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第133話 ミキオ対ミキオの決闘(中編)

 魔導十指の定例会でやんわりと注意を受けるおれ、ハイエストサモナーこと辻村三樹夫。なんと芸能ゴシップかわら版におれとエリーザ、そしておれとクインシーが密会していたというスキャンダル記事が載ったのだ。だがおれにはアリバイがあり身に覚えがない。真相を解明するためにおれは3大プリンセスを呼び寄せ釈明に追われていた。




 場面変わってここは南方大陸イトイガ国ノーコドマル市のはずれにある豪邸。偽装されているがここは稀代の錬金術師ノウ博士ことマレンドレム・ノウの研究施設なのだ。ノウ博士は破滅結社の協力者であり、邸内では怪しげな機械を操り助手たちがせわしげに働いていた。


ノウ博士「ご苦労だったでや、ミキオ」


もうひとりのミキオ「ああ」


 研究施設内に立つ颯爽たるシルエット、誰あろう彼こそは床屋で盗んだ辻村三樹夫の髪の毛から錬金術によって生み出された人造人間(ホムンクルス)、もうひとりの辻村三樹夫なのだ。白い召喚士コートやハーフパンツ、結った長髪などすべてが辻村三樹夫そのものだが、眼鏡はややつり上がったタイプのものをかけていた。


もうひとりのミキオ「王女たちをかどわかし芸能記者たちに目撃させ、やつの醜聞を広める。おれにとっては造作もないことだ」


ノウ博士「にょほほほほ。さすがはあのハャーエストサモナーと同じ細胞から作られた存在よ。おみゃーこそゼウスの子たるミキオ・ツジムラその者だで! 中央大陸でのさばる同じ顔同じ名前の個体を倒し、おみゃーこそがこの地上で唯一無二のハャーエストサモナーになり代わるのだ!」


もうひとりのミキオ「わかっている。次は何をすればいい」


ノウ博士「銀行に行ってよ、可能限度額まで個人融資を受けて来てちょーよ。おそらくヤツの地位なら億はいける。そのカネで目立つように繁華街でバッチリ豪遊したってちょ。借金したカネで豪遊、このスキャンダルが広まれば一気にヤツの名誉は失墜するがや! おりゃあ前回同様パパラッチたちに声をかけておくでね」


ミキオ「そうはいかんぞ」


フレンダ「話は全部聞かせてもらいましたの」


 話を遮るかのように研究施設に突如現れたのはおれこと辻村三樹夫、それに3人の王女たちだ。


ノウ博士「ぬ、おみゃーら! なぜここがわかったがや!」


クインシー「ミキオお兄さまのいきつけの床屋さんに訊いたら先月髪の毛をもらっていった怪しい業者がいたことがわかった。その情報からミキオお兄さまのホムンクルスを作った者がいるってことは読めたわ。古来、ホムンクルスと言えば髪の毛から作るものですもんね。あとは錬金術師をリストアップして上から順に訪問しただけよ」


エリーザ「まさか1発目で大当たりとは思わなかったがな。ホムンクルスの製造はどの国でも違法だぞ。覚悟するんだな」


ミキオ「おれを敵に回すのなら屋敷全体に魔法障壁をはっておくべきだったな」


ノウ博士「そうきゃ、逆召喚…さすがはハャーエストサモナー! だが貴様もここまでだでや、ここに貴様と同じ能力を持ったもうひとりのミキオ・ツジムラがおるでよ!」


もうひとりのミキオ「そういうことだ。おれの相手はこのおれだ」


クインシー「見てお姉さまがた、本当にミキオお兄さまそっくり。ちょっと眼鏡の形が違うくらい」


エリーザ「おとといの夜に我らの前に現れたのはミキオではなく、もうひとりのミキオというわけか」


フレンダ「なんてややこしい…」


もうひとりのミキオ「ここでおれたちが戦ったらいらぬ犠牲者が出る。表へ出ろ」


 おれたち全員は研究施設の広い中庭に出た。離れた場所でもうひとりのおれと対峙しおれは当惑していた。確かにこいつ見た目はおれにそっくりなようだが、能力まで同じというのは本当だろうか? そもそも召喚魔法の要であるサモンカードはゼウスから与えられた神々の装具(アーティファクト)、ホムンクルスのこいつが持っているとは思えないが…。


