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第06話 目覚めの戦士・マルー



 胸の内を聞く為に置いたような手を、マルーはぐっと握り、息を吸い入れた。


「あの!」


 意を決しかけた言葉と視線がフェニックスにぶつかる。世界滅亡を防いでほしい――大切なお願い事ではあるが、この瞬間のマルーにとってそれはどうでもよかった。


「もし私が世界を救えるなら、……友達も、私を護ってくれた人も、……私に救える?」

「はい、貴女なら雑作もありません」


 当然であるように答えてみせたフェニックスに、マルーの心が固まった。


「なら、私、やるよ! 皆も世界も、全部全部私が救ってみせる!」


 決意の言葉を聞いたフェニックスが目を細める。


「なら、未来を担う新しい戦士に、私の力を貸しましょう」

「ありがとうフェニックス!」

「……私は、フェニックスソードを護るもの。貴女の名前をもう一度教えて――」

「私は丸山真理奈! マルーって呼んで!」

「……ではマルー。左手を上にかざして、叫んで――」

「叫ぶ? 何を?」


 問いかけたものの、フェニックスの姿は見えなくなっていた。

 言われた通りにするしかないと悟ったマルーは左手を挙げてみる。すると左手首から一番星のような光が放たれた。そのすぐ後に手首を光線が走り、やがて弾けた光から現れたのは銀のチェーンブレスレットだ。それを目にした瞬間のマルーがはっと口を開けた。


「私、分かった! どう叫べばいいのか!」


 掲げていた左手を、力強く胸の前に持ち込む!


「 転身! The Soldier ――っ!! 」


 叫んだマルーへ黄金の鳥――フェニックスが光の如く旋回! マルーの姿をみるみる変えてゆく!


「黄色の戦士・マルー! 転身完了っ! ……ってええっ!?」


 無彩色な景色から解き放たれたマルーの姿はうって変わってしまった。

 丈夫そうな生地のワンピースに装着された青銅色の鎧。胸を覆う部分には真っ赤な宝石を中心に広がるS字の紋様――羽を広げたフェニックスを思わせる――がある。ニーハイソックスに装着された膝当てと、両手のこては、鎧と同じ素材で青銅色、宝石も紋様もあった。

 このように自分の姿を確認しつつ、その場でターンやジャンプをする様は軽やかで、転身した本人は全く重さを気にしていないようだ。


「すごいすごい! ゲームの主人公になったみたい!」

「さあマルー、私をその手で掴んで――」

「あっ、いけない!」


 マルーは茂みに刺さっている“フェニックスソード”の柄を掴む。


「抜けてえええっとっととと――!」


 引き抜く勢いのまま後ろへバランスを崩しかけるマルー。今までビクともしなかった剣が洗練な刀身を現したのだ。


「貴女の想いが私を強くします。さあ、一緒に――!」


 柄を握り直したマルーの瞳に闘気が宿る。その闘気はマルーの叫びと脚にこもり、疾走させた!




「何だあれ。剣と鎧――?」


 大振りな剣を両手に駆け回る幼い女戦士。これを最初に見た健に向かって戦士は跳躍し剣を振り上げる。


「やあーっ!」

「は!? ま、マルー!?」


 驚く健のすぐ横でマルーの一太刀! 彼を掴んでいた太い根はきれいに切り落とされた。


「はぁ、助かったぜ。にしてもマルーその姿――」

「話は後でね!」


 マルーはすぐに向きを変え、凛と竜也を怪物の太い根から解放させる。


「よし! これで後は――」

「ちょっとあなた!」

「お姉さん――あっ! この剣を渡す約束だったのに!」

「いいえ。今はあなたが持っているべきだわ。私が魔法で敵の動きを止めるから、あなたはその剣の力を引き出してとどめを刺して!」


 女性は言い切る間もなく両手から雷撃を放射! 敵の全身を巡った雷撃が動きを鈍くする。


「さあ! あなたの番よ!」

「はい! ……ってどうすればいいんですか!?」

「あなたの想うままに剣を振りなさい! 想いがその剣を強くするのよ!」

「そっか! フェニックスも言ってた――」


 剣を肩まで持ち上げたマルーが駆けた! 前進するごとに刀身に鮮やかな輝きが宿る!


「 い っ け え え え え え え え っ! 」


 跳躍したマルーが剣を大きく振り下ろすと輝きはフェニックスに姿を変え、怪物を真っ二つに引き裂く!

 怪物の割れんばかりの悲鳴が、光と共に森中を駆け巡った……!




「すごいわマルーっ! マルーが、怪物をやっつけたわ!」

「凛? ……わっ!」


 突然の喝采と抱擁ほうように驚きながら、マルーは光と悲鳴の止んだ森を見回した。怪物の姿が消えていたのもそうだが、凛が全くの無傷であることも不思議でならなかった。


「……私、倒したの?」


 やがて一言告げたマルーに、そうよ! と凛が両肩に手を置いてきた。


「マルーが必殺技で消し飛ばしたのよ!」

「ああ、見たぜ。金色の鳥が一直線に敵へ向かっていった」

「かっこよかったよーマルー」

「健、タッツー……そっか。私、守れたんだね! 皆の事!」


 やったあ! と、剣を投げ捨てたマルーは三人を丸ごと抱き締めた。そのうちにマルーは元の姿に戻るのだった。



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