第128話 悶絶!映画スーパーヒーロー大戦観賞会(第三部)
エリーザ、アルフォード姉弟の末の妹プティに英雄譚の素晴らしさを教えるためという理由でなぜか日本に来て皆で一緒に映画“スーパーヒーロー大戦”を鑑賞することになったおれたち。映画はヒーロー同士の潰し合いという異常事態となり、ストーリー展開は混迷を極めるのだった。
そして、物語はこの映画の最大の問題点にさしかかる。鍵を握るのは既にディケイドに倒されたアカレンジャーだと言うことになり、4人は電車型のタイムマシンに乗って1976年の冬に跳んで生前のアカレンジャーに会いに行く。アカレンジャーとは最初の戦隊である“秘密戦隊ゴレンジャー”のリーダーであり戦隊側の長老格のような存在だ。1976年はゴレンジャーの放映年である。
エリーザ「タイムマシンがあるなら何もそんな昔に行かなくても、その赤レンジャーがやられる直前の日に行けばいいのではないのか?」
ミキオ「何か理由があるんじゃないか、この年この日でなければならない理由が」
雷田菊「君たち、そんな低いハードルでつまづいているとこの先楽しめなくなるよ」
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アカレンジャー「話はわかった。我々は人類の自由のために戦う仲間だ、その思いはライダーも同じ筈。今こそ力を合わせ悪にとどめを刺すのだ! 私を未来に連れて行ってくれ!」
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エリーザ「おお、赤レンジャーはさすが話が早い」
アカレンジャーはすぐに事情を理解し、4人は彼を連れて2012年というこの映画の舞台になった時代に戻ってくる。電車型のタイムマシンがなぜか採石場のようなところに到着するとアカレンジャーが降り、大戦隊ゴーグルファイブや電磁戦隊メガレンジャーなどの後輩戦隊たちが彼を出迎える。全員なぜかフル武装で戦う気満々だ。
アルフォード「??? 彼らは何をしに来たんだ?」
プティ「あっ、ライダーも来た」
バイクに乗ってその場に現れたライダーたち。その先頭にはなぜか映画冒頭で栄光の七人ライダーと共にゴーカイレッドに倒され消えた筈の1号ライダーがいる。
ミキオ「えっ、なんで1号が?」
おれが疑問に思う間もなく、1976年から来たアカレンジャーは戦隊を率いてライダーたちと戦い始めた。
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アカレンジャー「来たな、仮面ライダー1号」
1号ライダー「待たせたな、アカレンジャー!」
アカレンジャー「長きに渡るライバル関係に決着をつける時が来たのだ!」
1号ライダー「仮面ライダーとスーパー戦隊は共存できないっ!」
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エリーザ「いやおかしいだろう! この赤いのはさっきライダーも仲間だって言ってたじゃないか!」
永瀬「情緒どうなってるんですか、この人」
ついに激突する両陣営。砂塵を巻き上げ総員でぶつかり合う。先頭はやはりアカレンジャーと1号ライダーだ。
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アカレンジャー「トイヤッ!」
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アカレンジャーが棒を振り回すと、仮面ライダークウガや仮面ライダーキバが倒されて消えていく。彼らも本来ならばオダギリジョーや瀬戸康史が変身している筈であり、ああもあっさり倒されると番組を見ていた世代としてはどうにも辛い。基本的にこの映画は過去作品のファンに対する配慮に欠ける。
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1号ライダー「ライダーキック!」
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1号ライダーもキックなどでばんばんメガレンジャーやデカレンジャーたちを倒し、消していく。蹴られると消えるという仕組みがよくわからないが、とうとう採石場にはアカレンジャーと1号ライダーのみとなった。ここで彼らは対決する中で意外なことを言い出す。
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アカレンジャー「俺はアカレンジャーではない」
1号ライダー「俺も1号ではない」
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全員「えー!!!!」
変身を解除する両者。なんとアカレンジャーはゴーカイレッド、1号ライダーはディケイドの変身だったのだ。
ミキオ「あのピンク色のライダーは1号ライダーにも変身できるんですか」
雷田菊「まあこの映画限定の設定だけどね」
エリーザ「ダメだろう! それを言い出すと今後何でもアリになるぞ!」
アルフォード「いったいなんのためにこんな芝居を…」
