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第124話 オーバーラン!異世界まんが道(第四部)

 日本の漫画をこよなく愛すシンハッタ大公国の君主ムーンオーカー大公に推薦されおれはとうとうこの世界で初の週刊漫画雑誌を監修することになった。天才ホーラ・イシやヒッシーなどの連載漫画も決まり、困難の末にやっと発行にこぎつけるのだった。




 翌月、ついに異世界ガターニア初の漫画雑誌『週刊マングダム』が刊行された。少年誌ではなく、グルメや恋愛、格闘技など様々なジャンルの作品を網羅した総合エンタメ漫画雑誌である。シンハッタ大公国のみならず連合王国やミカラム国、さらにオーガ=ナーガ帝国でも発売され、なんと各地で完売となり早々と増刷が決まったらしい。シンハッタは製紙産業も盛んなので地場産業の振興策としても一役買っているのだ。おれはその日、発売されたばかりの『週刊マングダム』を事務所のスタッフたちと回し読みしていた。


ザザ「おもしれーな、これが漫画か! まるで絵が動いてるみたいじゃねーか!」


シンノス「続きが気になりやすね!」


ガーラ「ヒッシー、君の漫画も面白いぞ。夫婦喧嘩のシーンはやや誇張が過ぎるがな」


ヒッシー「誇張でもないニャ…」


ミキオ「ヒッシーの漫画は漫画省内では意外と評判がいい。『ソラの大空』よりいいという人もいる」


ヒッシー「え!」


ザザ「スゲーな、お前もう漫画家の先生だな!」


ヒッシー「奥さんにバレたら怒られるニャ…」


永瀬「『KIN×DAN』もなかなか読ませますね。わたし一番好きかも」


ジャコ「ありがとうございます…」


 イセカイ☆ベリーキュート2期生のジャコも今日は週刊マングダムを受け取るために事務所に来ている。相変わらずアイドルらしからぬどんよりした子だが、自身の漫画が評判良いせいかちょっと表情が明るく見えなくもない。


永瀬「やくざのキンちゃんと刑事のダンが敵対しながらも次第に心惹かれあっていくところ、目が離せない!」


ザザ「そーか? あれちょっと絵が気持ち悪くねーか?」


ジャコ「…」


ミキオ「だがやはり一番人気は『ソラの大空』だな。16歳の少年が描いてるとはとても信じられないと評判だ」


ガーラ「うむ、少年物の王道という感じがするな。山奥に住む牙のある少年ソラが都会の少女と出会って不思議な冒険の旅に出る、と」


ヒッシー「…それってドラゴンボールの冒頭そっくりじゃニャい?」


ガーラ「ドラゴンボオル? 何だそれは」


ミキオ「まあ、その辺りは多少目をつぶってやろう。何せこのガターニアで初めての本格的連載漫画なんだから。これから物語が進むにつれ作者のオリジナリティーが出てくる筈だ」





 1週間後の地曜日、書店には週刊マングダムの第2号が並んだ。表紙はやはり『ソラの大空』の主人公ソラだ。相変わらずの売れ行きで大増刷となったがすぐに完売となったそうだ。


ザザ「ハハッ、今週号もおもしれーな! ヒッシーお前よく毎回生き伸びてんな!」


ミキオ「古谷三敏先生の『ダメおやじ』を彷彿とさせるな」


永瀬「当たり前のように50年前の漫画の話をされても…」


ミキオ「他の連載陣はどうだ?」


ガーラ「正直イマイチだな。グルメ漫画も格闘バトル物もどうにもトンパチで作者がノッてないのがよくわかる。やはり面白いのは『異世界かまきり夫婦』と『KIN×DAN』、それに『ソラの大空』だな」


ミキオ「お前、人造魔人のくせにいっぱしなことを…」


ヒッシー「その『ソラの大空』はどうだニャ?」


ガーラ「今週もいいぞ。8つ集めると何でも願いがかなうという仙人の位牌の存在が明かされた。これで物語のタテ軸が決まったな」


ヒッシー「…」


永瀬「…これ、いいの? 思いっきりパクリじゃないの?」


ミキオ「い、いや、これから独自の味が出てくるんだろう。かの藤子不二雄や石ノ森章太郎だって最初は手塚治虫のスタイルを模倣してたわけだし…」


ヒッシー「まあ異世界だから誰もパクリとは思わないだろうけどニャ」


永瀬「あんまり続くようなら意見した方がいいよ」


ミキオ「うーむ」




 翌週の地曜日、週刊マングダムの第3号が発売された。当然のように平積みになっているが表紙はなんとヒッシーの漫画『異世界かまきり夫婦』だ。アマンビー夫人がモデルとおぼしきキャラ“オニヨメ”が般若のような顔つきで蛮刀を振り回している。


ザザ「すげーなヒッシー! 今度は表紙絵じゃねーか! お前もう売れっ子だな!」


永瀬「ここまで奥さんのことを恐ろしく描いて大丈夫なの?」


ヒッシー「玄関にナイフでズタズタに切り裂かれた週刊マングダムが置いてあったニャ…」


ミキオ「ははは、冗談を。で今週の『ソラの大空』は?」


ガーラ「巻頭カラーではなくなったが、まあ面白いぞ。今週は競馬新聞ばかり読んでる眉毛の繋がった破天荒な警官が登場した」


ミキオ「…」


ヒッシー「違う漫画からパクりだしたニャ」


永瀬「辻村クン、そろそろガツッと言った方がいいんじゃない? 本人のためにもならないよ」


ミキオ「うーむ…」




 翌週の地曜日。発売された週刊マングダムの表紙は我らがアイドル“イセカイ☆ベリーキュート”の似顔絵だ。この世界にはまだ写真技術が生まれていないので似顔絵になるのだが、表紙と巻頭グラビアはメンバー全員が水着ではしゃいでる写実的なイラストだ。何か雑誌のカラーが一気に変わった気がする。


ザザ「今週もおもしれーぞ。ヒッシー、お前すっかり人気漫画家だな」


ヒッシー「実はドラマ版の魔法配信が決まったニャ」


永瀬「え! すごい!」


ミキオ「『異世界かまきり夫婦』は読者アンケートでも常に上位3位内に食い込んでるらしいぞ」


ザザ「ヒッシーにこんな才能があるとはな! 事務所にサイン色紙飾ろうぜ!」


ミキオ「で…今週の『ソラの大空』は?」


ガーラ「掲載順位はだいぶ下がったが、内容は悪くないぞ。今週は主人公のソラが眉毛つながりの警官と戦って勝ち、星座をかたどった伝説の鎧を手に入れた」


永瀬「聖闘士星矢だ」


ヒッシー「これはさすがに目に余るニャ」


ミキオ「なんとかせねばならんな…」

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