表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/76

第19話 vsぼうれい/3



 リンゴを除いたサイクロンズの乱撃に加え、エンの火魔法。少しずつだが確実に、ぼうれいの動きを鈍らせてゆく。しかしどのような攻撃も、今までの様な決定打には至らなかった。


「んああああこいつ! 弱点とかねえのかよ!」


 圧倒的な変化が見受けられない敵にしびれを切らしたのか、ボールが声を荒げる。


「なあマルー! こいつの弱点知らねえか!?」

「そんなの知らないよ! この世界の事もまだ分かってないのに――!」

「マルーちゃん! ここまでの事を思い出すんだ!」


 二人の会話を断ち切るようにエンの声が飛んできた。


「えっと――」


 マルーは一旦攻撃を止め、ぼうれいを見据えたまま後ろへ下がる。


「武器での攻撃に手応え無くて、吹き飛ばされちゃって、リンゴが魔法を使えるようになった――そういえばリンゴ、しきりに上に向けてホノオを放っていたような――!」


 マルーは顔を上げた勢いそのまま、ぼうれいの周囲を駆ける!


「ボール! リュウ! 上だよ! 上を狙って!」


 こう叫びながらリュウの傍を通り過ぎ、ボールに近付いてゆく。


「そうそう! あのぼうれいは間違いなく顔が弱点だ!」

「はい! リンゴとエンさんの魔法、顔か頭に当たった時が一番効いているみたいだったから、そうかなって!」

「そうだとしても、俺達でどうやって狙っていくんだ?」


 尋ねるボールの声で、マルーは来た道を戻る。彼女がボールに姿をみせた頃、リュウもこちらに走り寄って来た。


「ひっくり返せば良いんだよ! さっきみたいに!」

「さっきってなあ。あれは弱点を叩いたからだろ? そういう決定打が打てるのは今ん所リンゴだけだ。俺達にそういう力はねぇ」

「じゃあどうすれば良いの?」

「俺に聞くなし」

「はーい。僕達から近付けばどお? ジャンプするとかで」

「ジャンプで届くか?」

「踏み台があれば届くよー」

「どこにあるんだ?」

「……二人に踏み台作ってもらってー、僕が跳んで、槍を急所にどーん、みたいな?」

「それだーっ!」

「は? マルー正気か?」

「やってみなきゃ分からないよ! やろう!」


 意見を採用され、意気揚々と武器を揚げるリュウを背に、ボールがマルーに耳打ちする。


「あいつ、この中で一番体重あるぞ。俺達で支えるなんて出来んのか?」

「この中で一番力持ちなのはリュウだよ。だからここは気合で!」

「まじかよ……」


 威勢よく語ったマルーに難色を示すボール。だが、他にも案が思い付くかというと、そうではない。


「……ここはあいつの作戦に乗るか。仕方ねぇ」


 こうして、リュウの案を採用したマルーがボールと共に作り上げた踏み台の広さは、僅か手の平四枚分だった。


「リュウ! ちゃんとこの――私達の手の平に乗っかってね!」

「ほーい」

「ミスったら承知しねえぞ! 来い! リュウ!」

「いきまーす!」


 槍を中段に構えたリュウが、二人に向かって駆け出す。


「とう!」

「来たぞ!」


 跳んだリュウの足裏を、「せーの!」で受け止めた二人が放り上げた。

 ぐんぐんとぼうれいに迫るリュウは遂に頭上を捉える!


「やあーーーっ!」


 リュウの一喝。彼が投げた槍はぐさりと音を立てた。脳天を突かれたぼうれいは悲鳴を上げながら上体を揺らしている。


「いいぞ! 上手くいった!」

「やったね、リュウ!」


 踏み台役を終えてへたり込む二人に、攻撃を当てたリュウが戻って来た。


「二人共ありがとー。当ててこれたよー」

「ああ見たぜ。ばっちりだったな」

「さすがだねリュウ! ――あれ?」


 ねえ見て! とマルーが指を差す。指し示す方向には体勢を戻したぼうれいがいた。それはリュウが突き刺した槍を抜き取ると、そのままどこかへ放り投げてしまった!


「あっ、僕の槍! 待ってー!」

「おいリュウ離れるな!」


 槍を追いかけるリュウをボールが追おうとした瞬間、地面が鈍い音を立てた。ぼうれいが、一歩一歩踏み締めるように二人へ近付いてくる。


「さっきまで痛がっていたじゃねえかよ!」

「ここは逃げ――!」


 言いかけたマルーの近くに影が落ちる。見上げた先のぼうれいは、二人に向けて腕を振り上げている――!


「いけえっ!」


 そこに突如声と熱気が二人の間を縫った。熱気を放ったのはホノオ。ぼうれいに直撃し攻撃を止めさせた!


「何してるのよ! 最後まで油断しない!」

「リンゴ――!」

「言う通りだな。ぺしゃんこだったぜ今頃」

「ほらよそ見しない! あっち向きなさいよあっち!」


 言いながらリンゴがホノオを宿した杖を振り上げる! ホノオはぼうれいへ二人の視線を導くように飛んでゆく。


「あたしがあいつをひっくり返すわ。だから二人はとどめをお願い!」

「おっけい!」

「了解」


 マルーとボールが散る一方、リンゴはその場で再び杖に手をかざした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