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第112話 下剋上!異世界アイドル戦国時代(第四部)

 おれたちがこの異世界ガターニアに作ったアイドルグループ“イセカイ☆ベリーキュート”の影響を受けてこの世界にアイドル戦国時代が幕開けた。イセキューの2期生オーディションを経て遂に開催となった三大大陸アイドルフェス当日、なんと2期生エースと目されていたワカナが失踪したと告げられたのだった。


ヒッシー「しっそお~!?!?」


ミキオ「…冗談と言ってくれ」


クロッサー「ほ、本当なんです。今朝うちの事務所にこんな鳩手紙が…」


 『痛みを知らないメンバーが嫌い。心を失くしたスタッフが嫌い。優しいアイドルが好き。バイバイ』


ミキオ「…完全に心病んでるじゃないか」


ヒッシー「どっかで見た構文だニャ」


ミキオ「グループ内でイジメがあったってわけじゃないよな?」


チズル「それは無いです! 最年長だし、むしろ敬意をもって接してました」


ヒッシー「ミキティ、得意の召喚魔法で呼んでみたら?」


ミキオ「うーん、この文面だともはや説得は難しそうだが…」


 おれが赤のサモンカードを取り出そうとしたその時、控え室のドアが開いて見慣れぬ少女が入ってきた。


カレン「すいませんマネージャー、あたしの靴が見当たらないんですけど」


 その少女を見た瞬間、おれたちは脳天に稲妻が墜ちたような衝撃を受けた。なんだこの天使は。とんでもない美少女じゃないか。キラキラ感が半端じゃない。星屑の海を渡る女神のようだ。うちのグループの衣装を着ているが、こんな子を入れた覚えはないぞ。


ヒッシー「え、えっ?!」


クロッサー「き、君は…」


カレン「? カレンです。2期生のカレン・トミックス」


ミキオ「カレン…ああ、あの垢抜けない感じの…」


カレン「言いかたw 昨日髪を切ってサッパリしました! アイドルっぽくなりましたか?」


 カレンの肩まであったボサボサの髪はつやつやのショートカットになっていた。舞台用のメイクも映えて、まだデビューもしてないのに一流アイドルみたいなオーラを醸し出している。これはもうガターニアの松田聖子だ。コイキングが一気にギャラドスに進化したような感覚だ。


ヒッシー「ミキティ! おれ今日からカレン推しだニャ!!」


 いやそんなことを宣言されても。おれは赤のサモンカードを胸ポケットにしまい込んだ。


ミキオ「とりあえず、もうワカナはいいな。去るものは追わず。2期生はカレンがエースでセンターだ」


クロッサー「そうですね、下手にエースがふたりいるよりはカレンひとりの方がインパクトあります」


カレン「えっ、エースですか、あたしが?!」


ミキオ「そうだ。君がこの三大大陸アイドルフェスの話題を全部かっさらってやれ。頼んだぞ」




 プロデューサーとしてやるべきことはやった。おれとヒッシーがフェスを観るため関係者席に向かっていると通路の向こうから他のアイドルグループが歩いてきた。プラチナゴールドの衣装を纏った派手な7人組だ。となるとこれがクロッサー氏の言ってたPGG(プラチナ・ガール・ジェネレーション)て子らかな。この派手で無個性な感じはK-POPグループみたいだな…ん? 先頭の子、どこかで見た顔だな…?


ヒッシー「み、ミキティ、あの子…」


 化粧と髪型でよくわからなかったが、よく見ると先頭の子は失踪した筈のワカナじゃないか! えっなんだこれは?! どういう状況だ?!


ミキオ「き、君はワカナ…」


ワカナ「はじめまして…」


ミキオ「いや、はじめましてじゃないだろう! 君、何やってるんだ!」


ネーギン「お久しぶり、ツジムラ子爵にヒッシー氏。いや今はツジムラ伯爵でござぁましたかな。ウチのタレントに何か御用で?」


 横から口を挟んできた変なファッションセンスのナマズ髭の中年男はかつてイセキューが対バンライブを行った“黄金令嬢”のマネージャー、ネーギン芸能社のヤワーダ・ネーギンだ。


ヒッシー「ウチのタレントってなんだニャ!」


ミキオ「このグループ、あんたの事務所なのか。なぜうちの2期生がそっちのグループにいる。引き抜いたのか?」


ヒッシー「あり得ない! 信義則違反だニャ!」


ネーギン「おひょひょひょ、何のことやらわかりませんな。プロデューサー!」


 PGG7人の奥からどんよりした空気を纏いながらのっそり出てきたプロデューサーは予想通りよく知った顔だ。ただしミラーサングラスをしているし、おれが知ってる頃より倍は太っている。


マックスM「どうも。PGGのプロデューサーのマックスMです」


ミキオ「いや、マルコ! あんたも大概しつこいな!」


 マックスMと名乗った女はやはり紛れもなく元イセキューメンバー、元黄金令嬢メンバーのマルコ・ダイズセンだ。イセキューを辞めて作った黄金令嬢が当人以外全員脱退し解散を余儀なくされ、肥えまくってアイドルとしては成立しなくなったのだろう。完全に裏方に回って今度はPGGというアイドルグループを立ち上げ、そのプロデューサーになったってわけだ。彼女の父親は広告代理店の社長であり、資金やコネには困らない。


マックスM「さて誰のことやら。そろそろ我々PGGの出番です。そちらのブサイクアイドルとの違いを見せつけてやりますわよ…ぬふふふ」


 すっかり悪役の似合う容姿になったマルコとネーギン氏、PGGの7人は去っていった。ワカナもどうせ大金で引き抜いたのだろう。よほど我々が憎いと見えるが、まあマルコなんか相手にしてる場合じゃない。とにかくこの三大大陸アイドルフェスという大舞台で2期生のお披露目を成功させねば。おれとヒッシーは2期生を入れた新生イセカイ☆ベリーキュートを見守るため、関係者席に向かった。

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