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ゴーカイレッド「スーパー戦隊の力を結集させたのは、ライダーどもを一網打尽にするためだ」
ディケイド「それはこっちのセリフだ。一度にやった方が手っ取り早いからな」
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アルフォード「??? ちょっと待ってくれ、あのアカレンジャーは過去から連れてきたのでは?」
雷田菊「ゴーカイレッドが過去に先回りして化けていたんだろうね」
ミキオ「そのゴーカイレッドは時間移動できるんですね」
雷田菊「まあ聞いたことないけど、それもこの映画限定の設定なんだろうね」
アルフォード「酷い、それは酷い」
エリーザ「すでに何でもアリじゃないか!」
ミキオ「ゴーカイレッドはタイムマシンがあの時間あの場所に来ることをなぜか知ってて待ち伏せしてたか、あるいはあのタイムマシンの車掌とグルだったか、あるいはたまたま異常な偶然で同じ時間同じ場所にいたということになりますが…」
雷田菊「正直、そこを詰められると俺も困る。この映画はそういうもんだと思って割り切ってもらうしかないね」
ミキオ「ここを割り切るとだいぶ評点下がりますが…」
山田裕貴と泥棒ライダーがゴーカイレッドと仮面ライダーディケイドに斬られて消え、そのゴーカイレッドとディケイドも相討ちになった。とその時、待っていたかのように現れる大ショッカーと大ザンギャック(戦隊側の悪の組織)の面々。先頭に立つドクトルGもシルバも過去作に登場した敵キャラで、この作品では他の敵キャラ同様に理由もなく蘇っている。この映画のドクトルG役はドラマなどでよく見る俳優の奥田達士だ。ノリノリで演じておられるが特に悪役メイクとかでもなく普通のおじさん顔のままなのが惜しい。
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ドクトルG「よくやったぞゴーカイレッド、仮面ラーイダディケイド! 貴様らは我々の手の中で踊らされていたに過ぎん」
シルバ「ライダーと戦隊のどちらかしか生き残れないという嘘にまんまと騙されたのだ。戦隊粒子反応、ライダー粒子反応、ともにゼロ!」
ドクトルG「戦隊とライダーが全滅した今こそ、ビッグマシン計画を実行する時!」
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そう言うシルバを海賊戦隊の緑が物陰からのぞいている。
ミキオ「ひとり戦隊が生きていますが…」
雷田菊「そうなんだよね」
エリーザ「おい! 脚本の穴だろ! なんだこの映画は!」
あまりに雑な展開にちょっと見る気が失せてきたが、ここで相討ちになって倒れた筈のゴーカイレッドと仮面ライダーディケイドが立ち上がる。
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ゴーカイレッド「手の中で踊らされていたのはお前らの方だ」
ディケイド「お前らが計画を立ててライダーと戦隊を潰そうとしていることを知った俺たちは自ら先頭に立つことにした」
ゴーカイレッド「手っ取り早く実行させた方がどんな計画かわかるからな」
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プティ「え、え、じゃあこの人たち最初からこのために演じてたってこと…?」
アルフォード「正義のヒーローを演じる悪のヒーローを演じていた正義のヒーローというわけか」
ミキオ「急展開過ぎる。ハンドルの切り方がエグい」
自ら泥をかぶってまでゴーカイレッドとディケイドが突き止めたその計画とはふたつの悪の組織が協力して超巨大ロボ“ビッグマシン”を完成させることだった。ゴーカイレッドとディケイドがニヤリと笑うと、どこからか光のオーロラが現れその中から死んだ筈の本物の1号ライダーやアカレンジャー、それに山田裕貴や課金ライダーのオーズたちが駆け抜けてきた。
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ドクトルG「…お前たちは死んだのではなかったのか!」
1号ライダー「全ては士(つかさ=ディケイド)とマーベラス(=ゴーカイレッド)の立てた作戦だったのだ」
アカレンジャー「私たちは消滅したかのように見せて時空の狭間で待っていたのだ!」
オーズ「俺たちスーパーヒーローの手でお前たちにとどめを刺すために!」
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プティ「そうだったんだ、すごい!!」
永瀬「自分でスーパーヒーローって言うの凄いですね、狩野英孝的な」
エリーザ「…あの二人で全てのヒーローを倒す力があるのなら、その力で敵を倒した方が早いのでは?」
アルフォード「いや姉上、この計略は敵の陰謀を突き止めるためだったと言っているぞ」
ミキオ「敵を全員倒してしまえば陰謀もへったくれもない気がするが…」
激論を交わしつつ次回、完結編へと続く。