃が駆け寄り救急車を呼ぼうとする。キン肉マンは両親が結構過保護なのである。



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キン肉マン「誰が救急車を呼べと言った…」


真弓「まさかスグル、このままメトロ星とやらに行く気では」


キン肉マン「フフッ、そのまさかだ」


テリーマン「キン肉マン、一人で行かせはしないぜ」

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 テリーマンがVサインをしながら現れ、それに続いてロビンマスクら正義超人もゆったりと現れる。おなじみアイドル超人である。


エリーザ「また珍妙なのが現れたな」


針毛園「これがかの有名なアイドル超人だ。左からテリーマン、ロビンマスク、ブロッケンJr.、ウォーズマン、ラーメンマン、リキシマン」


 ついに登場した我らがヒーロー、アイドル超人軍団。果たして彼らは宇宙地下プロレス連盟に勝てるのか。女子たちは最後までこの映画に興味を持てるのか。様々な謎を孕みつつ次回へ続く。

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