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パンゲアランド  作者: 空想士
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第3話 火の利用

生きて行くためには火が不可欠です。

主人公は、生まれて初めて火打石を使います。

 地図には「『万物進化の種』を早く植えること」と書かれてあった。


「早く生命の進化を進めろってことか!」


“つまり、この世界- たぶん地球じゃないのだろう- には、俺以外には、誰もこの惑星には住んでいないということだ。

だから、俺がこの世界の進化を始めなければならないということなのだろう”


キヨヒラは、『万物進化の種』を島の南側に植えることにした。

波打ち際から10メートルほどのところに。

たった1個しかない『万物進化の種』をていねいに植えた。


その日は、バナナとココナッツの水だけで過ごし、夕食バナナのあとで暇つぶしと運動をかねてシャドートレーニングを1時間ほどして、陽が沈んでから寝た。

スマホも使えず、ゲームもできないので至って健康的な一日だった。



 バサバサ――ッ


 3日目の朝は、何かの音で目が覚めた。

音がした方- 西を見ると、3()0()()()()()ほど先にあるココナッツ木の下に何やら褐色のものが落ちている。


太陽はもう水平線から顔を出していて、パンの木の葉の間から眩しい光が刺していた。

西に植えたココヤシの木の方を見ると、やっぱり2()0()()()()()ほど離れていて、北のバナナの木も2()0()()()()()ほどの距離のところに青々とした葉を見せていた。


ココヤシの木のところに行って見る。

歩数で測ると、やはり昨日とくらべて距離が2倍になっている。

初日の晩に島は倍の大きさになり、二日目の晩にはその倍になった。


「そうだ、『万物進化の種』は...」


島の南側に種を植えたところには、白い木が生えていた。

二つの枝に分かれ、それぞれの枝の先にパックリと割れた実の殻らしいものが下がっていた。


「もう、実が成って、夜のうちに種が蒔かれたってことか!」

万物進化の木の下を見たが、目に見えるモノは何もなかった。


万物進化の木も、キヨヒラが寝床にしている島の中心から3()0()()()()()ほどの距離のところに生えていた。


あらためて、歩数で測ってみると、島の大きさは100メートルになっていた。

何が島を拡大しているのかわからない。



        3日目の島の図

      挿絵(By みてみん)



「プレートテクトニクスなんかは関係ないよな... 火山島でもないし」

独りごとを言いながら、ココヤシの木のところに行く。


落ちていたのは、枯れたココナッツの葉だった。

枯れ葉の長さは1メートル以上あり、よく乾燥している。


「これ、燃やせるんじゃないか?」

枯葉の根本をもって、よく乾燥しているのを見てふと閃いた。


山刀を持って来て、葉の芯の部分だけを残し、羽状の葉をそぎ落とす。

それから、芯の半分から先のあまりに細い部分は切り落とし、残った芯の先端を尖らせ、串のようにする。


それが終わるとパンの実を1個とって来て、折り畳みナイフで黄褐色の皮を剥く。

実は白く、パイナップルみたいだった。皮を剝き終えると、先ほど作ったココナッツの葉の芯で真ん中を差す。


マニュアルにしたがって火石セットで火を起こし、ココナッツの羽状の葉をくべて焚き火を作り、串に刺したパンの実を焼いた。

今はかまども金網もないので、手でもって焼くしかない。手ごろな枝があれば、Y字型の支えを作ることもできるのだが、バナナやココヤシの木は使い物にならないし、パンの木も青くて使えそうにない。

近くに森でもあれば、枝とか葉っぱとかを使って熱さしのぎの小屋とか、いろいろなモノを作ることができるのだが。


パンの実から石焼き芋の香りがして来た。

早く食べたい気持ちを抑えて、片面だけが焼けすぎないように適当に回しながら20分ほど焼く。


「これくらい焼いたらだいじょうぶだろ」

パンの実を鍋の中にいれて串を抜き、料理ナイフで実を削いで、ナイフで突き刺して食べる。


「あちっ!」


まだかなり熱いが、味はコンビニで売られているパンのようにフワフワとした食感と、じゃがいもに似ている風味で、少し酸味が感じられるが、けっこういける味だ。


「これに塩味つけたら、毎日食べられそうだな」


たらふくパンの実を食べ、ココナッツの水を飲んでから、万物進化の木の方を見た。

万物進化の実は夜の間に熟し、実の殻の中にあった種が散らばったらしい。


「何の種が蒔かれたか、だな!」


ハッと思いつき、リュックのポケットから『万物進化の種』の袋をとりだして見た。

昨日、種を植える前に見た時、『万物進化の種』の袋には白く太い幹みたいなのが下に描かれていて、そこから大きな枝が左右に分かれていて、その大きな枝はさらに細かく分かれていいており、最初の白い幹以外は線で描かれていたのが、今日は系統樹で最初に二つに枝分かれした部分が白くなっていた。

