表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/76

第07話 イセカイへの導き



「とりあえず、犠牲者が出なくて良かったわ」

「あっ、お姉さん! ありがとうございます! 私、ちゃんと倒せました!」


 剣からもらった力で怪物を倒し、眩しい笑顔で話すマルー。そんな彼女に近付いた女性は、マルーの肩に手を置いた。


「やっと見つけたわ。新しい五大戦士」

「――そうよマルー! さっきまでの格好、戦士みたいだったわ! 一体どういうことなの?」

「えっと……」


 迫ってくる凛の視線を避けるように、マルーは女性に向けて口を開く。


「あの、フェニックスに言われたんですけど、世界が滅んじゃうって本当なんですか?」

「は? 世界が」

「滅んじゃうですって!?」

「どういうことー?」


 マルーは三人に、フェニックスに言われて引き受けた内容について話す……。


「世界を救う為に戦士になってくれって……すんげえ事引き受けたな」

「だって助ける為にはどうしてもあの剣の力が必要で……あれ?! フェニックスソードがない!」

「ここにあるわ」


 先ほどマルーが投げ捨てた剣は、女性が持つ鞘に収められていた。


「そういえば転身する前はあの剣、重くて持ち上げられなかったや」

「当然よ。この剣は、五大戦士に選ばれてなくちゃ重くて使えないもの」

「へえ! そうなんですね!」

「おいおい。この人さらりとすげえ事言ったぞ」


 感心しているマルーの横で健が口を開く。


「すごい事って?」

「あの人は、五大戦士? に選ばれているからあの剣が使えるんだろ? つまりあの人も世界を護る人って訳だ」

「だったらおかしいわよ! こんなにすごい人がいるのにどうして同じフェニックスソードにマルーは選ばれたの?」

「そういえばそっか!」

「どうしてなんですかー?」

「……運命だから、としか言いようがないわね」

「運命?」

「何だそれ」

「どういうことよ」

「面白そーう」


 四人から注目を浴びる女性。少し黙り、それから口を開く。


「私達が住む世界“ローブン”が「影」という存在に滅ぼされようとしている――そんなお告げが私のもとに届いたの。私は当然、私を含めた前の五大戦士が戦うのだと思っていたわ。でもお告げは違った。五大戦士はアースからやって来るって――」

「アースってもしかして……地球っていう意味の、あのearth(アース)?」

「やっぱり! あなた達の世界はアースって言うのね!」


 言った女性が急に距離を詰めてきた。目をらんらんと輝かせるその人からマルー達の身が思わずたじろぐ。これを察したらしい彼女はさっと姿勢を正しそれから一つ咳き込んだ。


「そう。そのアースに一体何があるのか――それを探る為に私はこの森にやって来たの」


 それで……と話を続ける女性がおもむろに背を向け、そして腕を回し始める。


「何をしているのかしら」

「体操じゃなーいー?」

「話の途中で体操するかよ」

「あっ! お姉さんの前で光が広がってる!」


 女性の腕で描く軌跡からやがて人を通すことが出来る程の光の円が現れる。


「この円の先は、私が住む世界――ローブンに繋がっているわ。マルー、話の続きはこの先でしましょう?」

「私……」

「おいマルー行くつもりか? 戻って来れるか分からねえんだぞ」

「マルーのそのブレスレットが、二つの世界を繋いでくれるわ。安心して」


 待っているわ、と言葉を残し女性は円の中に消えた。


 マルーは改めてブレスレットを見る。

 プレートの中心で輝く黄色の宝石。中心の奥深くで浮かぶ五つの線が、先の尖った星のように見える。そんなプレートの端と端を、細長い鎖でぐるりと繋いでいた。


 ひとしきり眺め終えたマルーは、女性が作り上げた円に視線を戻す。


「行くのか、マルー?」

「うん。行くよ」

「何よあんた。怖気づいたの?」

「ちげえよ。出来すぎた話だと思って……だからこそ、俺も行くぜ」

「健……!」

「もちろん、あたしも行くわよ!」

「僕も行くよ。世界のヒーロー……じゃなくて、ヒロインのお手伝いをするんだー」

「凛……タッツーも……」


 三人の決意を視線で受け取ったマルーは、女性が描いた円を見据えた。その先に目を凝らせば、晴れ渡る青が手招きしていると分かる。


「この先が“異世界”っつーことか」

「一体どんな世界なのかしら!」

「わくわくするねー」

「皆、行くよ……!」


 マルーを先頭に、四人はゆっくりと“異世界”へ足を踏み入れた。



   挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