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第05話 そして初仕事へ



「わあ! 白い砂でいっぱいだよ!」


 ファトバルシティを発って随分経ち、望める景色はすっかり砂色に変わっていた。


「もう少しかしらね、目的地まで」


 横にやって来たリンゴにマルーは、そうだね! と答える。


「早く着かないかなあ? 初めての仕事、わくわくしちゃう!」

「あたしはちょっと心配。ちゃんと戦えるかしら?」

「大丈夫だよ! 皆で力を合わせれば!」

「と言ってもなあ」


 と、女子二人に割って入るように呟いたボールが、リンゴを見て顔をしかめる。


「良かった! ボール元気になったんだね!」

「おう。それはそれとして、お前あの時もらった武器でどう戦うんだ?」

「どうって……決まっているじゃない。魔法で戦うのよ」

「それ、出せる保証あんのか?」

「あるわよ! きっと……多分……」

「多分じゃねえだろ。もし魔法出せなかったらお前はっきり言って“お荷物”だぞ」

「お、お荷物ですって!?」

「大丈夫だよリンゴ! 出せない間は、振り回したり叩いたりすれば!」

「それのどこが魔法使いなんだし」


 淡々と反論するボールに向かって、リンゴは顔を真っ赤にし、今にも噛みつきそうだ。ぴんぽんぱーん――と、拍子を抜くようなチャイムが鳴り響いたのもこの時だった。この後すぐに、ほいほい皆さーん、と、これまた拍子を抜かすほど間延びしたリュウならではの声が三人に注がれる。


「間もなく、目的地に到着しまーす。揺れるかもしれないので、手すりにつかまっていて下さーい」

「お、もうすぐか」


 せいぜい頑張りな、とボールがマルーとリンゴの元を去ってゆく――この場の炎上はどうやら避けられたようだ。


「とにかく凛、頑張ろっ! 健の言葉は気にしないでさ!」

「……そうね。ありがとう、マルー」


 怒りも収まったようだ――穏やかに応えたリンゴを見て、マルーは一人安堵するのだった。




 やがて砂の海に着陸したフライト。辺り一面砂だけの景色に、支度を済ませたサイクロンズが降り立つ。前方にはたった一つ、石造りの建物が鎮座していた。


「あれだな、調べる遺跡っつーやつは」

「皆降りた!? さあ早く! 依頼人さんが待ってるよ!」

「あっマルー待ちなさい!」

「置いていかないでー」

「……あいつ、もうあんなに小さく見えるぜ」


 呆れ果てるボールと、必死に後を追うリンゴとリュウを気に留めないまま、マルーは我先にと駆けてゆく。そして彼女の目が遺跡の入り口を捉えると、遺跡に向かって大きく手を振り、すいません! と叫んだ。


「ミズキさんの代わりに来ましたー! サイクロンズの、マルーといいまーす!」


 マルーが手を振る先に居るのは、まさに“探検家”といえる身なりの青年だった。


「はじめまして! よろしくお願いします!」


 青年の前に立ったマルーは、 満面の笑みと共に手を差し出した。青年は目を丸くしていたがやがて、何かに気付いたように、そうか! と口にした。


「君達が一番初めに結成されたチームなんだねなるほどー! よろしくよろしくー!」


 青年がマルーと握手を交わす。ぶんぶんと、握った手を振る様子は、後から来る三人にも分かる程の手厚い歓迎ぶりだった。


「いやいやびっくりしたよ。こんなに幼い子がやって来るだなんて。見たところ君は……新しい黄色の戦士だね!」

「はい――ってどうして分かるんですか!?」

「そりゃあもちろん、そのブレスレットを見れば分かるよ。ミズキさんもそれを付けていたしね」


 マルーはブレスレットに目をやった。


「その細長いプレート。中心で黄色い宝石が輝いているだろう? それが、どんな五大戦士なのかを解き明かす手がかりさ」

「すごいです! 何だか探偵さんみたい!」

「そのくらい頭が柔らかくないと、探検家は勤まらないってわけ!」


 マルーが喝采を送ると、青年は軽快に笑ってみせた。


「ところで、君の職業は剣使いのようだけど。君のチームの中に魔法使いはいるかな?」

「魔法使いですか? ……あの子です!」


 ほう、と一言。マルーが指差した方向へ、青年は歩いてゆく。


「皆ー! 依頼人さんが行ったよーっ!」


 マルーの声で三人が人影に注目するがそこにちょうど、砂混じりの風が通った。



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