系統樹の左側の枝には『真正細菌』と種の名前が書かれていて、右の枝はさらに二つに分かれ、『古細菌』と『真核生物』とそれぞれ書かれていた。


「菌じゃ、見えないはずだよな...」


無害だと思ったが、万物進化の木からバラ撒かれた“目に見えない菌”がそこらにウジャウジャいると思うとぞっとした。


生物は海で生まれたというから、ここは地球じゃないだろうが、波打ち際に行ってみた。

透き通った水が寄せては引いていくが、当然、何もない。

波打ち際には砂浜はなく、ただ黒い土が傾斜をもって海の中に潜っているだけだ。

初日に、ためにしどこまで歩けるか海に入ってみたが、5メートルも行かないうちに急に深くなったのでそれ以上は探索しなかった。



 学校で習った生物の系統と進化では、分類学的に『バクテリア』、『古細菌 (アーキア)』、『真核生物』の3つの上界からなり、バクテリア(真正細菌)は、酸素発生型光合成を行うシアノバクテリアなどを生み出し、地球に大変化をもたらした。

 古細菌はスピロヘータなどグラム陰性菌に進化し、真核生物は、さらに複雑・高度に進化し、人類をふくむ現在の動物にまで進化した。

 この『バクテリア』、『古細菌 (アーキア)』、『真核生物』は、全生物界を三分する生物の主要な系統(ドメイン)だとされている。



        系統樹

      挿絵(By みてみん)



「つまり、24億4千年万年前にシアノバクテリアがバクテリアから進化し、プロテオバクテリアを取り込んだ細胞(始原真核生物)が、約10億年前にシアノバクテリアを取り込み、シアノバクテリアが葉緑体へと変化した。それが、藻類や植物へと進化をした。


そして、5億4千万年前に、カンブリア爆発と言われる驚異的に多くの新しい生物が生まれた。これらは、以前にはほとんど見られなかった、複雑な身体や硬い殻・骨格をもつ生物がたくさん生まれ、その後の地球における生物の進化を方向づけた。


その後、4億8千万年前に水中に住んでいたムカデのような姿の甲殻類の仲間が海から陸上へ進出し、昆虫として進化を始め、約3億8000万年には両生類が海から陸に上がり、陸上生活を始め、両生類から羊膜類(羊膜と卵殻をもつ四肢動物)に進化し、羊膜類からは爬虫類と鳥類の共通の祖先である双弓類(そうきゅうるい)とすべての哺乳類の共通の祖先である単弓類(たんきゅうるい)も生まれ、が進化した...」

 

「地球では、25億年という気の遠くなるような時間をかけて環境を変え、人類などの高等生物を生み出したわけだけど、この世界は地球ではないけど、生物は何もいないみたいだし、種から生えたパンの木、ココヤシの木、バナナの木、それにあの奇妙な万物進化の木以外は、草も木もない。


地球の歴史では、シアノバクテリアによって27億年前に光合成によって酸素が作られ始めたのだけど、この世界にはすでに酸素はある。

万物進化の木は、明日、いや明後日、いや今後、どんな(しゅ)のタネを作り出し、蒔くのだろう...」


 ............ 

 ............ 

 ............ 



 翌朝―


パンの木の葉の間から漏れる眩しい光で目を覚まし、10メートルほどのところにある万物進化の木の方を見ると、昨日は三つだった枝が、さらに多く枝分かれしていて、それぞれの枝の先にパックリと割れた実の殻が数えきれないほどぶら下がっていた!


「えええ―――――???」


飛び起きると、万物進化の木のずーっと後ろに波が打ち寄せているのが見えた。


東に植えたパンの木は、50メートルほどのところにある。

北を見ると、バナナの木はパンの木よりずっと遠くにあるのがわかった。

西に植えたココヤシの木もかなり離れている。


「島が、メッチャ大きくなってるじゃん?!」


周囲を見渡しながらつぶやいた。


そのキヨヒラの目に、バナナの木の根本あたりに何やら動いているモノが見えた。



生物進化と分類学については、まだはっきりしてないところもありますが、この作品では都合で上述の進化系統を使っています。

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