もうひとりのミキオ「どうした? おれ自身には手が出せないということか? ならばこちらから行くぞ! ふるえΩ(オメガ)、爆炎魔破!」


 ボウゥッ!!!! もうひとりのおれは左人差し指に付けた指輪から強力な白い火炎のビームを放射した。どうやら炎系の魔法を操るアイテムのようだ。


ミキオ「マジックボックスオープン」


 おれは少しも慌てず空中に円を描き、中の空間に敵の放つ火炎をすべて入れ込んだ。


もうひとりのミキオ「くっ」


ノウ博士「う、うぬれ! そんな技もあるんかよ!」


ミキオ「お前もハイエストサモナーを名乗るなら召喚魔獣で対決といこうじゃないか。エル・ビドォ・シン・レグレム、我が意に応えここに出でよ、汝、アシッドスライム!」


 おれはサモンカードの魔法陣からアシッドスライムを放った。強酸性のスライムであり触れれば鋼鉄の武器をも溶かす強力なモンスターだ。カードの魔法陣の中から現れたアシッドスライムはすぐさまもうひとりのおれに襲いかかっていった。


もうひとりのミキオ「ザンザ・レッタ・グルフ・セベス! デリダスの名を刻み、かの者を召喚せよ! その名、ソープバブルスライム!」


 もうひとりのおれは魔法陣の刻まれた腕輪(バングル)に聞いたこともない呪文を詠唱し石鹸の泡でできたスライム、ソープバブルスライムを召喚させた。なるほど、サモンカードではなくあの腕輪が召喚魔法のためのアイテムなのか。おそらく炎の指輪同様に破滅結社に伝わるものだろう。


 バシャーッ!!! 酸性のアシッドスライムとアルカリ性のソープバブルスライムがぶつかり、中和されて両者相討ちとなった。


ミキオ「やるな…」


もうひとりのミキオ「貴様こそな」


 サモンカードはないまでも他のアイテムを使用することである程度の召喚魔法は使えるようだ。しかも当意即妙に酸のスライムに対してアルカリ性のスライムをぶつけるとはなかなか味な真似をする。知能もおれと同程度というわけか。


ミキオ「だが高等魔法である部分召喚はできまい。お前の血液6分の1を召喚し、失血によって昏倒させてやる。エル・ビドォ・シン・レグレム、ここに出でよ、汝、辻む…」


 詠唱の途中でおれはハッと言葉を呑んだ。こいつは言わばおれの複製人間(クローン)。おれと姿かたちの同じ、名前も一緒のこいつをどうやって召喚魔法にかけるというのか。おれの名前をコールして詠唱すればあいつと同時におれの血液も召喚されてしまう。名前を唱えず顔のイメージだけで召喚魔法のショートカットを使ってもやはり同様だろう。何せ同じ顔なのだから。


ミキオ「…いや、召喚キャンセルだ…」


ノウ博士「にょほほほほ! 罠にかかったなハャーエストサモナー! 貴様自身が相手なら得意の部分召喚も使えみゃーて! これがこのホムンクルス作戦の要諦なんよ!」


 狂ったように哄笑するノウ博士。なんだこいつは。はっきり言っておれにはまだ万物分断剣や魔人ガーラ、ブラックカードなどの切り札があるのでいくらおれの複製とは言えまったく負ける気はしないのだ。こんな施設を任されているからには破滅結社の幹部クラスではあるんだろうが、こんなことで嬉しがってるからにはよほど小物なんだろう。目の前にいるもうひとりのおれはおれと同じ知能、同じメンタリティの筈なのになんでこんな小物に従ってるんだろうか。


ミキオ「おい、おれ」


もうひとりのミキオ「なんだ、おれ」


ミキオ「なぜおれと戦う。おれがおれと戦う理由があるのか」


もうひとりのミキオ「言うまでもあるまい。貴様を倒し、おれが唯一無二のハイエストサモナー、ツジムラミキオになり替わるのだ。ハイエストサモナーは二人もいらない。貴様を倒さなければおれは前に進めない」


ミキオ「なるほどな。わかった、いいだろう。場所を変えてサシで話をつけよう」



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